十六
唸るアスファルト、ひしめく排煙、明滅する信号機。人々は足を止め、首を曲げるか、ただ前を死んだ魚の目で見つめる。
この中に地面を見つめる人がいれば、奇怪な目を向けられる。空を見上げる人がいれば、恐らく、怪訝な目を向けるだろう。何もないのに、と。
横断歩道の入り口で呆然としているのは邪魔になる。僕は信号機のそばにある花壇に腰掛けた。黄色い花が咲いている。空には世界を真っ二つに切ったかのような雲に青空が、ある。高速道路がバッテンに交差する。夾叉する車の数々に疑問を感じた。
今日は不思議な天気に気分だ。真上の太陽は白い線を照らしている。土を触って、冷たい感触が腕をつたる。粉を吹いた手を擦って茶色い土を落とす。
待ち人は向こうにいるのだろうか、まだ渡っていないのか。
取り敢えず、僕はこの道を渡るのをやめる。この小さな黄色い花をちぎって、押し花にでもしようか。寒い寒い、他の人は横断していく。
手を伸ばせ。
上を目指す。
僕は底で渇望した、白い雲を掴むため、水のように青い世界から抜け出すために。誰かが宇宙服みたいにずんぐりした服をして宙を浮いていた。僕を見て、思いきし掴んできた。




