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十五
彼女は制服を着て学校の裏に来ていた。
香り高い吹雪を超えて、陽を隠す薄雲の下で盛りあがる土に立つ古木に明るい顔を向けた。鼓動が身体に響く。
小さな丘を彼女は周る。力強くひび割れた幹、転がる錆びたスコップ、薄桃色の花咲く老木。
放課後の学校に彼女の贖罪を妨げるものは存在せず、黒く滲んだ見えないレースを捨てに来たのだった。見えない地面の下には骨と化した彼が埋まっている。
付近には花が咲き、明るい雲から光が垂れる。桜の花びらは彼女の周りにはないが、満開の老木からぽつぽつ散る白色がある。
膝をかがめて青色の花を一輪摘んだ。
花弁を一枚、食べた。
丘に一本、誰のための馨る花、彼女はかけた花を持って丘を後にした。古木が風に揺られ髪の毛を揺らす。隔たった溝は埋めるための土塊を望む事はない。
言うなれば、盲目である。




