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同期と飲み会

絋から急な告白を受けたその次の日、


「こっちの分は終わりました」

「それ量多いだろ。手伝うよ」

「クライアントから電話があったのでちょっと出ます」


司はいつも通り、むしろいつも以上に大量の仕事をこなしていた。


そんな司を見て、「お前超人かよ!怖いわ!」と日頃なら茶化しを入れている同僚達も心配そうにしていた。


「…あいつどうした?なんか…凄くね?」

「今そんなに急ぎの案件も無いのになぁ」

「んー…まぁいいんじゃない?みんな感化されてめっちゃ仕事早く終わってるし」

「まぁな〜」


司の様子がいつもと違うのは確かだが、機嫌が悪いだとか、部下に当たるだとか、そんな事は一切ない。ただいつも以上に仕事熱心なだけ。原因もいまいちわからないし、自分達に直接害はない為、同僚達は司を放っておくことにした。だが、藤川は何があったのか凄く気になっている様だった。





「ふぃ〜〜やっと帰れる〜」

「お前そんなに疲れることやってねぇだろ」

「一条を見習え」

「うるっさいなぁ…吉羽、河合、早く飯食いに行こうぜ」

「「お前彼女いないからって俺らと飯食いすぎだろ」」

「うるさいうるさい!あ!一条!」


いつもより帰り支度がのろのろとしている司を、彼女いないイジりを遮って同僚の藤川が呼び止める。


「どうした?」

「今日はどうだ?今こいつらと飯行くって話してたんだけど」

「……あー……うん、行こうかな。いつも断っちゃってたし」

「やっぱダメか〜…って、アレ?」

「いや行くって言ったよダメかーじゃないよ」


断られる前提で話しかけていた藤川に、吉羽がツッコミを入れる。藤川を呆れた目で見ている吉羽と河合だが、内心では自分達も司が断らなかったことに驚いていた。


「一条と飯食うなんていつぶりだ?」

「久々に同期全員だな〜」


そんな話をしながら、いつも司以外の同期3人が行っている居酒屋へと向かう。絋と同居を始めてからはほぼ毎日夕飯を家で作っていたため、会社の人と飲みに行くなんて久しぶりだった。


『今日、会社の奴と飲みに行ってくる。飯は適当になんか買ってくれ。』


そう絋にメールを送って、携帯をポケットにしまう。


「今行くー」


丁度藤川に「早く来いよ〜」と急かされ、返事をして小走りに同僚達の元へ向かった。







久々に同期が集まったこともあり、飲みの場は自分達の近況報告や社内のカップルの話題などで大いに盛り上がっていた。すると、


「そういえばお前なんかあった?誰かに告られたりぃ?」


唐突に藤川にニヤニヤした顔でそう言われ、口に運ぼうとしていた唐揚げが取り皿に落ちる。


「えっどうした急に…なんで?」

「今日いつになく仕事ロボットだったしさ〜。社内の誰かがついに一条に告ったか!って思って」

「お前今日ちょっと違ったよな」

「何が違う!とは言えないけど」


吉羽と河合も話にノッてきた。


「ん〜…まぁ…」


まぁ告られたのは本当だし…と思い、藤川の質問に歯切れ悪い返事をする。


「えっマジ?マジで恋愛関係?お前そんな悩むタイプだったの?!意外…」


藤川が興奮した様子で、テーブルに手を付き目の前に座っていた司へ身を乗り出した。


「いや、うん…まぁ…そうだな…」

「ゴニョゴニョしすぎだろ」


どんどん声が小さくなっていく司に思わず吉羽が笑いながらツッコミを入れた。適当な理由をつければ良かったと後悔してももう遅い。まさか大学からの友人(男性)に告白されて困ってる、なんて言える訳が無かった。どう言おうかと考えながら、酒のせいもありじんわり汗が滲んでくる。


「仲良い奴だったからちょっと…悩んでて」

「ヒューーーー!!若いねぇ!!」

「うわっ急にデカい声出すな」

「仲良い人だったんなら付き合ってみちゃえばいいじゃん。試しに」


河合はうるさい藤川を完全に無視して司の話を進める。どうやら藤川は酒が弱いらしい。河合はうるさい藤川の相手はいつも吉羽に押し付けているようだ。


「…あいつと付き合うとか考えたこともなかったんだよ」

「え〜でもさぁ、付き合ってから心境変わることもあんじゃない?気楽に考えてさ」


(気楽に考えられねぇだろ!!!)


司は難しそうな顔をしながら、どんどん酒を呷る。


「一条は河合と違って誠実なんだろ」

「俺が軽いみたいに言うなよー。学生じゃないんだから試しに付き合うなんてフツーだろ?」

「河合も一条程じゃねえけどモテるよな!!一条程じゃねえけど!!チャラいせいですぐ振られてるけど!!!ププッ」

「2回言わなくてもわかるわ!」

「すいませーん水1つくださーい」


軽く吉羽も会話に入ってくるが、すぐに藤川の為の水を注文する。まるで保護者だ。確かに河合は割かし整った容姿をしており、誰にでも愛想がいい。女性に人気があるのも頷ける。


「まぁ一条に付き合う気がねえなら断ればいいじゃん。そんな悩むことか?」


藤川の焼酎に、先程頼んだ水を入れながら吉羽が言う。藤川はトイレに行っている。本人に分からないように薄めてやっているようだ。


「断ったら、どんな形であれ関係が変わっちゃうだろ。俺は今までのままが心地良かったんだ」


ビールを飲みながら司はブツブツ言う。


「あー…そりゃなぁ」

「あんんんんまい!!!!マンガみたいな事いってんなよ!!!!!」

「うっさ」


トイレから戻ってきた藤川が、仁王立ちで司に向かって大声で言った。


「関係変わるのなんて当たり前だろぉ!!?相手もそれ分かってて、覚悟決めて告ってきてんだから答え出してやんねぇと」

「分かってるよ!!」

「…おおおうそっかぁ…」


食い気味に司に反論され、藤川の勢いが完全に削がれた。


「分かってんだけど…あーーもうどーすりゃいいかわっかんねぇんだよ!!」


半分ほど残っていたビールを一気に飲み干し、ガンッとジョッキをテーブルに置く。


「えええなんか急に怖っどうしたのコイツ」

「あ〜…さっきから一条、バカバカ酒飲んでたからなぁ」

「気付かねぇうちに出来上がってたな…」


司の変わりように驚きすぎて、藤川の酔いもほぼ覚めている。司の見た目は普段と変わらないように見えたが、よく見れば耳が赤い。


「すいませーーーーん!!ハイボール1つー!!」

「おいおいもうやめとけって」


隣に座っていた河合が、酒を頼む司を止めようと肩に乗せる。


「るっさいなぁこんな時くらい飲ませろや!!」


河合の手を払おうと勢いよく振り返ると、フラフラと河合の方へ倒れ込んでしまった。大声を出したこともあり、酔いが回ってしまったようだ。河合が咄嗟に支える。


「おうおうおうおう大丈夫か?」

「…うっ……大丈夫…」

「こりゃダメだな…じゃあまず俺金払ってくるわ」

「お、サンキュ」


一条が潰れてしまったので、もうお開きだ。吉羽が会計を済ませに行ってくれた。


「おーい外出るから上着着ろ〜。あと一条家どこら辺だ?遠かったらタクシー呼ぶし」

「………………」

「一条?」

「………………」

「え?もしかして寝た?」


藤川が軽く背中を叩きながら問いかけるが、返事が無い。河合に倒れ込んだまま、肩に頭を乗せたまま司は寝てしまった。


「おいおい男の頭ずっと肩に乗せたって嬉しくねえよ…」


河合は苦笑いを浮かべた。


前話と段落など、多少書き方が違う部分があります、読みにくかったら申し訳ありません…


藤川は酔ってても「まだ全然余裕!!」と言って水を飲みません。吉羽がわざわざ薄めてあげるのはそういう理由です。(^^;

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