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その次の日



―「じゃあ次の検討問題、考えてみて下さい。」


 そう絋が言うと、学生たちは一斉にプリントに目を落とし問題を解き始める。

絋の専攻は法律で、受け持っている講義もその分野のものだ。検討問題というのは、学生に判例のパターンを身につけて欲しいという理由で絋が作成している、実際の判例を元にしたクイズのようなものである。

 毎回講義では数分の時間を取り、学生たちに検討問題を解いてもらい、自分の意見を発表してもらうのだが…今はその学生たちが問題を解いている間の数分で、思考が昨日へと戻っていってしまう。


(最悪最悪最悪!)


 朝目覚めてから起きてから今まで、頭でその言葉がずっと反復していた。


(なんだよあの告り方!!マジありえねぇ…)


 自分のあまりにもムードの欠片もない告白に、今になって穴があったら入りたいほどに悶えていた。

ちなみに昨日の告白からなんとなく気まづくなり、司とはまだ顔を合わせていない。


「ふぅ〜……はい。じゃあ今日は右側の席の…そう、君から。自分の考えを言ってみて下さい」


 数分はあっという間に過ぎ、なんとか気持ちを切り替えて講義を再開した。


―「…はい。今日はここまで。質問がある人は僕の所に来てください。お疲れ様でした。」


講義を終わらせるチャイムが鳴り、学生がわらわらと教室から出て行く。だが、教室から出ずに絋の方へ向かってくる女子学生が2人。


「黒田先生っ私達のレポート見て意見ください!」

「見てって…君達のそのレポート、僕の専攻のものじゃないでしょう。その分野に詳しい人に見てもらった方が良いと思いますよ」

「そうですけどぉ〜…黒田先生からの感想も欲しいんですよ!」

「お願いします!」


 引こうとしない女子学生たちに根負けして、「内容についての指摘は出来ませんよ」と言いながらレポートを受け取った。


「「!ありがとうございます!!」」


 そう言って2人は大はしゃぎしながら教室を後にした。


(…俺、モッテモテだなぁ)


 そう自負出来るほど、絋の大学での人気は凄まじかった。絋はここの大学教授の中ではかなり若く、顔の造形も整っている。そのせいか、絋の担当する講義は難しい内容なものばかりだが、毎回教室一杯に学生が入っており、絋自身が教室に入ってその人数の多さに驚いている。


(堅物で近寄り難いように見えるように言動とか気ィつけてんだけどなぁ…やっぱ若いとモテるもんなのか…?)


 学生に人気があっても、他の教授からあまりいい顔はされない。むしろ若いという事もあり、年配の教授からは嫌味を言われることもある。それが嫌なので、出来るだけ学生とフレンドリーに接さないように気を使っている。こんな事を言うと司に「随分いいご身分だなぁ」とバカにした半笑いで言われるので、あまり口には出さないが。

そんなことを考えて司の名前が出てくると、やっぱり昨日の事を思い出してしまった。


(朝は顔を合わせずにいられたけど、夜はそういうわけにもいかねぇし…やっぱもっかい話さなきゃだよな)


さっき渡された学生のレポートをみつめながら、今日の夜、司になんと話しかけようかと考えていた。レポートの内容など、頭に入ってくるはずもない。

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