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若さが目にしみる

「すごい…活気が…」

「司まじオッサン臭い」


現在昼の12時。司と紘は母校の文化祭、通称「爽香祭」に参加していた。

文化祭までに紘からの告白の返事をしようと腹を括っていた司だったが、


(……どうしよ)


未だに結論は出せずにいる。


(俺ってこんなにウダウダ悩むタイプだっけ…っいや、まだ時間あるし。タイムリミット今日までだから)


焦る気持ちに自己暗示をかけ、なんとか心に余裕を持たせる。


「司ぁ、どこ見たい〜?出し物結構あるっぽいし、なかなか面白そうだぞ」


そんな司の気持ちなど知らずに、紘は意気揚々とパンフレットを広げている。


「とりあえず12時だし、食べもんのとこ見たい」

「オッケーそうしよ。あ、あと俺大学だとちょっとキャラ違うから」

「…どういう申告?別にいいんじゃん?」


そう言いながら、一番人通りの多い、屋台が並ぶ大通りへ歩き出す。生徒が多く集まっている所へ行くと、辺りから次々と紘の名前が聞こえてきた。


「えっ…黒田先生じゃん!爽香祭来てんの初めて見た…」

「うわぁ奇跡…写真撮ってくれないかな…絶対無理だろうな〜」


主に女子生徒からだ。微妙にこちらにも聞こえる声量で、紘について話している。その話の当事者といえば、


「………」


司の隣を歩きながらスルースキルを発揮していた。絶対聞こえているはずなのだが、気付かぬフリで並んでいる模擬店をキョロキョロ見ている。


「司、何食べたい?」

「あーー…割と色々あるんだな…」


そんな話をしていると、一際大きな声が紘の名前を呼んだ。


「黒田先生ーー!!!!うちの店寄って下さいよー!!!!」


一つの模擬店からその声は聞こえてきた。見ると、ショートカットの女の子が、身を乗り出して紘にブンブンと手を振っていた。


「元気だなぁあの子。お前の事超呼んでるけど」

「あぁ…俺に文化祭来いってゴリ押しした子」

「ふーん。寄ってやれよ」

「あ、うん…」

「なんでちょっと嫌そうなんだよ。いいから行くぞ」


グイグイと司に腕を引っ張られ、仕方なく紘もついて行く。


(だってコイツ絶対笑うし…)


司に引きずられながらそう思うが、生徒があまりに大きい声で呼んでくる為無視をすることも出来ない。仕方ない、と諦める。


「いらっしゃいませ!黒田先生!」

「こんにちは、渡辺さん。あまり大きい声で呼ぶのはやめてください」

「すみません〜でも、あれくらいじゃないと気づいて貰えないと思って。栞〜!!黒田先生来てくれたよ!!!」


渡辺さんと呼ばれたショートカットの女子生徒と、紘が数回会話を交わす。その後に、渡辺は店の後ろに顔を向けて、大きな声で誰かの名前を呼ぶ。すると店の奥の方から、パタパタと小柄な女子生徒がこちらへ向かってきた。


「麻里…声大きいよ…こんにちは、黒田先生」

「こんにちは。神田さんも同じ模擬店をやっているんですね」


恥ずかしそうに顔を赤くしながら、女子生徒は黒田に挨拶をする。


(…ずいぶんタイプの違う2人だな)


先生と生徒同士の会話を聞きながら、ぼーっと司は二人の女子生徒を交互に見る。渡辺は茶色のショートカットで、少し聞いているだけでサバサバしていそうな性格だとわかる。対して神田と呼ばれた生徒は、鎖骨まである黒髪で、可愛らしい雰囲気。ストレートに言えば、男ウケがめちゃめちゃ良さそうな見た目だ。

紘と挨拶を終えた渡辺と神田はチラリと司の方を見る。先生の隣に知らない人がいたら、そりゃ誰か気になるだろう。黒田もその視線に気付き、二人に司を紹介する。


「僕の友人の一条です。うちの卒業生ですよ」

「はじめまして!渡辺麻里です!」

「はじめまして…神田栞です。黒田先生には授業でいつもお世話になってるんです」


神田は少し人見知りしながらも、二人とも司に自己紹介をした。


「…クッ……どうも。一条司です。この店は何やってるの?」


司は少し震えながら、それを隠すように人当たりのいい笑顔を浮かべ、他愛のない会話をし始める。


(ぼく……ククッ…あーやべ吹くとこだった…。敬語とか合ってなさすぎだろ)


その震えは笑いからくるもので。いつもとあまりにも違う紘に、動揺よりも笑いが来ていた。その様子を見て、紘はジト目で司を見、視線で「だから言っただろ!」と言っている。


「うちはタピオカ売ってるんです!お二人共どうですか?」

「へ〜。俺タピオカって飲んだことないんだよねぇ」


司がまじまじとメニューを見ながらそう言うと、渡辺と神田は目を見開いて驚く。


「えっそうなんですか!!女子大生みんな常に飲んでますよ!」

「なんか流行ってるな〜って事は知ってたんだけどね。おっさんが飲む機会なかなか無くてさ」

「う、うちの店は有名なタピオカ屋さんから大量発注してるんです。美味しいですよ」

「そうなんだ。じゃあ何か試してみようかな。何がおすすめ?」

「はい…!もちろんです。えっと〜…」


(さすが外面はめちゃくちゃ良いな)


いつの間にか自分より司の方が馴染んでいる。男には特に人見知りが激しい神田も、既に自然に話せるようになっていた。

読んで頂きありがとうございます!!



司は人混み苦手ですが、行っちゃえば割り切って楽しみます。ただ、行くまでに少しゴネます。


紘は話しかければちゃんと会話しますが、コソコソしてる話しかけて欲しいアピールはスルーします。

「これで話しかけるって自意識過剰だと思われそう」だそうです。

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