表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

モヤモヤ



ーー紘が司に告白をしてから、二週間が経っていた。





「ただいまー!あーー疲れた!!」


紘はそう大きい声で言いながら、リビングのソファに勢いよくダイブする。


「おかえり。楽しかった?」


司はソファの後ろにあるテーブルで晩酌をしながら返事をした。紘は今日、大学の他の教授との飲み会で、夕食は外だった。


「楽しくねえよ!!みんな年上だし!気ィ使いすぎて肩凝った…なんで俺にも声かかんの」

「ハハッ、だろうな。職場の飲み会なんてそんなもんだ」

「あーでも医学部やってる先生が飲みながらなんか話してたの覚えてる。先週生徒を一人退学させたんですよ〜とかなんとか」

「ほぉ」

「生徒が解剖してたご遺体でなんかギャグかましたらしくて。その場で退学させたんだって」

「えーヤバ、その生徒サイコパスかよ」

「な、やばいよな。今日の飲み会の話のハイライト、それ。むしろそれしか覚えてない」

「お前の大学の生徒ヤベェな」

「そいつだけだわ。しかも俺らも卒業生だろ」


そんな話をしながら、紘がソファから立ち上がる。


「俺シャワー浴びてくるわ〜。タバコくせえし」

「おー」


そう言って、紘は風呂場へ向かった。







「あ、そうそうそういえば」


髪をバスタオルで拭きながら、紘がリビングに戻ってくる。テレビを見ていた司が紘に目を向けた。


「……いやお前さぁ…」

「ん?あ、俺の腹筋?いい感じに割れてるだろ」

「お前の腹筋なんて世界中誰も興味ねえ。そうじゃなくて…せめてパンツ穿けば?」


司の目に飛び込んできたのは、紘の全裸。腰にバスタオルを巻くとか、そんな配慮は一切ない。上半身裸で出てくる事は男ならよくあるが、さすがに全裸は司も引く。


「悪ぃ悪ぃ。パンツ持ってくの忘れちゃってさ」


そう言いながら、タンスからパンツを取り出し穿く。その様子を、ため息をついて司が見ていた。


「じゃあせめて腰になんか巻けよ。汚物を目の前にぶら下げるな。酒が飲めなくなる」

「たった今洗ってきたんだから汚物じゃねえし!デリカシー無い奴だな!」

「デリカシー無いのはお前なんだよ。…で、何?」


一通り紘を貶した所で、司に話しかけてきていた事を思い出し、話を戻す。


「そうそう、大学の文化祭の話あったじゃん。あれ再来週の日曜なんだけど、どう?」

「あ、ちょっとまって」


司は、会社用の鞄からスケジュール帳を取りだし、ペラペラとページをめくり予定を確認し、紘はパンツ一丁のまま冷蔵庫から牛乳を取りだした。残り少なかったようで、コップに移さずに一気飲みをする。


「うん、空いてる。行けるよ」

「よかった。じゃあその日だから空けといて」

「おう」


スケジュール帳に、『文化祭』と書き込む。紘はスマホのアプリだが、司は毎年スケジュール帳を買っている。理由は「スマホだとなんか予定入れ忘れる。あと書いた方が頭に入る」らしい。


「俺の講義取ってる子、タピオカ屋やるんだって」

「へー。飲んだことねえ」

「え?マジ?ほんと司って時代に乗り遅れてんなぁ…」

「俺らくらいの歳って飲まねえだろそういうの」

「結構うまいよ?ここら辺でも何店舗かあるじゃん、たまに買ってる」

「…お前一人でタピオカ屋入ってんの?……怖…」

「なんでだよ!いいだろ別に!…まぁ大学の近くにもあるけど、流石に生徒が来るような店では買わねえな」

「なんで」

「いややっぱ、キャラ崩れるじゃん。クールな俺がタピオカとかさ」


自分が思う一番クールな仕草なのだろう。紘が髪をかきあげる。その紘を、司は「ハッ」と鼻で笑った。


「フルチンでクールな奴なんていねえよ」

「だってスケジュール、思い出した時に言わないと聞き忘れちゃうと思って!パンツもないし髪も濡れてたし!」


紘の釈明の仕方があまりにも必死で、思わず虐めたくなってしまう。


「バスタオルもう一枚使えばいいだろ。バカだな」

「ごめんってぇ」


怒られた犬みたいに、しょんぼりしながら紘が謝る。実際には無いが、垂れ下がった尻尾と耳がついているようだった。その様子に、司は思わず吹き出しそうになってしまうが、堪える。


「…クッ……まぁ、男同士だしな」


司が笑いを堪えながらフォローを入れるが、紘の表情は晴れない。


「……いや、でも司の前で全裸は流石にデリカシーなかった。気をつける」

「………えっそれって…」

「ほんとごめんな!じゃあ俺歯ァ磨いて寝る!おやすみ!」

「お、おぉ。おやすみ」


意味深な言葉を言い残して、紘は洗面台に行き、歯を磨き終わったら自室へと入っていった。


(…………いや、なんだよ!!!!)

ゴンッッ


紘が自室に入ると、司は額をテーブルに打ち付けた。


(なんだよ今の!!ハッキリ言えよ!!!)


髪を両手でわしゃわしゃと弄り回し、悶える。もう紘が告白してから二週間。今モヤモヤしているのは司の方だった。


(もう俺の事好きとかじゃないのかな〜って思ってたけどさっきの多分そうじゃん!え?返事とかした方がいいの?でも返事とかまだなんて言っていいかわかんないし…)


グルグルと答えのないことを考える。二週間、告白なんてなかったかのように、ずっといつも通りの日常だった。その間で冷静になった司は、自分がどうしたらいいのかわからずにいた。


(………これはタイムリミット決めないといつまでもダラダラしてるな…うん、文化祭。文化祭の日までに)


スケジュール帳をもう一度取り出し、『文化祭』と書かれてあるすぐ下に『決断、ここまでに』と書き足した。


読んで頂きありがとうございます!!



紘は細マッチョです。家でも結構筋トレしちゃいます。司はそれを見て「その筋肉何に役立てんの?」と言ってます。司は筋肉はそこまで無いですが、食事管理もしているのでスタイルは良い方です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ