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たいくつだああああああ!!!


聖マルリア国。アバンズ大陸の中


央にあり商業の要的位置にあり、最大の行商組織「ゼアン共営会」が本部を構えている。また、首都シアンは世界最大の宗教「アルドレム教」の聖都でもあり、世界中から信仰の厚いものが巡礼に訪れる都市でもあった。そんな様々な理由から聖マルリア国は直近300年間で戦争が起きていない"世界最平和国家"であった。


今日は新国王の即位式、街中お祭りムードで、出店や葉巻を加えた男性、ふうせんをくばるピエロなど、街はどこもにぎわっていた。そんな平和平和な街に一人、ふてくされている男がいた。



「あー、つまんねぁなー」



男は大勢のお祭り気分の民衆を見てひとりごちる。

この国は平和だ。とってもとっても平和だ。

魔王もいなくなった今、人々が争いで死ぬことは少なくなった。

隣国同士で戦争がたまに起きても、やれ平和的決着だ、われ講和だ条約だと言って

まともに戦闘にすらならない。

まったくもって平和極まりない。

魔王が居た時代はよかった。街は傭兵や軍が闊歩し、デーモンやトロルが街を襲撃しに来てれたし、

空からはたびたび魔王軍に使役されたブラックドラゴンが街を業火で焼き払うべく

"エンドブレス"の詠唱しにくる。

それを阻止するための対ドラゴン術式を施した固定砲台の運用を立案したり、

魔力供給の仕組み作りを軍に助言したり、

新兵を自分の指揮下にもらってレッドワイバーン隊を討伐させたりしたのだ。

まったくもって楽しかった。



まったくもって、た、の、し、か、っ、た!!!



あれでこそ"生きている"と言えるのだ。


「あーあ、フィリムの言ったことなんて無視して、レイトアイの試練なんか受けなきゃよかった。そしたらこんな力も手に入らず、魔王を殺してしまうこともなかったのに…。くそっ、フィリムめ…。」


レイトアイ、それは聖マルリア国に伝わる"伝説の力"である。

高い知能、優れた体力、強靭な精神力を持つものにのみ与えられる。という古い伝承。

聖都シアンが本拠地、大聖堂の地下深く眠る1000年以上閉ざされた古の洞窟。そこに眠る伝説レイトアイ。

この洞窟を守るために大聖堂が作られ、これを伝承するためにアルドレム教が設立されたともいわれている。誰もが知ってる公然の秘密。

そんなほぼうそっぱちの都市伝説にすら頼らざるを得ないほど、当時の人間は追い詰められていたのだ。

そこで白羽の矢がたったのがこの男、傭兵アイムである。


アイムはとにかく強かった。

並みの剣士が20人束になっても敵わないほどの体術・剣術を持ち、

攻撃魔法・呪術にも長けており、戦いながら攻撃魔法・呪術・体術を並行使用するため

普通の人間はおろか、アークデーモンクラスの魔物でさえタイマンであれば彼の敵ではなかった。

ついたあだ名が 戦狂アイム 

とにかくまっすぐ敵を倒しに行くアイムは、特に近接戦闘職の憧れであった。

当然アイムは軍にも顔が利き、一介の傭兵では考えられないほどの信頼を得ていた。

ゆえに、本来正規軍の中から数名、と通達がされていたレイトアイの試練を

アイムも受けるよう命じられたのだ。

アイムはそんな試練どうせ眉唾だ、と跳ねのけようしたが、フィリムに怒られた。


「あんね、アイムくん。だめだよ王様の命令は聞かないとだめだよ。だって王様だよ?」


よくわからない理屈だったが、フィリムが怒るとアイムですら手が付けられないので言うことを聞き

アイムはレイトアイの試練を受けることにした。


試練の日、当日集められた10人の兵と、アイム。

王直属の親衛隊隊長フィードバズ

剣聖と名高いサルファー

大魔術のを俺に教えてくれた魔法大学教授のエイ

ほかにもまあ、お前らここに居て前線大丈夫かよ、と思うほどの顔ぶれだった。

そこに自分も加えて貰えたことを誇りに思い、アイムは気を引き締めた。


試験は単純。扉が開くかどうか。それだけだ。

伝承では高い知能と優れた体力と強靭な精神力、だったか。

確かそんなものが必要で、そのどれが欠けてもだめらしかった。

まず正規軍所属の10人がその職位順に試練を受ける、

まあ端くれの俺が最後なのは当然か。


フィードバズ、開かない

サルファー、開かない

エイ、開かない

開かない

開かない

開かない

……


10人全員、扉は開かなかった

彼らで資質がないというなら、自分もどうせ開かなかろう。

と、7、8人目あたりでアイムの張り詰めていた気もすっかりゆるんでいた。

「…だめか、えっと、あ、お前も居たな。頼むぞ、傭兵アイム」

と政官がアイムに指示をし、アイムを扉の前に誘導する。

すっかり落胆している声で、特に期待もしていない声で。

アイムは言われた通りに扉の前に立つ。…。扉はピクリとも動かない。

やはり…。全員がダメだったか、と消沈するみんなをよそに、


アイムだけが唯一、己の中に生まれた熱を感じ、自分が選ばれたということを、確信していた。


「あの・・・俺・・・」とアイムが報告しようとするや否や

一瞬だけ、扉の奥が光り、耳を切り裂くような"声"がした。


{%$&'"♡''}


何語かすら分からない言葉を、そこにいた全員が聞いた。

その言葉が、何を意味していたのかは分からないが

アイムを含む全員が、アイムが何らかの力を得たことを確信した。


それほどまでに、アイムから放出されている魔力が膨大だったからだ。




レイトアイの試練を受けたアイムは、その世界のだれよりも膨大な魔力を手に入れた。

今までデーモンを焼くくらいが精いっぱいだった火の攻撃魔法も、

同じやり方で発動させているのに、アイムの魔法は山を消し炭にした。

呪術も今までは意識を翻弄させる程度の思考阻害魔法だったものが、

高度な知能を持つ魔物であれば、使役を可能にした。

つまるところの"チート"レベルの魔法を手に入れたのだ。

アイムの能力を見た国王は、アイムに魔王討伐を命じる。

アイムが編成隊長となり隊を組織。魔王を消し炭にした。

長く続いた魔王軍との戦争を、アイムは3日で終わらせた。

それほどまでに、アイムは強くなりすぎてしまった。


故に…アイムは…



「あーあーあーあーあーあーあ!!たいくつだああああああ!!!敵がいえねえんじゃ戦う意味がねええ!!!」




と、こうなっていた。


無類の戦闘好きのアイムにとって、らくしょーちーとすきる、なんて物は、

戦闘狂の戦闘をまったくもって楽しくない物へと変えてしまった。

そして彼のあだ名はいつしか消え失せ

今ではこう呼ばれていた。魔王を打ち滅ぼした最高位魔法使い、賢者アイム、と。



「賢者賢者うっせーーんだよばーーか!!何が賢者じゃああ!!!なぐらせろ!!魔法とか戦闘のサポートでしかねーんだよ!!くそが!!!デーモンこいやああああ!!戦争しろや!!何なら俺が新しい魔王になったろかああ!?ああんっ!!?平和なんてくそくらえ!!!…。はあ、どっか平和じゃない世界に行きたい…」


…あ!


「別世界って、行けたりするのかな」


アイムは試すことにした、とにかく退屈だったからだ。


「えっと、テレポートの応用で…、時空間魔法を駆使して…えっと、こうかな?えいっ」






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「あ、やった、成功っぽい!…なんだここ。なんだあのでっかいトンガリは。一角獣の角みたいだけど、赤い…。…!!!ど、ど、ドラゴンだ!!なんだあれ初めて見るぞ!!とりあえず落とすか!!えいっ、ばきゅん」



異世界転移、初日、

賢者アイムはボーイング747を撃墜させるべく、

ファイアーを飛行機の翼めがけて放った


アイムは、地球に、転移した。




転移してしまったのだ。



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