クズ勇者は戦わない
結構前から構想はあったものを適当にプロットに起こし、適当に書いたものです。
過度な期待はせずに肩の力を抜いてお楽しみください。
俺はこの世界に腐るほどいる勇者の一人だったが、それなりに大所帯で旅をしていた。
きっかけは駆け出しの魔法使いと武闘家に最低限生き残る術を教えたことだった。
幼い頃に村を魔物に滅ぼされた俺は逃げ延びた先で勇者として洗礼を受けた。だから同年代の冒険者よりは経験を積んでいたのだ。それを知ってか知らずか彼らは俺に教えを乞うた。断わっても良かったのだが駆け出しの不安を和らげるのもベテランの仕事、と酒場のマスターに言われては仕方がないというもの。
新人の育成はどの冒険者にとっても基本は有利に働くものだ。そういう打算的な面が大きかったわけだが結果的に俺はそいつら二人に冒険の基礎を教えながら旅を続けた。
そのうち段々と仲間が増えて旅が随分楽になった。夜間の見張りはもちろんのこと、魔物の討伐や村や町、国からの依頼を片付けるのも一人の時とは大違いだった。
そもそも正面からの戦いは俺にはあまり縁がないものだが共闘する人数が多ければそれも悪くはない。
そんなある日、小さな諍いから俺の一行は分裂することを余儀なくされ、最終的に残ったのは俺一人だけだった。
それから5年が経った今もその考えだけは変わっていない、恐らく一生変わることはないだろう。
つい最近ある勇者一行により、一人の魔王は討伐されたが未だ世界は混沌の中にある。
それは勇者が複数いるように魔王も一人ではないからだ。
魔王の存在に呼応して勇者が誕生するのか、はたまたその逆なのかは定かではないが勇者には各々倒すべき魔王が対となるように存在するという。
兎にも角にも勇者は魔王を討伐しなければならず、それは俺も例外ではない。
当然魔王も黙っているはずもなく眷属を刺客として世界中に放っている。それ故に勇者の旅は心休まることなく一人では危険なものとされている。
それでも俺は一人で5年、生き延びた。その一方でかつて寝食を共にした冒険者の大半は他の勇者と野垂れ死んだらしい、俺についてきていれば少なくとも死ぬことは無かっただろうにバカな奴らだ。
まあそんな昔話はどうだっていい。今大事なのは俺が勇者であるということ、それだけだ。
そんなどうでもいいことを考えながら部屋を物色していたのがマズかったのか家主に見つかり村を慌てて去る羽目になった。
「ちっ、あのババアめ。ロクなもん持ってなかったくせに大騒ぎしやがって」
村の自警団から逃げる労力を加味すると収穫があったとは言い難い。
入手できたのはそこそこな装飾品と食糧だった、装飾品に関しては鑑定眼を持ってないから正確な価値はわからないがまあ旅費の足しにはなるだろう。
森の中を駆け抜けながら背後の足音が途絶えてないことに違和感を覚えつつ追っ手を撒くことを優先した道を選んでいく。
しばらくして、完全に追手がいなくなったことを確認してやっと一息つくことができた。
「それにしてもしつこい連中だったなまったく…」
普通の自警団はあんなに深追いはしてこない。
何せ基本は自警が目的なんだから、村から離れすぎては本末転倒だ。つまり、何か普通以上に追わなければならない理由があったはずだ。とはいえその理由を考えるには情報が足りないし何よりどうでもいい。
連中が困ろうが俺にとっては些細な問題だ、世界が平和になればそれでいいしもっと言えば俺が生きていられさえいればいい。
この世界は、そういう風に出来ているのだから――――――。
なろうで書くのは初めてではないのですがいつもどのくらいの分量で書けばいいのかわかりませんね。
精進あるのみです、手前味噌ですがこれからよろしくお願いいたします。