結
「……本当に渡れるの?これ」
「ゆっくりなら平気よ」
オンボロ橋を、ヨーコに手を引かれて、おそるおそる渡ります。
ぎ、ぎ、と揺れる橋は、今にも落ちそうでした。
それでもどうにか渡り終え、先に進みます。
「わあ……」
その池は、偽物みたいに澄みわたった、とてもきれいな池でした。それこそ本当に、願いを叶えてくれそうな。
サトルの手のなかに、手を引くのをやめたヨーコがドングリを押し込みます。
「サトルはどうしたいのか、考えてみて」
それだけ言って、ヨーコはサトルの背を押しました。ひとり湖畔に立ち、サトルは水面を見つめます。澄んだ水に、自分が映りました。
どうしたいか。
戻りたい。
戻りたくない。
帰りたい。
帰りたくない。
さみしい。
さみしくない。
心の中で言葉がうずまきます。
どれもホントウで、どれもウソでした。
「ぼくは……」
手の中のドングリを、池に投げ込み、願いごとを口にしました。
ざわりと、風が木立を鳴らします。
さくりと、下草を踏みしめる音。
鳥のさえずり。虫のさざなき。川のせせらぎ。木々のざわめき。
世界は、森は、音であふれていました。
ぱきりと小枝を踏みながら振り向けば、ヨーコが笑っていました。差し出された手を取り、歩き出します。
頭上には、鮮やかな逆さ虹。
オンボロ橋をきしませて渡ると、コマドリがやって来てヨーコの肩にとまります。初めて聴いたコマドリの歌声は、それはそれは上手でした。
森の入り口で、ヨーコはサトルの手を離します。
ばいばい、と振られた手に、手を振り返しました。
森をあとに、サトルは歩き出します。音と声の響きわたる、世界へ。
「サトル……!良かった……!!」
森から戻ったサトルを、お母さんが泣きながら抱き締めました。お母さんの後ろでは、くたびれた格好のお父さんも、目をうるませていました。
「見つかって、良かった」
両親に、友達に、もみくちゃにされたあとで、サトルはおばあちゃんに会いに行きました。
「よく、戻って来たね」
おばあちゃんはサトルの頭をなでて、ほほえみます。
「キツネには、会えたかい?」
「ううん。でも、ヨーコって女の子が、助けてくれたよ」
サトルの言葉におばあちゃんは目を見開き、そして、細めました。
「そう。ヨーコちゃんとの話を、聞かせてくれる?」
「うん」
サトルはうなずいて、話し出しました。
拙いお話をお読み頂きありがとうございました
童話祭の締切に間に合うために突貫で仕上げてしまったので
後日手直しを入れる予定です
そして
童話祭参加予定であったのですが
参加表明を失敗していたのでタグだけで失礼致しますm(__)m