シルビア 前編
人々は視覚情報 風の噂 思い込み それらを真に受ける習性がある
だが、表面上の情報で有って本当の中身を見ようとするのは100人中、極少数の人
その少数の人間が希望の光となる事であろう
私の名前はリザ・フローレンス ヒューランの19歳
田舎村の家族を養う為に冒険者になろうと大きい都に向かっている。
都まで日中歩いて10日は掛かるけど、道中の町に寄り道しながら楽しく3日目を迎えた。
背中には大きなリュック、両肩にも大きなショルダーバッグ。
リュックにはキャンプ道具、ショルダーバッグには薬、日用品、乾物、雑誌等を入れている。リュックと腰の間には唯一の武器、短剣を収納した革で出来た鞘をベルトに通している。
私が冒険者になろうと思った切っ掛けは、冒険者稼業の利益の多さだった。
魔物と戦い高額な報酬を求めた。家族が農家をやっていて毎日手伝いをしていたから体力には自信があった。性格もお母さん譲りの気の強いタイプで何事もめげずに事を進められる事ができる。
家族には冒険者なんてならなくていい、今のままで十分やっていける、死んでしまうかもしれない、そう反対された。でもやっぱり私の家は貧乏には変わりはない。だから家族の反対を押し切って冒険者になる事を決意した。親を説得させるのに半年はかかったけど、お父さんが重い口ぶりでこう言った。
「ちゃんとしたギルドに所属して守ってもらいなさい。毎週安否確認の手紙を送るようにする事。リザの命が心配なんだ。但し、男はつくるなよ、お父ちゃんそこが一番心配」
お父さんの気持ちが重い事は口には出さなかった。
草原に一筋の馬車の轍があり、轍を歩いていると遠くの方に人影が見えた。どんどん距離が近づくと背の高いヒューランで女性だとわかった。その女性は白髪で髪の毛を編んでいた。目の色は白くて赤いチェックシャツを着て背中にはニワトリの刺繍がされていた。顔立ちはすごく色白美人でワイルドなイメージ。
高身長の女性は少量の荷物で手にボロボロの紙切れとサンドイッチ持っていた。
私はきれいな人だなと見とれながら歩いていたら、ふと目が合ってしまい急いで目をそらしてしまった。
視線を逸らす時、高身長の女性の目には威圧を感じとれた。
すると高身長の女性から声を掛けられた。
高身長の女性「やぁお嬢さん、お尋ねしたい事があるんだけどちょっといいかな?」
リザ「え!?すいません!私現地の人ではないので場所とか聞かれても答えられません・・・」
高身長の女性「いやぁ~そうじゃないんだ。もしかして旅人さんかな?」
リザ「・・・まぁそんな感じですね」
そう会話した時には威圧を感じられない綺麗な目をしていた。
高身長の女性「この一本道をたどってるんだよね?この道結構長いんだよなぁ。よかったら話し相手に一緒に移動しないかい?」
リザ「話相手ですか?私も3日間ろくに喋ってないし・・・いいですよ」
高身長の女性「本当かい?ありがとう!退屈しなくて済みそうだ 私はシルビア 宜しくね」
リザ「私はリザです!」
なんだか喜作でいい人みたいでホッとした。
最初は警戒をしていたが、気が付いたら打ち解けていた。
リザ「シルビアさんはどうしてこんな何もない所にいるんですか?」
シルビア「土地を探してるのさ リザは何処に向かってるんだい?」
リザ「私は冒険者になるために都に向かってるんですよね」
シルビア「都ってこの先にあるアルナ都市かい?あそこは良い所だし、冒険者ギルドも6ケ所ぐらいあるね」
リザ「シルビアさん詳しいですね!私は都に行くの始めてで雑誌でしか見たことありません」
そんな事を話しながら歩いているとあっという間に時間が過ぎ夕焼けがオレンジの様に輝いていった。
私達は日が沈む前にキャンプの準備を行った。
私はテントを張り、風呂敷を開け沢山のキャンプ道具を取り出し仕度をしているとシルビアさんは薪を広い集めて焚き火の準備をしていた。私は水の準備を行うために近くの川辺に向かう事にした。
リザ「シルビアさん、川辺に行ってお水汲んできますね!」
シルビア「あぁ!よろしく頼んだよ」
茂みを歩き水流の音を聞きながら川辺の方に歩き出した。
リザ「シルビアさんすごく面白いし一緒にいて楽しいな。1人旅も自由でいいけど、2人旅も案外悪くないかも。」
私は水筒2つに水を汲みキャンプ地に戻った。
リザ「もどりました!シルビアさん!」
シルビア「おかえりリザ ジャーキー炙っといたよ。食べてな」
そういって焚き火で炙ったスモークジャーキーを私に一切れ渡してくれました。
スモークジャーキーを受け取り、ふと疑問を問いかけた。
リザ「ありがとうございます。シルビアさんはテント張らずに野宿してるんですか?」
シルビア「あぁ、そうよ 空を見てごらん 都は明るくて星が見えないんだ 綺麗な物は見れる時に見ておかないとね」
そう言って彼女はコーヒーを作り始め、私に質問をしてきた。
シルビア「冒険者になりたいって言ってたけど、リザの能力はどんな物なの?」
リザ「私の家系は代々魔力が無く刃物での近接戦を得意としますね。剣術はお父さんから教わったんですよ!熊なんてお手の物です!」
シルビア「ほー!それは心強いね もしここに熊が現れたら鍋の準備をしなきゃ!」
リザ「私が作る熊鍋はおいしいんですよぉー!」
シルビア「そっか じゃぁ熊が出てきてくれる事を楽しみにしてるよ」
リザ「シルビアさんは普段なにされてる方なんですか?」
シルビア「そうだねぇ お母さんかな?」
リザ「お子さんがいらっしゃるのですね!」
シルビア「あぁ!もう沢山いるのよ!でかいのから小さいのまで!」
リザ「え、何歳でお母さんになったんですか!?」
シルビア「いやぁ私が産んだ子達じゃないんだけどね」
リザ「あ!保母さんなんですね!」
シルビア「それだ!!」
私はシルビアさんといろんなお話をした。冒険者になりたい経緯や家族の事を、
シルビア「アルナでギルドを探すのかい?」
リザ「そう考えてますね まぁ実家から一番近い都ですしね」
シルビア「そっか 目星はついてるの?」
リザ「実はリサーチ済みなんですよ!HAHAHA」
私はそう言ってショルダーバッグから雑誌を取り出した。
リザ「見てください!いろんなギルドの活躍が掲載されてる月刊ギルードツエーノ6月号!」
シルビア「今9月じゃなかったっけ?」
リザ「細かい事は気にしないでください!大体のギルドが紹介されてるんです!アルナ都市にあるギルドも掲載されてるんですよ!」
シルビア「へーどれどれ・・・ギルド『デルタガーデン』に『シルバーファング』、そして『レッドナイト』からの『ドライバード』と『星の砂』で『アールエル』ねぇ」
リザ「シルバーファングは剣術に優れているみたいで私にピッタリかもって思って第一候補ですね」
シルビア「剣術ならこっちのレッドナイトもいいんじゃない?」
リザ「レッドナイトはどちらかと言うとタンク系なんですよね。私は盾を持った時が無いので・・・あと狩りで素早い動きは出来ますので職業はシーフやローグで行こうかなって思ってます」
シルビア「そっか~なるほどねぇ~ こっちのデルタガーデンには駆け出し冒険者募集中の記事があるよ。」
リザ「ここはシルバーファングに面接で落ちた時の滑り止めって感じで考えてますね!」
シルビア「滑り止めならドライバードの方がいいんじゃないの?ここにメンバー宿舎完備 食事3食付きって書いてあるけど」
リザ「確かに設備はすごく良いんですが、この口コミ評判のページを見てください」
『魔法剣の腕には自信が有ったのですがギルドマスターに鼻くそほじりながら「不合格」って言われました。』
『面接をしてもらったんですが、ギルドマスターが椅子から横に垂れ下がっててこの先が不安になり辞退しました。』
『マスターが美人だと聞いて面接に行きましたが中身がクソブスでした。』
『昔、ギルドマスターが自信のギルドの玄関先でウェアビーストの足に投げナイフを投げて刺してたのを見て怖くて近づけません。』
シルビア「ho...」
リザ 「...ho...」
シルビア「・・・たぶんマスターにも色々理由があるんだと思うよ」
リザ「どんな理由なんですかね・・・ストレスとかですかね・・・」
シルビア「まぁ箱を開けてみないと何でもわからない事だらけだからさ、一回受けてみたら?」
リザ「いいえ!お断りします!」
その時、シルビアさんの口元が引きつっていた。その理由を後々知る事になった。
シルビア「もう遅いから寝ることにしようか」
そう言ってシルビアさんは焚き火に薪を足し、薄い毛布を下に敷いて横になった。
リザ「では私も眠くなってきたのでお休みしますね!お休みなさい!」
シルビア「はいよ お休みなさい。」
お休みなさい。そう言葉を掛け合って私はテントに入り睡眠をとった。
翌日
私は重い瞼を薄く開けた、沢山喋ったせいか疲れて体が重く感じた。何かに拘束されてる感覚だった。でも暖かさを感じた。まるで赤ちゃんが母親のお腹で安らいでるかのように。
リザ「暖かい・・・」
シルビア「あったかろうに~グヘヘヘ」
リザ「のぁーーーー!!!」
私は叫びながら飛び起きた。その反動で1人用テントを突き破り大きな穴を開けてしまった。
私達は道具を片付け、また歩き出した。
リザ「・・・なんで一緒に寝てたんですか?」
シルビア「綺麗な者は見れる時に見ておかないとって思って」
リザ「・・・そうですか」
シルビア「そうそう、私アルナに住んでるからそこまで一緒に旅をしようか!なんなら住む場所が見つかるまでタダで私の家にいてもいいよ」
リザ「そんな悪いですよ!宿舎を借りて過ごす予定でしたので!」
シルビア「都の宿舎は高いよ。1泊1万エンスぐらいかな?」
リザ「え」
シルビア「今いくら持ってるの?」
リザ「・・・3万エンスです」
シルビア「よし!私の家に行こうか!」
リザ「ありがとうございますっ!」
私達は人影がない轍を歩いていると一匹の魔物が向かい側からやってきた。
鋭い牙を剥き出しにし、ゴツゴツの胴体をした大きな狼が私達を威嚇してきた。
シルビア「ジャンボポテトウルフか」
リザ「私に任せてください!ジャンポテウルフは狩りで何回も狩ってますから!」
シルビア「ほー!お手並み拝見としよう!」
私は身に着けていたバッグをすべて下ろし短剣を逆手に持ち低い姿勢で戦闘態勢に入った。
ジャンポテウルフが徐々に加速させ向かってくる。
それと同時に私は低姿勢で全速力でジャンポテウルフに向かって走った。
そしてジャンポテウルフの腹下に滑り込み勢いを利用して短剣を顎下からお腹の方まで流し切った。
そのまま勢いでジャンポテウルフの後方に立った。
しかしジャンポテウルフは倒れずそのままシルビアさんの方に走っていった。
リザ「シルビアさん!逃げて!!」
だめだ、今から走っても追いつけない!自信過剰になってた・・・私のせいで人が死んでしまう!
シルビアさんは立ってジャンポテウルフを見ている
なんで逃げないの!?だめもう噛まれる!
リザ「早くにげてー!」
「ダンッ!」
轍のある草原に響いた固い物がぶつかり合う音が響か渡った。
ジャンポテウルフが停止している 数秒後に横に大きな音をを縦て倒れた。
倒れた先に見えた光景は、シルビアさんが足を広げ腰を落とし拳を突き出している姿勢だった。
私は全身の力が抜け一瞬頭が真っ白になった。
シルビアさんが近寄って手を差し伸べてくれた。
シルビア「ナイスなナイフ裁きだったね」
リザ「え? 何がおきたんですか?」
私は差し伸ばされた手を取り、立ち上がった。
シルビア「ほら後ろ見てみ」
私は恐る恐る後ろを振り返った。
すると大きな地響きを感じ、悪魔のうなり声を耳にした。
林の方から大きな威圧と赤い目を光らせ私達を見ている。
大きさは先ほどのより5倍はでかい15メートル級のジャンボポテトウルフだ。
シルビア「あれはジャンボポテトウルフの上位種 ビッグバンポタトウルフだね」
リザ「ちょっと・・・あんなのに勝てませんよ!デカすぎます!」
シルビア「リザ 短剣借りるよ」
そう言ってシルビアさんは私の足元にある短剣を拾い逆手に持って姿勢を低くし、戦闘態勢に入った。
リザ「え・・・ちょっと!やめましょう!逃げましょうよ!」
シルビア「今度は私の番だ!」
ポテェエエエエエエエエエエエエエエエエエトゥーーーー!
ビッグバンポタトウルフが吠えるのと同時に両者が向かい走り合う
ビッグバンポタトウルフはシルビアさんを噛もうと大きく口を開けた。
シルビアさんは勢いで腹下に横回転しながら滑り込んだ。
回転を利用し、顎下、全足の付け根に剣先を切りこんだ。そのまま回転を利用し後ろ足を掴み遠心力で側面に流れ込んだ。
また回転しながら側面に切り込みをいれ最後に首に短剣を深く刺した。
ビッグバンポタトウルフは全身の力がゆっくり抜ける様に倒れ息を引取った。
ほんの一瞬でその時は何が起きたか私にはわからなかった。
ただ一つ分かったのは シルビアさんは強いって事だった。