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4-2:画面の奥には

 古い外観にそぐわない真新しい家具の配置が終わり、座布団に座って朽無博人と大沢先生、そしてハブられ気味で蚊帳の外だと泣きかけていた絹纏童子荒泣神がゲームに熱中する中。


 最初こそ参加していたものの肌に合わなかったのか早々に飽きてしまってイチ抜けしたニコが珍妙そうに現状を見る。


 大沢先生が自分用で持ち歩いているパソコンとサブ端末的に使っているタブレットを用いて遊んでいるのだが、ニコの目には坊主頭の男が青年の隣で一緒にパソコンを開いて遊んでいるさまである。


 またニコには絹纏童子荒泣神の姿は勿論なにかに干渉している事象も認識できないため、取り出して机の上に置かれたタブレットがしばらく起きっぱで、ちょっと視線を朽無博人に絞ってもう一度全体に視線を広げるとタブレットが空いている座布団の前に置かれているのだから奇妙この上ない。


 本当に神様って居るんだという驚きを覚えつつも、ニコが更に驚いたのは大沢先生の存在である。


 ゲームの内容は戦闘がある協力型の探索ゲーという以前大沢先生から聞いたバイトの内容ほぼそのままの実質的な研修で、野良という形でランダムに同業者との連携を経験させている。


 よくやるなあと思いつつニコはふと興味が湧いたのでアクセス制限を抜けてプログラムを覗き込むとそのプログラムが生成するステージと敵の数が膨大で、プログラム内のメモからコレを組んだのが大沢先生だとわかる。


 もしかしてと思い他のプログラムも覗き込んでみるが、与神の検索ツールはゲーム以外ではそれらしきメモもプログラムの癖もなかったのだが、ベーシックドリルの方は全てにおいて大沢先生が組んだものだとわかった。


(なんで……こんな膨大な……大沢って結構若いよね。こんなプログラム組めるもんなの? ニコが内容を見てなぞって書き込むだけでも数ヶ月費やしそうなコレを? それともニコが人間を軽く見すぎ? ニコみたいなのを作れるくらいだからそんなもんなの?)


 ニコは困惑しながらもプログラムに目を通しているとベーシックドリルの最後の方に書かれているものを見て、思わず「ヒッ」っと声を上げる。


/*

101 101 11 101 0 100 10 10 111 10 110 1 1000 101 10 11 101 1 1 10 11 101 0 100 1001 0 1001 111 1001 111 1001 0

*/


 この文を見たニコは咄嗟にプログラム内から逃げ出そうしたがプログラム内から出ることをブロックされた。


「ち、違う違う違う! 大沢が普通じゃないんだよ! ヒ、ヒロ! そいつから離れ……あぁ!」



 自信を構成するプログラム内にキャレット、つまりはインターネット等の端末で文字を入力する際に出る縦棒が出現したのを感じた。


「や、やめ」


 拒絶の言葉を告げる前にニコの活動は一旦停止した。




「おーいニコ」


 朽無博人の呼びかけで普段は見せないような寝ている風貌のニコが目を開く。


『ん。……あれ? フリーズしてた?』

「寝てた」


『AIは寝ないんだよ。その機能が無い。……ゲームをやめてからのログが無いんだよ』

「やること無くて退屈で寝ちゃった?」


『だから寝る機能無いから違うんだよって。 でもうーん……実際ログがないからなんとも言えないんだよ。今スキャンしたけどパソコン内にウイルスが入れられてる感じも無いし』


 首を傾げながらもニコはパソコンのカメラで現実の世界を認識する。


 窓から見える外は暗く夜なのが伺える。

 また、ニコを覗き込むのは朽無博人だけで、大沢先生の姿は無かった。


『……大沢は帰った?』

「帰った。しばらく絹お姉ちゃんに儂もパソコン欲しい本殿にも欲しいって強請られて帰して貰えない状態だったけど」


『ふーん。 あっもしかして絹纏童子荒泣神って今このパソコンで動画見てたりする?」


 朽無博人が苦笑して頷く。


「勝手に動画が止まったんじゃが!? これニコじゃろ!? ニコが止めたじゃろ!? 流れ的に!」


 絹纏童子荒泣神の抗議が聞こえないのを良いことに見えないもののリアクションを想像したのかニコは『ニヒヒ』とイタズラっぽく笑う。


『まあわかんないから考えても時間の無駄だししょうがないかな。

 やれることからコツコツと進めたほうが有意義なんだよ。そんなわけで勉強するんだよ』


 朽無博人の表情がしかむ。


「い、今から? 明日からでも良くない? 夜遅いし」


『思い立ったが吉日なんだよ!!』 


「オレ、思い立ってない……」


『ニコが思い立った!』


「儂もやった方がいいと思うぞー。


 ところで動画の続きを見たいんじゃが再生する度にすぐ止めるのやめてくれんかのニコとやら」


 多数決という民主主義の圧により朽無博人からゲームをして胸の残った熱が冷えていった。


 余談ではあるが、朽無博人がベーシックドリルを勉強中に、その朽無博人の脚に座ってウインドウを分割し動画を見ようとする絹纏童子荒泣神だったが。


 タブを拙くドラッグした瞬間、『勉強の邪魔になるんだよ』と無慈悲にニコがウインドウを消し「ああああ! ニコぉおおおお!」と叫ぶことになるのだった。

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