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4-1:神社内を近代化

 朽無博人が敷地内のゴミや参道上の小石などを箒で掃いて居たところ、荒泣神社の前に複数のトラックが停まった。


 従業員と思わしき人たちがトラックの中から小綺麗な家具の数々を社務所へと運び入れていく。


 それを朽無博人が呆然と眺めていると、トラックの一台から降りた大沢先生が「よう」と言いたげに片手を上げて気さくに寄ってくるが、咥えているラッパ型の花に目が行く。


「……公園の花は勝手に摘むと窃盗になるそうだが」


「大人がやるんだったらともかく、それやってるのは大人に命令されたわけでもない純粋な子供ですよ。


 それに目くじら立てるとか息苦しい世の中ですねえ。犯罪っちゅあ犯罪ではありますが」


 朽無博人の背後からひょっこりと顔を出した絹纏童子荒泣神が、じっとりとした視線を大沢先生に向けるが「ん? ああ、これは私が育てたものですよ。そんな事よりも博人くんの住所をここに登録したんでその控えの紙を持ってきましたよ」と、大沢先生が手に持っているカバンから一枚、紙を取り出してみせると目の色を変えてその紙を朽無博人の代わりに手に取った。


「ほ、本当か? 本当なのか!?」 


 

 心底嬉しそうな絹纏童子荒泣神に「はいはい本当ですよ」と軽く答えて、朽無博人に視線を向け直す。


「住所が決まったそのお祝いとして数々の品が運びこまれているが、コレは主に与神協会からの謝礼の品々だな。


 んで、私が来た理由だが簡潔に言えば教材を持って来た。携帯端末持ってるか? データをぶち込んでやる」


 朽無博人が答えるよりも先に朽無博人のポケット内で携帯端末が振動する。


 取り出してみると先ほど絹纏童子荒泣神で見たようなじっとりとした目のニコが映って居る。


『ニコはまだ大沢を信用できてないから、この端末にデータとか入れて欲しくないんだよ。ウイルスを入れられるかもなんだよ』


「私の信用度がまだひくいなあオイ。


 それならコレは用意しておいたパソコンに入れるか。……パソコンに博人くんが取られたって騒ぐんじゃないぞニコ?よ」


 ニコは『嫉妬なんて誰が!』と言いつつ少し間をおいて大沢先生に尋ねる。


『タイプは?』


「ちと重めのノートパソコン。素人ならノートパソコンのが使いやすかろうと思いまして」


『スペック』


「色はグレーで画面サイズ15.6インチ

 CPU8コア16スレッド キャッシュ容量3L 4.2GHz最大5.5GHz パスマーク4万強

 メモリー32GB SSD1TB」


『……ノートパソコンで、よくそんな正気を疑いたくなるものを用意したんだよ』

「料金は与神協会もちだからな。博人くんが助けた内の1人と一緒に自重無く見繕わせて貰った。


 万が一壊れたり不具合が起きても携帯性がデスクトップよりも遥かに高いから持ち運んで対応しやすい。


 冷却台と真夏に自分もろとも涼める箱型の扇風機も用意してあるから熱による心配はあまりしないでいい」


『素晴らしいんだよ』


「光栄だ」


 ニコと大沢先生のやり取りに朽無博人と絹纏童子荒泣神はなんとも言葉が耳を通り過ぎていそうな表情で首をかしげている。

 精神年齢小学生と機械に疎い神様だしそりゃあ、わからん単語の羅列とか首を傾げたくもなる。


 だが業者によって整った社務所内で実際にパソコンを立ち上げると2人と1柱は目を輝かせた。


「セットアップもデータのダウンロードも完了と。ルーターもちゃんと機能して回線も繋がったな」

『「「おおぉぉぉおお!」」』


「テレビだ!」



「テレビじゃコレ!」


「パソコンです。


 今どきテレビがあってもニュースやある程度の質の番組は小さな端末とパソコンで事足りますよ。


 何ならテレビがあったら年に2、3回は気の迷いで見るかもわからん番組のせいで金を取られるから無いほうが良いまである」


『よいしょっと』


 パソコンの画面にニコが映し出され、画面内を飛び回るようにしては居心地良さそうに伸びをする。


「私は疑っておいて簡単にパソコンの中に入るのか」


『インターネット内からパソコンの状態は見れるしぃ? ニコがこっちにも行けるなら嫉妬も何もないんだよ』


「ちょっと気にしてたな君?」


  大沢先生はニコに苦笑した後に朽無博人に向き直って「コレ一台で娯楽も勉強もできる。ニコが居るから操作に関しては問題はないだろう」と言って朽無博人に操作を見せる。


「このベーシックドリルって名前のアイコンで小学校から大学までの基礎教養を学べる。


 少なくとも中学3年の項目を終えるまでは平日に1日6時間以上はやる事をオススメする。わからなかったらニコに聞け」


 勉強と聞いて朽無博人は身がしまる気持ちになるが、殺風景な文字や数字の羅列が目を滑って行く。


 学ばねばと言う意識はあれど、身につけようとする能力は薄いようだ。


「次行くぞ。

 

 この与神って書いてあるアイコンをクリックするとこうだ。


 ホームページに進む。ここから掲示板や文月新聞とか言うチャバネも関わってるページで情報を収集できる。


 詳しくは後でニコとヘルプをクリックしてその内容を読め」


『ほとんど全部ニコにぶん投げたんだよこの人!?』


 パソコンの画面内で何やら文句を言っているニコから視線をそらした大沢先生は伸びをして改めて朽無博人に向き直る。


「とりあえずバイトの研修の前に一般教養を最低中学レベルまで軽くでもいいから身につけてもらうんだが」


大沢先生は後ろ手でマウスを操作して与神のマイページで下の方にあるゲームという項目を起動する。


「勉強、勉強、勉強!ってのも息が苦しいだろ。 好きなことをして息抜きをするのも大事だ。 ってわけで……ゲームは好きか?」

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