初召喚
転送が完了し視界が戻ってくると、そこはコロシアムの様な建物の中と思われる場所でした。
周囲をすり鉢上の客席のようなのもに囲まれたグラウンドのような場所です。
よく見ると端っこの壁のあたりにちょっとだけ光っている地面が見えます。多分あそこが採集ポイントになっているのですね。
本来、このゲームでは特定の場所に採集ポイントというものがあるわけではなく、マップ上にランダムに出現したオブジェクトのうち自分のスキルに適合したものがなんとなく光って見えるって形でアシストしてくれるらしいです。
【調合】ならば薬効のある薬草などが、【鍛冶】ならば有用な鉱石が埋まっている地面が光るらしいです。
しかし、これは光っていなければ取れないって訳ではないらしいです。
その気になれば、この世に存在するもの、全て回収してくることが出来るらしいです。
まぁ、そのほとんどが意味のない記念品程度の価値しかないらしいですが……
後は採集ポイントの反対側のほうには円が何十にも描かれている的や人型の巻き藁なんかが置いてあります。
あれに目掛けて攻撃しろってことでしょうか。
後は特に何もなくただっ広いだけの地面が広がっています。大体100M四方位の広さはあるのでしょうか。
「よし、それではいよいよ始めましょうか。」
私は、グラウンドの中央へと移動しつつ、ウインドウを開き、スキルの項目を呼び出します。そして、10個のセットスキルの中から召喚術を選択します。
すると、『セットスキル【召喚術】のチュートリアルクエストを受注することが可能です、受注しますか?』っという内容のウインドウが出てきます。受注せずにスキップすることも出来るようですが、受けてみることにしましょう。
受注を選択します。
すると、次のウインドウが表示されます。内容は要約すると召喚獣と契約してみようってことみたいですね。
チュートリアルの手順に従ってウインドウを操作していきます。
このゲームではスキル、武技や魔術などを使うには3つの方法があります。
今、私がやっているようにウインドウを直接操作してスキルを選択し使う方法
これが一番確実ではあるのですが、剣を持ったりして戦っている状態だとちょっとやりにくいですね。
ショートカットの設定なども出来るのでよく使うスキルは常に表示させておくといざという時にも安心です。
次に音声入力による使用。
いわゆる、必殺技の名前や魔法を声高らかに叫ぶやり方ですね。
これが一番使われているのではないでしょうか。
最後は思考入力による操作です。
なれればこれが一番やりやすいそうですが、初めての人は操作の感覚がつかみにくくリアルスキルがかなり問われる方法だそうです。
私は今のところ、ウインドウと音声を併用していくつもりです。
それでは、いよいよ召喚獣の契約を試して見たいと思います。
まずはウインドウでスキル名を確認して、せっかくですし音声入力でやってみましょう。
使う魔法は【契約召喚(劣)】です。
魔法【契約召喚(劣)】とはランダムで1体召喚獣を召喚し、契約するための魔法です。
この魔法は1回使うと消えてしまうので、1個に付き1体しか召喚獣と契約することが出来ません。
複数の召喚獣と契約するには、【召喚術】を私のように複数取るか、【召喚術】のレベルを上げて新しい【召喚契約】を覚える必用があります。
【召喚術LV10】で覚える【召喚契約】では(劣)と違い、条件を満たしているものの中からですが召喚するモンスターを選択することが出来ます。
これで、理想のメンバーをそろえていくわけですね。
「お願いです、かわいい子出てきてください。【契約召喚(劣)】」
私の目の前に光り輝く魔方陣が展開していきます。
魔方陣が完成すると、周囲より魔法陣の中心へ光が集まり何か丸いものを象ってゆきます。
そして、魔方陣が消え、光が収まったそこにいたものは……
丸いぷるぷるでした。
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名前 :無し
種族 :スライム
ランク :ただのスライム(LV1)
HP :130
器用 :7
素早さ :7
筋力 :7
生命力 :7
知力 :7
精神 :7
解説
全身ゼリー状の物質で出来たモンスター
体当たりや消化液などで獲物を弱らせ、ゆっくりと取り込んでしまう
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思わす指でつんつんします。
ぷにゅぷにゅとした独特の感触を確かめつつ出てきたスライムを観察します。
見た目は大体直径30cmくらいの水の球体をちょっと潰したらこんな感じかなって形状です。
指先でつんつんした感じではドロっとした感じではなく、程よい弾力の水風船とかを突いてるような感触ですね。
しばらく突いているとスライムの方から私の手に擦り寄ってきてぽよぽとよじゃれてきたのでしばし戯れます。
ふむ、モフモフではないですが、これはこれで悪くないですね。
そう思って今度はスライムに両手を伸ばし胸の前で抱えるように抱き上げます。
少しひんやりとしたぽよぽよの感触が溜まりません。
「うん、これもなかなかいいものです。」
そんなことを言いつつスライムに頬ずりしていると、ウインドウが勝手に開いているのが目に留まります。
何かと思い見てみると、クエスト達成の通知でした。
クエスト達成で下級MPポーション(LV5)が5本もらえたみたいです。
回復量は100しかないみたいなので余り使えないですね。
召喚獣の維持には毎分10のMPを消費するので10分分にしかなりません。
初期のMPを満タンにするのにも3本も必要になってしまいますしね。
いえ、まぁ、回復量100で不足を感じる初心者は多分私を除けばほとんどいないとは思うのですが、実際足りないのです。
これだから召喚術師はとか言われてしまうのですよね。
まぁ、気を取り直して次のクエストです。
次は、召喚獣に名前をつけて見ようですね。
「名前…… 私、あんまり名前とか付けるの得意じゃないのですよね。」
そういいながらも実は、この子の名前はほぼ思いついているのです。
後は、候補の中からどれを選ぶかなのですが。
「よし、決めました。あなたの名前は信玄です。」
そういって私は信玄を両手で掲げ、高い高いみたいにします。
「この名前はとある戦国武将さんからいただいた名前です。きっとあなたも勇猛な戦士となることでしょう。」
そうやって声を変えると心なしか、信玄もぶにゅっと気合が入って引き締まった感触になった気がしました。
……まぁ、あの戦国武将から取られた名前であることは間違いないですし、信玄も機にってくれたみたいだから大丈夫でしょう。
後は、黒蜜と黄粉を用意できれば完璧なんですけどね。
さて、これで名付けのクエストも完了ですね。
ウインドウをピピピっと操作します。
次のクエストは、召喚獣に指示を出そうですか。
しかし、ここで私本来の目的を思い出してみましょう。
確かに信玄はかわいいです。
なかなかのナイスぷるぷるです。
しかし、ぷるぷるではもふもふは補充できないのです。
そして、私には後一つの【契約召喚(劣)】と5Pのボーナスポイントがあるわけですよ。
スライムでこのクオリティならきっとほかの子たちもものすごくかわいいんだと思うんですよね。
後、スキル訓練所にいる間はMPをほとんど気にしなくてもいいので、夢の7体召喚とかも余裕なんですよね。
やっぱり、ポイントとかって中途半端に残すより、一気につかっちゃった方がいいと思うのですよ。
「もはや、誰にも私は止められません。」
そういうわけで、やっちゃいます。
次は30日目標