スキル訓練場
がやがやとした喧騒と共に真っ白になった視界が少しずつ戻っていきます。
そこは、中心に大きな噴水が置かれ、四方へと伸びる道とつながった、広場になっている場所でした。
私と同じ、2期組と思われる初期装備のプレイヤー達が大勢、確かめるように手足を動かしたり、周囲を見回したりウインドウを開いたりしています。
更に、広場の外周では、先輩プレイヤーと思われる人たちが、ギルドの勧誘や初心者支援のための露天などを開いているのが見えます。
ここは、始まりの広場といわれている場所で、この始まりの都市のリスポーン地点になっている場所です。
始まりの都市はここから東西南北へ伸びた大通りにより4つのエリアに区切られています。
NPC、もしくはプレイヤー達がお店を出している第1エリア。
各種ギルドやレンタルの生産施設、図書館などのプレイヤー用の施設が置かれている第2エリア。
NPC達が普通に生活している第3エリア
ギルドハウスや個人用の生産施設など買うことが出来る第4エリア
このようなエリア分けになってます。
私は、その中から第2エリアを目指して歩き出しました。
最初の目的としまして、まずは召喚術師としては召喚獣たちとの契約を済ませてしまわなければなりません。
その辺の隅っこの方でやってもいいのですが、やっぱり人の多いところでやるのは落ち着きませんし、何よりこんなところではゆっくり愛でることも出来ません。
そういうわけで、私は第2エリアにあるスキル訓練所へと向かうことにします。
スキル訓練所とはその名のとおり、覚えたてのスキルを試して使い勝手を確かめたりするための施設です。
施設内ではMPやSPの高速回復の支援が入り武技や魔術も使い放題となります。
また、スキル使用によるスキルの経験値もある程度稼ぐことが出来るので、初めはここでVRの動きなれてからフィールドに出るのがお勧めと攻略ページにもかいてありました。
ただ、当然何時までもここでレベル上げがで来るわけではなく、LVが10を越えると制限が掛かり、獲得経験値が一気に1/10まで下がってしまうそうです。
しかし、スキルレベルが10になればスキルポイントを1Pもらうことが出来るので、もし合わないスキルなら新しいスキルを取得し変更することが出来ます。
そのため、おそらくこの施設は初心者に対する救済処置的な意味合いが大きいのではないかといわれています。
スキル構成を間違え、戦闘や生産で行き詰ってしまった人がスキル構成を安全に変更できるように経験値を稼ぐための施設なんですね。
まぁ、それには結構な時間がかかってしまうのでその時間がもったいないという人はスキルポイントは初回購入時は5Pで500円で次からは1000円で2Pで販売していますのでそちらを利用する場合が多いようです。
私も、場合によっては利用する可能性がありますね。
そんなこんなで歩いていますと、目の前に大きな建築物が、形状としてはコロッセオに近いような建物があります。
ここがスキル訓練所ですね。結構な数の人が建物に入っていくのが見えます。
私も急いで受付を済ますために、列へと並びます。
列は問題なく捌けていき、私の番が回ってきました。
「ようこそスキル訓練場へ。施設の利用は初めて?」
受付に座った、角と鱗のある…… おそらく竜人族のお姉さんに話しかけられます。
「はい、初めて使います。」
「施設の利用方なんかの説明も出来るけど必要?」
ふむ、一応最低限は事前に調べてきたので、大丈夫だとは思うのですが、一応聞いておいた方がいいですかね。
「そでれは、お願いします。」
「分かったわ。」
そういうと、受付のお姉さんは何か、パンフレットのようなものを取り出して、それを受付の机の上に私に見えるように広げました。
「この施設はスキル訓練所。その名のとおりスキルの訓練を行うための施設よ。料金は1時間で100Gになってるわ。連続使用は最大5時間までよ。」
そういいながら、お姉さんはパンフレットのページをめくります。
「訓練場は基本的にプライベートスペースで生成されるわ。 ……プライベートスペースの説明は必要かしら?」
「その辺りは大丈夫です。」
プライベートスペースというのは、私個人ために生成された、私しか入れない私専用の場所ということです。
受付を済ませることで、プライベートスペースである訓練場を生成してもらい奥の扉を使ってそこに転送してもらう形になるのですね。
「プライベートスペースへのフレンドの招待は可能よ。料金はちゃんと払ってもらうけど。フレンドの招待の仕方の説明は?」
フレンドの招待はパーティーメンバーとの連携の確認とかのために必要になるそうです。やり方としてはプライベートスペースに入っている状態でフレンド通信を使って招待のメールを送るだけだそうです。
招待に同意してお金を払うとその場所から訓練場まで転送されるのですが、セーフティーエリアにいるときしか同意できないそうです。
また、使用時間が終わると元いたセーフティーエリアへと戻されるみたいです。
これを利用したワープは無理みたいですね。
「後は、訓練に関してだけど、戦闘用のスキルだけでなく生産系のスキルも訓練することが出来るわ。でも、採掘も採集も出来るけどアイテム自体は石ころしか手に入らないから気をつけてね。」
訓練場には攻撃用の的だけでなく、採掘や採集のためのオブジェクトなんかもちゃんと生成されるそうです。
でも、このオブジェクトはどの種類のスキルでもアイテムを獲得できる代わりにどんなに高レベルのスキルで採掘、採集を行っても石ころしか取れないそうです。
石ころは、外に出ればどこにでも落ちているし基本的に何の意味もないアイテムです。
一応生産系の素材にすることも出来ますが性能はお察しの通りなのです。
「その代わり、持ち込んだアイテムを加工した場合はちゃんと加工できるから安心して。でも、固定の設備なんかはないからちゃんとやるなら、レンタル施設のほうを借りることをお勧めするわ。」
これは、一応生産系のスキルのレベリングは出来るけど、ちゃんとしたものを作りたいなら色んなプラス効果のある固定の設備がある場所を借りられるレンタル施設の方がいいってことですね。
「ログアウトに関しては、利用時間中なら何回ログアウトしても部屋へはいりなおすことが出来るわ。でも、ログアウト中も時間は過ぎてるから気をつけてね」
訓練中もログアウトして休憩を挟んでも料金の払いなおしにはならないみたいですね。
「あとは、MPやSPは訓練場にいる限りすぐに回復するようになっているから訓練中は気せず武技も魔法も使い放題よ。的は壊してもすぐに復活するから問題ないわ。 ……取りあえずはこんなことろかしらね。」
そういってお姉さんはパンフレットを閉じて私に差し出してくれます。
「ありがとうございました。」
私はお礼を言いつつパンフレットを受けとってインベントリのウインドウを開いてしまいこみます。
そういえば、初期の所持アイテムとかまだ確認していませんでしたね。
まぁ、その辺りは契約が終わってからゆっくりと確認すれば大丈夫でしょうね。
「それじゃ、何時間使う?」
う~む、とりあえず所持金は初期資金の5000Gがあるのですが、一応装備なんかにも回した方がいいのでしょうか?
まぁ、そもそも武器はスキルがないのでもてませんし、防具もスキル無しのせいで重いものはペナルティがあるのでたいしたものは装備できませんし、一応生産系のチュートリアルクエストでいける採掘場所には敵MOBはいないらしいですし。
何より、ある程度MPを上げて召喚術の継続時間を延ばさないことにはホントにどうしようもないらしいのでここはがっつりいって大丈夫でしょうね。
まぁ、ログアウトしなくちゃいけない時間も考えると……
「3時間でお願いします」
そう答えると、目の前に300G支払いますがよろしいですか? っていう内用のウインドウが出てきたので了承します。
「はい、それじゃあっちの扉、どれからでも入れるから、がんばってきてね。」
「ありがとうございます。」
私は、もう一度お姉さんにお礼を言うと、訓練スペースに向かいました。
そして、複数の扉から人がいない扉を選び、開けるためドアノブへ手をかけると、プライベートスペースを作成しますか?という内用のウインドウが出てきたので、はいを選択します。
すると、勝手に扉が開いていきました。
覗いてみると、扉の中は真っ白で向こう側は見えないようになっていました。
ここをくぐると訓練用のスペースに転送されるようですね。
「いよいよ、契約のときですね。」
そういって気合を入れると、私は扉をくぐり、訓練場へと転送されたのでした。
次は26日予定