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神のゲームに参加する事になった件  作者: 沙綾
1章 新人時代
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1-5 休日

 


 それから数週間、依頼を受けてお金を稼いでは、下位魔術書を買ったり、装備を揃えたり、生活用品を揃えたり、と中々に忙しい日々を過ごした。

 日々の依頼をこなすことにも慣れ、装備もある程度は充実して少し金銭的にも余裕ができた俺は、村のもう一つの宿である踊る羊亭を訪ねていた。



「あらぁ? ミズキ君じゃない? 今日はまだ昼の仕込みの最中だよ。」


「あぁ、ポーラさん。今日は食事じゃなくて、拠点を移動しようかと思ってね。部屋の空きはある??」


「そうかい! とうとうギルド宿を卒業かい。毎日頑張っていたもんねぇ……。短期のお客さんが帰ったばかりだから、部屋も空いているよ!」



 ちょうど部屋は空いているらしく、長期滞在では最低期間となる1週間分の宿代を前払いする。初めの2日間以外はほぼここの食堂に通い詰めていたおかげで、ポーラさんともだいぶ仲良くなった。そのポーラさんからお釣りと部屋の鍵を受け取る。



「荷物を置いたらすぐ出るけど、昼食はここで摂るので準備しておいてほしい。」



 そうポーラさんに告げて、部屋へと上がる。今日は特に依頼を受けずに、一日休みにするつもりだ。こっちへ来てからずっーと働き詰めだったし、余裕ができた今は少し休むのもいいだろう。防具は外して部屋に置く。久しぶりに軽装となった俺は、腰のグルカナイフと鞄のみをもってギルドへと出かけた。

 この数週間でレベルやスキルも上達して、剣術ではアーツと呼ばれる特殊な技を使えるようになった。今日ギルドに出向いたのは、そろそろギルドランクが一つあがっていそうなので、ラックアップの手続きをするためだ。昼が近いからか、ギルド内には人もまばらだ。空いている受付に行き、ランクアップを頼む。



「ランクアップ手続きですね? ギルドカードをお預かりします。」



 受付嬢にカードを渡すと、そのまま初回登録に使用した水晶球に似た水晶球の台座にカードを嵌めこみ、手をかざす様に促される。スッと身体から何かが抜けるような感覚があり、水晶球が淡く輝く。輝きがおさまったところでカードが取り外され、俺の手に戻される。カードは赤銅色から青銅色へと変化していた。



「これで手続きは終了です。無事にランクアップされていますね、おめでとうございます。念のため、カードの内容の確認をお願いしますね?」


「ん、わかった。ありがとう。……『カードオープン』」


 受付嬢に促され、久しぶりにギルドカードの内容を確認する。


 ○○○


 名前:ミズキ

 種族:人族ヒューマン

 職業:見習い剣士

 レベル:12

 ギルドランク:E(Dランクまで残り10)

 ステータス:

 STR C

 VIT D

 DEX D

 AGI C

 INT D

 LUK E


 スキル:言語理解(S)、剣術(C)[ツインブレイク]、鑑定(D)、魔法適性(C)、格闘術(C)、解体術(D)

 魔法:生活魔法、風術(下級)、水術(下級)

 加護:精霊の加護


 *従者:タクト

 スキル:魔力感知(A)、鑑定(C)、交神(S)

 魔法:初期全魔術、魔道具化


 ○○○


 問題なくランクアップ出来ているようだ。ステータスも伸びているし、スキルの上達も反映されている。受付嬢に問題ないことを告げてその場を後にする。大体冒険者として1人前に扱われるのはDランクに上がってからだという。初心者を卒業したとはいえ、Eランクではまだまだ半人前だな。

 いつもの習慣で、クエストボードの前で依頼書を眺める。今日は休日だが、明日からはまた依頼をこなす日々だ。ランクアップもしたことだし、いつもより1つ上のEランクの依頼書も確認してみる。夜間にしか咲かない花の採取依頼や、近くの村までの護衛依頼など、Fランクには見られない依頼も多いな……。



『野営必須の依頼などもちらほらと混ざるようになってまいりましたね。そろそろミズキ様お1人で、というのは少し厳しいかもしれません……。』


「野営ってことは寝ず番が必要なのか。まだ俺にはタクトがいるからいいが、そろそろ定期的に組む仲間なんかも必要ってことか……? 野営に必要な品も揃えないとな。」


『そうでございますね。「仲間」とは別の、パーティを組める人材も必要かと思われます。パーティ募集の依頼でも出されてはいかがでしょうか?』



 いつまでもソロでいるのはキツイし、タクトの提案通りに後で募集の依頼でも掛けてみるとするか。他に募集しているパーティに参加してみるのもいいかもしれない。そう思いつつパーティ募集の依頼を探すと、クエストボードとは別の場所にまとめてられていた。

 いくつか気になる募集依頼があったが、いまいちピンとこない。一度野営の依頼をしてみてから決めるのもいいかもしれないな。パーティに関しては一度保留として、先に野営用の品物を見に行ってみよう。



 ■■■



 雑貨屋に着くと、奥から金属同士が打ち合う音が聞こえていた。どうやら鍛冶場で鍛錬をしているらしい。邪魔をするのも悪いので、先に店の中で適当に品物を探し始める。野営に必要なものは何があるんだ?



『ここはいつ来てもいい品物ばかりですね。野営に必要なものは保存食やテント、調理器具、雨具に防寒具なのでしょうか……? 私も野営に詳しいわけではございませんので、相談するのが良いのでしょうが……。』


「そうだな。ま、鍛練中みたいだし、気長に待とう。」



 ここの店主は職人気質らしく、打ち始めると終わるまで絶対に手を抜かない。そのため、雑貨屋を尋ねても打ち終わりまで2~3時間待たされることはよくあることだった。いつもは店員が店番をしているのだが、今日は休みのようで見当たらない。保存食やテントらしきものを眺めながら時間をつぶしてしていると、ほどなく奥から店主であるテオドラさんが出てきた。



「…ん? 客か? なんだミズキじゃないか。すまん、待たせたか? 何の用だ?」


「いや、そんなに待ってない。今日は野営具を揃えようと思って訪ねたんだ。」


「ほぅ、野営具を揃えるってぇことはランクが上がったのか。……この村から出る予定はあるのか?」


「あぁ。今すぐにじゃないが、Dランクまで上がったら王都まで行こうと思ってる。」


「じゃぁ、旅向きのやつだな……。このあたりか?」



 そう言うとテオドラさんが布やら毛皮やらをたくさん出してきた。他にも防水布に防寒具にもなる毛皮、小さめの鍋、三脚、火打石の魔法具、保存食、傷薬、虫よけの香草などなど細かいもの含めると十数種類の品がカウンター狭しと並べられる。

 流石に全てを揃えるのは無理だし、いくつかすでに持っている者もある。タクトやテオドラと相談しつつ、買うものを絞っていく。



『香草や毛皮はミズキ様ご自身で用意するのも可能ではないでしょうか?』


「王都までなら、途中宿場町もいくつかある。本格的なテントはいらねぇな。この簡易テントで十分だ。」



 結局、自前で揃えられるものは極力揃えるようにして、簡易テントと三脚、鍋、防水布、保存食を数食分購入することにした。



 ■■■



 踊る羊亭で昼食を摂ってから部屋に引き揚げた俺は、鞄の中の整理を行う事にした。見かけ以上にたくさん収納できるため、色々と入れっぱなしにしてしまって中が煩雑になりやすく、暇を見つけてはこうやって中身の整理をしていた。新しく買った品物から取り出して順に整理していく。

 野営道具一式、予備の防具、砥石にランタン、予備のナイフ。……この古くなった服は捨てるか。財布代わりの袋は、以前よりだいぶ重くなったな。採取用の袋にロープ……。

 一通り荷物をまとめ終え、武器や防具の手入れなどしていると夕食にちょうどいい時間となったため、下の食堂へと降りる。

 素朴な味の家庭料理と、冷えたエールに舌鼓を打つ。思っていた以上に依頼から離れられてなかったけど、久しぶりの休日に心身ともにリラックスしているのがわかる。だいぶ慣れてきたとはいえ、常にどこか緊張していたんだろうな。……早く仲間と合流して「塔」を目指さないといけないけど。また明日から一歩ずつ頑張るとするか。

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