表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神のゲームに参加する事になった件  作者: 沙綾
2章 クラン時代
29/37

2-15 ダンジョン攻略②

 


 朝早くにパーティ揃って王都の門をくぐる。目的のダンジョンがある街までは歩いて2日ほどかかる。今回は丁度乗合馬車の出発と重なったため、それを利用する事にした。目的のダンジョンがある街は王都への交易ルート上にあるようで、なかなかに賑わっているらしい。

 馬車が通りやすいように整備された街道を馬車で進む。王都を出てすぐの所はのどかな田園風景が広がっていたが、いまは木々もまばらな草原が広がっている。不思議なものでこうやってしっかりと整備されていて、馬車の往来が定期的にある街道では魔獣に襲われることは少ないのだとか。王都の周辺は騎士団が巡回して魔獣を狩っているため魔獣に襲われる心配はかなり減るが、交易ルートと呼ばれる街道でも魔獣に襲われる事の方が少ないのだとか。まぁ、交易ルート上に魔獣がでたら真っ先に討伐依頼が出されるから魔獣の方も学習しているのかもしれない。

 そんなことを考えながら馬車に揺られること半日、途中で魔獣に襲われるなどのハプニングもなく目的の街まで到着した。まだ先の街まで行く馬車を見送り街の中へと入る。

 今回俺たちが討伐予定のダンジョンは、今のところこの街のギルドが管理しているようなので、先にギルドに顔を出す必要がある。ダンジョンに関わる常設依頼なんかも見ておきたいしな。


 ギルドに顔を出し、常設依頼を確認した俺たちは討伐予定のダンジョンへとやって来ていた。街から歩いて1時間ほどの距離にあるそれの入り口は山肌にぽっかりと空いた洞窟のようで、ギルド職員が常駐する小さな小屋が無ければ見落としてしまいそうだった。ダンジョンへと近づくと中からギルドの職員と思しき人が出て来た。



「ここは討伐予定のダンジョンだぞ? ギルドの許可証は持っているんだろうな?」


「あぁ、これだろう?」


「あぁ、持っているならいいんだ。お前たちくらいの年代で無理してダンジョン討伐なんてしなくても……。もっと他に実入りのいい依頼がたくさんあるだろうに。」


「ご親切にどうもですぅ~。でも、クランの入団試験ですから、頑張りますよぉ~!」



 ギルド職員の言葉にミルキィが答える。もう一度許可証をじっくりとみた職員は納得したかのように頷いていた。クランの入団試験でダンジョン討伐というのはよくあることなんだろうか?? 許可証を返してもらうついでに、今潜っているパーティの事を聞いてみた。



「あぁ、今潜っているパーティか?? いまはお前さん達の他に3つのパーティが潜っているよ。まぁ、その中でも本当にダンジョン討伐に来ているのは1つだけだろうさ。ひとつは貴族の箔付けで潜っているパーティだし、もう1つは他にも依頼を受けているらしいからなぁ……。クランの入団試験なんだろう?? 早いとこ進まないと先に討伐されちまうかもよ? まぁ、でも無理だけはしないこった。」



 ギルドの職員さんは普通に答えてくれた。守秘義務とかないのか? まぁ、こちらとしては助かるが……。貴族のパーティがいると言うのはいい情報だったな。箔付けというからには最奥までは潜らないだろうが、途中で邪魔をされないとも限らない。このメンツだと見た目で侮られかねないからな。極力他のパーティとは接触しない方向で進んで行こう。職員へ礼を言い、ダンジョンへと足を踏み入れる。外の空気と比べてひんやりとした空気が身体を包む。入口からして1階層は洞窟のようだ。流石に3パーティが潜っているだけあって魔獣の姿はない。



「じゃぁ、ポックルはマッピングを頼む。ミルキィとタクトは交代で索敵を。アーロンはポックルのフォロー、アスタはミルキィのフォローな。俺は殿だ。まだ1階層だからって気を抜くなよ?」


「「「了解っ!」」」


『了解致しました。』



 各々が持ち場に付きダンジョン内を進んで行く。入り口からしばらくは1本道で本当に洞窟の中を進んでいるかのような錯覚を覚える。魔獣の気配もなくトラップもない。張っていた気が緩みかけていたところで道が二股に分かれていた。

 分岐点まで来るとポックルが壁沿いに歩き何かを探している。その行動を不思議に思ったのかアスタがポックルに尋ねる。



「何してんだ?? 罠でもあったのか?」


「いんやぁ~、罠じゃないよー?? 僕達以外にもパーティが潜ってるって聞いてるからさぁ~。マッピング担当の人が何かしるしを残していないかなぁ~っと思って……っと、あったあった! えーっと……ここは左が正解のようだよ!」



 アスタの質問に答えながらも壁から目を離さなかったポックルがしるしを見つけたようだ。ポックルの先導で二股を左へと進んで行く。マッピングするに必要な分岐点の印は幾つかセオリーがあるらしく、それを読み解ければ階段までの正解の道がわかるらしい。

 あの後も幾つか分れ道があったがその都度ポックルが読み解き、最短距離を進むことが出来た。何度目かの分かれ道を右に曲がった先に少し開けた場所があり、下へ降りる階段が姿を現した。



「あ、階段発見! どうする? ダンジョンに入って結構歩いたけど降りて先に進む?」


「そうだな……。他にもパーティが潜っているらしいし、出遅れている俺たちは少しでも距離を稼ぎたいところだが……。」



 そこまで言って。腰のバックから魔道具である懐中時計を取り出す。手のひらほどの大きさのソレは、大まかだが時間を刻む魔道具だ。……中古だけど。最新型はもう少し小さいらしい。時間を確認すると昼の6ッ刻…大体午後の3時くらいか。ダンジョンの中では野営の場所に事欠かないし、光源もある……何より今日は一度も戦闘をしていないから体力の消耗も少ない。



「先を急ぎたいからもう少し進もうと思っている。大丈夫か??」


「私は大丈夫ですぅ。今日は索敵しかしていませんからぁ~。」


「俺も平気だぞ! 戦闘もなかったしな。アーロンも平気だろう??」


「私も大丈夫です。出遅れている分少しでも先に進みたいのは皆一緒ですよ。」


「じゃぁ決まりだね! 目標は3階層への階段だけど、じかんをみて言い小部屋があったらそこで野営準備でいいかなっ??」


「ん。問題ないな。あともうひと頑張りだ。」



 全員一致で階段を下り先へと進む。2階層は1階層と異なり、階段の先は古ぼけたレンガ調の通路へと繋がっていた。等間隔に並んだランプの穂の暗い灯りが通路をぼんやりと照らしている。ここだけ見るとどこかの古城に迷い込んだように感じる。先ほどまでいた洞窟よりすこし細く感じる通路を進んで行くと、奥に魔獣の気配を感じる。



「全法に魔獣の反応ありです~! 複数反応、低ランクの魔獣だと思いますぅ。」


「了解! っと、あいつらか!」



 ミルキィの声にアスタが反応する。その視線の先を辿ると通路の奥、等間隔だったランプの光りが届かずにやや暗がりになっている場所に2匹の魔獣の姿が見えた。と同時にアーロンがたてを構えて先頭へと移動する。

 ゴツゴツとした見た目のソレは、ローリングバーストと呼ばれる魔獣だろう。ゴロゴロと転がって来て対象に触れると爆発する魔獣……というよりも罠に近い生物だ。ダンジョン内でした生息を確認されていない魔獣でもある。

 対処方法は割と簡単だ。あんな風に……。



「『ツイン=ロックシュート』!!」



 魔術などで遠距離からローリングバーストに攻撃して爆発させてしまえばいい。魔術が使えなくても矢や投げナイフを当てたり、最悪その辺の意思を投げて当たれば爆発してくれる。

 このダンジョンはつの魔獣はあっけなくアスタの魔術の餌食となった。爆発した箇所には小さな魔石が転がっている。サクッと回収し、先を急ぐ。夕の3ッ刻…午後6時位までに3階層への階段が見つかるといいんだが……。



 ■■■



 この階もマッピング用の印が描かれていたようで、階段まで最短経路で進むことが出来た。途中ローリングバーストやノーマルスケルトン等の魔獣が出現したがほとんどアスタとアーロンで片づけてしまった。進むスピードが速い事を喜ぶべきか、先行しているパーティがかなり先にいることを嘆くべきか……。


 3階層へと降りる階段のある小部屋で今日の所は野営をすることにした。魔獣は不思議なことに階段のある小部屋にだけは絶対に近づかないので、不寝番を置くつもりもない。ダンジョンでの唯一の安全地帯だ、気を緩めることが出来る所で緩めておかないと後が大変だからな。

 各々野営の準備をする中、俺は腰のバックから魔道具のコンロと鍋を取り出して食事の準備を始める。そもそもこいつらとパーティを組むきっかけになったのも俺の作る料理だったな。その俺が料理番以外の事をしようとすると、皆やんわり料理をするように進めてくるのだ。少し前に加入したアーロンやポックルまでそうなのだから、おとなしく料理番をするほかないだろう……。一応女性が2人もいるはずなんだがなぁ……。

 それはさておき、鍋に水を入れて火にかける。乾燥ハーブと干し肉を細かく刻み、マイマイの実と呼ばれる穀物(玄米をアルファ化したようなもの。普通の玄米よりもずっと早く出来るので、すごく便利だ。)、干しきのこと一緒に鍋へと入れる。干し肉やきのこからだしと塩分が出るのでこれだけでもおいしいのだ。そんな雑炊もどきを焦げないようにゆっくりとかき混ぜる。

『ダンジョンの中でこんなご飯は出てこない!』って最初ポックルが力説していたなぁ。普通は堅パンに干し肉1つか、酷いと水と携帯食(小麦粉に刻んだ乾燥野菜や肉を入れて焼き固めたもの。塩気もなくあまりおいしいとは言えない。)を混ぜたものを一気飲みだったとか。アーロンもしきりに頷いていたところを見ると、どうやらちゃんとした食事は摂らないらしい。特に特殊な環境下だからこそ大事だと思うんだがなぁ、食事。食事がおいしいとモチベーションが違ってくるし、何よりまずい飯は無理だ。主に俺が。

 そんなことをつらつらと考えながら雑炊もどきをかき混ぜている間に野営の準備は終わったようだ。丁度いい具合に雑炊もどきも出来あがっているため、皆で食事を取ることにした。ミルキィなんかはウキウキしながら食器を準備しているな……。


 夕食も終わり、各々好きな場所で休みに入る。万が一だれか他のパーティが通りかかったとしても、タクトが気が付いて起こしてくれるはずだ。明日は早めに出発する事を確認して眠りに付いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ