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神のゲームに参加する事になった件  作者: 沙綾
2章 クラン時代
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2-7 メンバー募集

 


 6階層、7階層で依頼分の肉素材を可能な限り集めて帰路につく。ボス部屋での戦闘がなく、トラップの位置が分かっている分帰り道の方が早く進むことが出来て、ダンジョンから出たのはまだ日暮れ前という時間だった。

 このまま宿をとるか、それとも王都へ直接向かうか相談しているところに、丁度良く王都へ戻るという荷馬車が通りかかり、いくら支払って便乗する事が出来た。ダンジョン帰りで少し疲れも溜まっているため、便乗できたのは幸運だったな。なんとか王都の門が閉まる前に到着し、素材の納品も済ませ、ギルドにて達成報告をすることが出来た。

 ギルドが閉まる時間が迫っていたが、ついでにメンバー募集の依頼を出すことにした。……と、1つここで問題が……実はまだパーティ名を決めていなかったのだ。ギルドの隅にあるテーブルに集まり、あぁでもないこうでもないと協議の結果、『廻る旅人』という事に決まった。……まぁ、みんながいいならいいとおもうよ、うん。



 ■■■



 数日後、魔道具屋でアスタ達の鞄を新調してから、依頼書を見にギルド本部へとやって来た。クエスト板の前で依頼書を吟味していると、何人かからパーティに入らないかと勧誘があった。どれも前衛職を探しているらしく俺だけに対しての勧誘だった。すでにパーティを結成していることを告げると大抵は引きさがってくれるのだが、中にはパーティを解散すればいいとのたまう大馬鹿野郎がいた。なんで既存のパーティメンバーよりもポッと出の野郎を信用して解散しなくてはならないのか、理解に苦しむ。

 しつこい勧誘にうんざりしてクエスト板を離れると、アスタとミルキィにも少なくない勧誘がかかっているようで、話しかける冒険者が後を絶たない。……と、ミルキィが少し困り顔で周囲を見渡し、俺を見つけると駆け寄って来た。



「ミズキさぁ~ん!! あの人たちがしつこいんですぅ。追い払って下さいぃ!」


「勧誘か? 全く……王都のギルドは人手不足なのか?」



 アスタも迷惑そうな顔を隠しもせずにこちらへと歩いてきた。どうやらかなり強引な勧誘があったようだ。パーティで集まっていると流石に声をかけてくる奴らはいないか。にしても、パーティをばらけさせるような勧誘はどうなんだ? そんな勧誘でもパーティに入る奴はいるからそうなのか、ただの嫌がらせが目的なのか……。パーティ募集の依頼を出してからこの手の勧誘がうるさくてならない。



「ミズキ、依頼はどうするんだ? この調子で声をかけられ続けたらたまったもんじゃないぜ?」


「しつこくて困っちゃうですぅ……。」


「そうだな……。少し長めの依頼でも受けて、ほとぼりが冷めるのを待つか……。」



 連日のパーティ勧誘に役々としていた俺たちは、王都周辺の街を回る商隊の護衛依頼を受け、ほとぼりが冷めるまで王都を離れることにした。依頼書を受注し、矢家に必要なものを揃えるためにギルドを出ようとしたその時、丁度外から冒険者のパーティが中へ入ってくる所にかちあった。脇によけてそのパーティが中に入りきるのを待っていると、リーダーらしき男がこちらに寄って来た。



「そういやお前ら、仲間を捜してんだってな? なら俺の下に付けよ。」


「はぁ……。」



 こちらへ向けて唐突に言い放たれ対応に困っていると、ニヤニヤと人の悪そうな笑みを浮かべながら男は更に続けた。



「大方田舎ギルドからやって来たばかりなんだろう? ガキだけでダンジョン攻略ができなくて仲間を捜してんだろうが、さっさと俺たちの下に付いちまえよ。まぁ、そっちの女は悪いようにはしねぇからよ。」


「はぁ……。遠慮しておく。お前たちの下についてもお互いのためにならないだろうからな。」



 予想通りというか、予想よりもはるかに屑な要求に少し呆れながらも、心持丁寧に聞こえるように対応する。まだギルド内部の出来事だからな。ギルド内でのいざこざはご法度だ、ヤルならギルドを出てからだ。……まぁ、簡単に引き下がるとは思えないがな。



「なっ……!! ガキのくせにイキがりやがって!!」



 見た目だけなら10代前半のパーティにしか見えないからか、威圧や暴力で言う事を聞かせようっていう魂胆か……。そんなんで怯むほど場馴れしてないわけじゃない。ヒラヒラと手を振って応対すると、男は顔を真っ赤にして武器に手をかけた……が、一応まだ理性が働いたのか唸るような声で外へ出るようにいい放つ。あのまま武器を抜いてくれた方が後始末は楽だったんだが、仕方ないか。

 男の後に続いてギルドを出る。向こうの仲間も一緒に付いてきたようだ。というか、いざこざの雰囲気を嗅ぎつけてギルド内にいた冒険者も半数ほどは外に出てきて、俺たちを囲むように遠巻きに見ている。その状況を見て、連日の勧誘に辟易としていた俺はこの男に見せしめになってもらうことにした。



「つべこべ言わずに俺の下に付けばいいものを!」


「自分より弱い者の下に付く奴の気が知れんな。」


「っつ! 年下のくせに生意気なんだよ!!」



 そう言い放つと腰の武器を抜きこちらへと襲いかかって来た。仲間も何人か武器を構えてこちらへと突っ込んでくる。年下だと侮っているのか隙だらけだ。奴らの進行方向に突如穴が開く……おそらくアスタが張った罠だろう。全く足元を警戒していなかったためか、全員簡単に引っかかってくれたようだ。

 穴にひっかかり体制の大きく崩れた隙をみて、手首へむけ鞘に入ったままの剣を思いっきり振り下ろす。ゴキッと嫌な音が響き、男は剣を取り落とす。……あれは折れた音だな。耳障りな絶叫は聞き流し、男の仲間へと剣と向ける。と、こちらへ向かって来ていた男たちは、太ももに数本の矢を受けて蹲っていた。どうやらミルキィも容赦しなかったようだ。



「冒険者に年齢は関係ないって~の!」


「……で? まだなにか??」



 こちらへ向かってこなかった男の仲間へ向けて声をかける。あっという間に仲間をのされ、顔面を青くさせていた仲間たちは太ももに矢を受けて蹲る仲間と、手首が倍以上に腫れ上がり、未だに叫んでいる男を抱えて去って行った。とりあえずはこれでいいかな?



「お騒がせしたのですぅ~。」



 ミルキィが周囲のヤジ馬に軽く謝罪をしている。まぁ、ヤジ馬達は負けて去って行った男たちへ向けて野次を飛ばしていて聞いているのか怪しい所だが。なんにせよ、これで無理に勧誘をかけてくる奴らが減るといいんだがな。

 少し遅くなったが、準備に出かけるとするか。



 ■■■



 翌日からの護衛任務では、出発前にいざこざのあったパーティのメンバーと思われる人物が商人に「こんな冒険者を護衛に雇うのか。」というような事を吹き込む等のアクシデントがあったものの、ギルド前での1件が思っていた以上に広まっていたらしく一笑されて軽くあしらわれていた。悔しそうな顔をして去っていく姿を見て、道中にさらなる妨害があるかもしれないと身構えていたが、杞憂に終わった。

 それからは大きな問題なく王都周辺の街を順に回って、再び王都へと帰って来たのは2週間後の事だった。有しているダンジョンの特色なのか、かなり周囲の街も特色のある品を扱っていて、護衛といっても退屈しない旅だった。流石にこれだけ時間が経っていればあの勧誘の嵐も少しは収まっているだろう。

 商人に護衛完了の証をもらい、そのままギルドへと向かって受付で依頼の完了手続きを行う。ダンジョンに潜ったついでに依頼を受けていたため、そろそろギルドランクが上がりそうだ。あと2つ3つ依頼を受けたらカードの更新をしなくては。早くCランクに上げないと、『塔』の攻略もままならないからな。

 手続きが完了し報酬を受け取って帰ろうとすると、奥から職員に呼びとめられた。



「『廻る旅人』の皆様ですね? お待ちしておりました。」


「ギルドの職員さんが何の用ですぅ??」


「メンバー募集の依頼を見て応募してきた方がたくさんいらっしゃいまして。」



 そういうと、職員は続きはこちらでとカウンター奥の個室へと案内される。そう言えばメンバー募集の依頼を出したまま2週間以上も放置してたな。正直勧誘が酷くて募集をかけたのを忘れてた……。

 個室に通され、ソファぁに座るとお茶が出てきた。とりあえず飲んで一息つくと、書類の束を抱えた職員が入って来た。



「お待たせしました。いやぁ、皆さんがつかまってよかった。依頼の期限は設けられていませんでしたが、かなりの応募がありまして。ギルドの方である程度は不適合として除外しているのですが、それでもこの量ですよ? こちらの判断で途中で依頼は下げさせていただきましたが、問題ございませんか?」



 机に置かれた書類の束に手をかけながら、いい笑顔でこちらへと問いかける。笑顔で威圧されるってよっぽど大変だったんだな。あぁ……あれ全部応募者なのか……ちょっと放置しすぎたな。むしろ途中で止めてもらって良かった。



「それは……迷惑をかけたな。」


「いえ、まぁ手間はかかりましたけど。ギルドとしても虚偽報告をしていたもの等の摘発等出来ましたから、気になさらないでください。」


「虚偽報告? ……摘発?」


「あぁ、こちらの事ですので、お気になさらず。それで、こちらが応募されてきた方々なのですが、8割が初心者、1,5割がソロで王都に出てきた冒険者、残りの0,5割が何かしらの問題があってパーティを外された冒険者となっていますね。」



 あいまいな笑顔でお茶を濁し、職員が持ってきた書類の束を分けて示していく。即戦力が欲しいので、全くの初心者は除外して残りの2割分を見てみたが、まだ10枚ほどの量がある。



「問題ってなにがあったんですかぁ??」


「まぁ、皆さんそれぞれ理由は異なりますね。1人は性格の不一致、1人は攻略の方向性の違い、1人は収集癖と浪費癖……酒乱……男色……っと、これは除外しておきます。失礼いたしました。」


「だっ……男色!? 無理無理無理無理!! ぜーったい無理!! ダメ! 駄目だよミズキ!!」


「あ……あぁ。俺も無理だ。」



 一番純朴そうなアスタが過剰反応したのは意外だった。ミルキィなんかは首を傾げているけどな。前衛職ってことだから結構なガチムチなんだろうとは思ったが……やめよう、想像しても何の得にもならない。……まぁ、冒険者にも色々いるさ。俺はそっちの冒険は遠慮したいが……。他の人に関しては特に問題点にはならなさそうだ。ソロで王都に来た冒険者でもランクE以上の2名と、パーティを外された経験者の2名と面接の予定を組んでもらう事にした。

 まずは会ってみて、合いそうなら一緒に軽くダンジョンへ潜って相性を見て、決定という流れがいいだろう。アスタ達にもそう説明して了承を貰う。近日中に決定するとのことなので、数日はダンジョンには潜らずに各々で装備の更新等をして過ごす休日とすることにした。


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