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神のゲームに参加する事になった件  作者: 沙綾
1章 新人時代
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1-1 チュートリアル?




 気が付くと俺は鬱蒼と茂った森の中、少しひらけた場所に佇んでいた。左腕には最後にコピシュが嵌めた腕輪がある。服装も変わっていた。草木染めのような色合いの服に黒い革のブーツ。おそらく皮の胸当てに腰にはショートソードとヒップバックのような鞄が一つ。所謂初期装備だな、これは。



「ってかサポートは!? この世界の説明は!!? ここどこだよ!!!? 仕事が粗いんだよ!! ちゃんと仕事しやがれコピシューっ!!!」



 思わず全力で叫んでしまった俺は悪くない、はずだ。スキルが乗っていた薄い本も消えている。特典なしなのかよ…。

 あまりの事態にうなだれていると、遠慮がちな声が聞こえた。



『大丈夫ですかマスター?』


「誰……だ?」



 声のした方へと振り返った俺は、しばし固まることとなる。なぜなら体長20センチ位の翅の生えた人型の『何か』がふよふよと浮かんでいたからだ。



『お初にお目にかかります、マスター。私はこれからマスターのサポートをさせていただきます、精霊のタクトと申します。コピシュ様より特典のスキルの譲渡、世界に対する説明、ゲームの説明などを依頼されております。』



 俺の目の前で恭しくお辞儀をする精霊さんは、いかにも執事という感じでマスター呼びがものすごく似合っている。この精霊が付けるって言っていたサポート役らしいな。これは知識面でのサポートということになるのか。まぁ、この世界の事もゲームの事も何もわからないから、正直助かる。



「タクト……でいいのかな? 俺は水城。これからよろしく頼む。とりあえずここ森だろ? 危険がありそうだから、先にスキルを選びたいんだが。他の事は安全がある程度確保されてからでもいいだろう?」


『かしこまりました。では、ミズキ様と。こちらがスキルブックになりますので、4つお選びください。ここは獣魔の森と呼ばれる森です。少し距離はありますが、街道も近い辺縁部ですので、おおよそ脅威となりえる魔獣はいないかと。この世界の事などは街道に出てからでもよいでしょう。』



 どこからか取り出した薄い本を渡しながらタクトは言う。

 そんなに危険度は高くないようで一安心だ。本にざっと目を通し、必要なスキルをピックアップしていく。言語理解、鑑定、剣術、魔法適性と選んだところで本が光る粒子と変わり、俺の身体へと吸収されていった。

 これで習得したのか?? 試しにショートソードを振り回していると、だんだんと体が型にはまり、それに慣れていく感覚があった。これが剣術スキルの影響かな。これなら俺でも扱えそうだ。



『スキル習得おめでとうございます。スキルは使用すればするほど鍛えられます。素質があれば新たなスキルの獲得も可能となりましょう。では街道までご案内いたします。今後の説明はそこで。』


「ん、よろしく頼む。」



 周囲に一応の気を配りながら、俺は異世界への第一歩を踏み出した。

 鬱蒼と茂っているように見えた森はしばらく歩くと草原へと抜け、遠くに道らしきものも見えてきた。街道が近いというのは本当だったようだ。

 森を抜けたことで少し気が緩んだのか、知らず張りつめていた息を吐いた。少し緊張していたみたいだ。ほどなくして街道へとたどり着いた。



「特に獣に襲われるとかはなくてよかったよ。思ったよりも治安はいいみたいだな。人の生活圏内だからなのか?」


『そうですね。小動物ならともかく、このあたりの森の辺縁部には危険な獣や魔獣も少ないでしょう。最も、奥深くと分け入っていけばその限りではありませんが。さて、ここから一番近い村まではもう少し掛かります。その間に色々とご説明しようと思いますが、よろしいでしょうか?』


「あぁ、よろしく。」



 それから村に着くまでの道すがら、タクトは俺に色々なことを説明してくれた。この世界の事、今いる国のこと、今の装備の事(腰の鞄は所謂マジックアイテムでアイテムボックスのような働きをするらしい)、貨幣価値(鞄に銀貨が5枚ほど入っていた、初期資金か?)、ギルドのこと、そして、ゲームの事、同じ代理人のこと等々。

 正直覚えきれない。まぁ、聞けばタクトが説明してくれるし、都度聞くようにすれば大丈夫か。



『ミズキ様、ここがブロンセ村でございます。ギルドの支部もありますし、登録を済ませておくとよいでしょう。ここはそんなに強い魔獣もおりませんが依頼は豊富ですし、世界に慣れるにもちょうどよいと思います。しばらく滞在なされてはいかがでしょうか。』


「そうするか。村にすんなりと入れるといいんだが…。」



 タクトと雑談をしながら村へと近づく。申し訳程度の柵に、門らしきものがあり、そこには武装した人間が一人立っていた。門番だろうか?こちらに気が付き声をかけてくる。



「おや? この時間に誰かが来るのは珍しいな。…装備からして冒険者か? どこから来た??」


「やぁ、この先の辺境にある村から来たんだ。冒険者になりたくてね。入っても?」


「冒険者希望か。入れよ。ただし、面倒事を起こした場合はたたきだすからな?」



 はははと笑いながら門番は俺を招き入れてくれた。タクトも一緒だが何も言われないところをみると、そう珍しいものでもないんだろう。親切にも門番はギルドの場所を教えてくれた。村といってもそこそこの広さがあり、ギルドや酒場、宿等たくさん店が一塊となっており一見わかりにくかったので助かった。

 ギルドの入り口をくぐると、思ったよりも閑散としていた。時間もあるのだろうが、空いているというのはいいことだ。早速登録するとしよう。



「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件ですか?」


「登録を。」


「かしこまりました。こちらの用紙にご記入をお願いします。文字が書けない場合は代筆も行っていますが、いかがなさいますか?」



 代筆か。言語理解のスキルを取っているので不要だろう。色々と公にできないものもあるだろうしな。

 代筆は不要と断り、貰った用紙を埋めていく。名前や種族、性別、出身などはよくわかるが、従者や使役獣、得手不得手とか言う項目はなんだ? タクトは…サポート役だし従者になるのか? わからないところは空白とし、用紙を受付嬢に渡す。



「はい、確かに。ではこの上に手を乗せて下さいね?」



 後ろから台座にのった大きな水晶を取り出し、記入した用紙を台座へと入れる。そしてその水晶へ手を乗せろと促された。これも何かのマジックアイテムだろうか?促されるままに水晶へと手を置くと、水晶が淡く光る。しばらく明滅を繰り返し光が納まった。



「はい、お疲れ様でした。ではこのカードに血を1滴たらしてくださいね?」



 水晶をわきに避け、台座から出てきたドックタグのようなものを俺に差し出す。赤銅色に輝くそれに1滴血をたらすと、身体から何かが抜ける感覚と共に溶けるように吸い込まれ淡く光る。



「はい、これで登録は完了となります。お疲れ様でした。このギルドカードは紛失した際の再発行に銀貨1枚必要となりますので、なくさないように管理をお願いしますね? 続いて、ギルドカードの説明をさせていただきます。『カードオープン』と唱えて下さい。」


「カードオープン!」



 ギルドカードに向かいそう唱えると、目の前に透明なディスプレイのようなものが現れた。そこには俺の名前や出身地のほかに、種族、職業、ギルドランク、レベル、スキル、ステータス、加護などの情報が記載されていた。



 ○○○


 名前:ミズキ

 種族:人族ヒューマン

 職業:見習い剣士

 レベル:2

 ギルドランク:F(Eランクまで残り10)

 ステータス:

 STR D

 VIT E

 DEX E

 AGI D

 INT E

 LUK F


 スキル:言語理解(S)、剣術(F)、鑑定(F)、魔法適性(C)、格闘術(D)

 加護:精霊の加護

 *従者:タクト


 ○○○



「これでカードの内容が表示されていると思います。スキルや加護の詳しい内容は、その部分に触れると表示されますからね。このほかに、魔獣を討伐すると討伐数が記録されますので、不正などはできませんよ? カードの内容は任意で表示、非表示が切り替えられます。まぁ、ギルドには筒抜けですけど。あとこの冊子を渡しておきます。ランクとクエストランクについて書かれていますので、必ず目を通しておいてください。」



 そう言って受付嬢は俺に小さな冊子を手渡した。パラパラと流し読みするに、所謂テンプレな内容が書かれているようだ。これなら問題なく覚えられるな。

 赤銅色の輝きを見て、少し頬が緩む。これで俺も冒険者か。



「ほーっ、有望な新人じゃな。これが初回登録じゃろう?それでこのステータスとは、先が楽しみじゃのぅ。道を外さず精進するとえぇ。」



 受付嬢の後ろからの声に思わず顔を上げると、好々爺という表現がぴったりの爺さんがギルドカードを覗きこんでいた。この表示は他人にも見えるのか? いや、切り替えが可能とか言っていたな。早々に切り替えておく必要があるか。

 怪訝そうな顔で見ていたのに気が付いたのか、爺さんは笑みを深くして続ける。



「おっと、これは失敬。わしはこの村のギルドマスターのダリウスじゃよ。久方ぶりの新人登録だったのでな、好奇心で見に来たんじゃ。いや、なかなかに有望な子でなによりじゃのぅ。」


「マスター! 職権乱用ですよっ!」



 受付嬢による抗議もどこ吹く風と言った様子で立ち去っていく。あれがギルドマスターなのか、ただの爺さんにしか見えないが、得体のしれない何かを纏っていたような気がする。やっぱり強いんだろうな。



「さて、マスターの邪魔が入っちゃいましたけど、新人でこのステータスなら戦闘職として申し分なさそうです。魔法適性もあるので、魔術師でも行けそうですね。この表示は『クローズ』といえば終了します。何か質問はありますか?」


「特には…。あぁ、お勧めの宿なんか教えてもらえると助かるな。」



 クローズと呟きながら、受付嬢へと尋ねる。初期資金があるとはいえ、無駄遣いは避けたいところだ。あまたの冒険者を相手にしている受付嬢ならいい宿の情報も持っているだろう。ギルド推奨の宿なんかもあるかもしれないしな。



「おススメなのはこの上、ギルド付属の宿ですね。食事は付かないけれど、1泊銅貨3枚と良心価格です。どこのギルドにも付属していて特に初心者御用達ですよ。ここは利用者が少ないですが…。食事は隣の酒場で取るといいですよ?」



 食事なしで銅貨3枚か。タクトが説明してくれた貨幣価値と照らし合わせても、本当に良心価格でやっているようだ。部屋の様子にもよるが、しばらくはギルド付属の宿で過ごすことにしようか。なにより、森から歩き通しでそろそろ休みたい。

 受付嬢に案内され、ギルド付属の宿の一室へと向かった。そこはビジネスホテルというよりは、物置部屋にベッドと備え付けの木箱がある程度の殺風景な部屋だが、妙に落ち着く雰囲気がある。これならしばらく滞在してもよさそうだ。

 料金を支払い、早速ベッドへ横になるとそうそうに意識が落ちて行った。


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