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神のゲームに参加する事になった件  作者: 沙綾
2章 クラン時代
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2-1 王都

 


 あれから、噂になっていた盗賊団等にも見つかることなく王都へとたどり着くことが出来た。盗賊団関係の追加報酬は見込めないが、道中に何度か魔獣の襲撃はあったため素材を換金した額がそこそこの金額になりそうだ。1週間の護衛任務としてはまずまずの身入りだな。

 パーティを代表して依頼完了のサインをもらい、他のパーティと一緒にギルドへとやってきた。受付で達成報告をし、素材の買い取りも分も含めて報酬をもらう。4パーティで分割したものをさらに4等分し各々へと渡す。



「さて。無事に王都に付いたわけだが……。」


「お城! お城に行ってみたいですぅ!!」


「いやいやいや、名物の食べ歩きでしょ! ね、ミズキ!」


「俺は先に宿を取っておく。…ったく。ここにはダンジョン攻略に来たんだからな? 観光はほどほどにしとけよ??」


「「はーい」」



 報酬を握りしめ、どこへ行くかの相談を始めている2人を横目に、俺は今夜の宿を取るべく空いている受付嬢へと話しかけた。



「ちょっといいか? 王都は初めて来たんだが、お勧めの宿はあるか??」


「はいはい? えーっと、Dランクでしたら眠る小鹿亭がおススメですよ! 王都へはダンジョン攻略ですか? それとも塔関連です??」


「ん? あぁ、少しダンジョンに潜ってみようと思ってね。そうか。王都にも『塔』があるのか。」


「えぇ、メルクリオ王国が管理するコディシオンの塔……通称強欲の塔です。で・す・が! 塔への挑戦を認められるのはギルドランクCからなんですよ? 残念ですけど。 あなたはあともう少しですね!」


「…あぁ、ありがとう…。」



 意外なところで塔に関する情報が得られた。だが、しかし…挑戦権が与えられるのはランクCからか……。俺とアスタは後1つ、ミルキィはあと2つランクを上げなければ塔には挑戦できないってことになるな。王都ではすぐにダンジョンに挑戦しようと思っていたけど、少し予定を変更してランク上げでもするか。すぐに上がると良いんだが…。

 そんなことを考えていると、受付嬢お勧めの眠る小鹿亭へとついた。2部屋を1週間とり、夕方には宿へ集合という事で解散とした。どうやらアスタとミルキィは一緒に王都観光をするらしい。俺は…まず『塔』の見学にでも行くとするか。



 ■■■



 宿から王城と反対方向へと歩いてしばらくすると少しひらけた場所があり、その奥にこの王国が管理する『塔』が見えてきた。『塔』の周囲は石でできた塀で囲まれており、入口らしき場所には立派な門と門番の姿もある。門の両脇には素材買い取りのための店が数軒と……あれはギルドの支部か? 『塔』に挑戦する冒険者の管理をしているし、当然といえば当然か。

 ざっと素材買い取りの店を見てみたが、魔石や何かの魔獣の毛皮、羽根なんかが多かった。中にはこぶし大の魔石を売り払っている冒険者もいて、おそらくは上位冒険者達なんだろう。



『あれはおそらく階層の主が落とす魔石でございますね。この塔はどの程度攻略されているのでしょうか?』


「さぁな。ところで、『塔』は全部で7つあるんだろう? 俺はどの『塔』を攻略すればいいんだ? できれば一番攻略の進んでいる所であってほしいね。」


『どの塔でも問題ありません。というか全ての塔でもよろしいのですよ? 最上階にある魔結晶をどれだけ多く手に入れられるかを競っているのですから。』


「最上階か……。道のりは長そうだな。とりあえず、この『塔』の事を調べてみるとするか。」



 タクトとこのゲームに関する話を聞きながら、ギルド支部へと向かう。おそらく『塔』関連の事はこの支部で一手に引きうけているんだろう。

 中へ入ると、ほとんど王都のギルドと同じ造りだが、違うところがいくつかある。まず、解体依頼のカウンターがない。『塔』の魔獣は解体が必要ないのか?? それに、クエスト依頼板の他にもう一つ目立つクラン募集板がある。その隣にはクランの貢献度ランキングというものが張り出されている。……そもそもクランってなんだ?

 気になるので、まずはクラン募集板の前で内容を見てみる。ざっとみて14のクランがメンバーを募集している。貢献度ランキング上位に名前が載っているクランも募集しているようだ。



『この貢献度というのはなんなのでしょう? ランキングを掲示しているという事は競争心を煽っているのでしょうか??』


「わからん。上位3つが突出しているのはわかるが……。所属するクランを選ぶのに参考になる……のか?」


「にゃにゃにゃー?? お兄さん達は強欲の塔に来るのは初めてかにゃん??」



 タクトと共にクラン募集板の前で話し込んでいると、後ろから声をかけられた。振り向くと猫獣人の女の子が尻尾をくねくねさせながらこっちを見ていた。ミケットさんとは違い、長毛種の猫がベースになっているようで、フサフサだ。

 尻尾の魔力に抗えずにしばらくふらふらと目で追っていると…。



「…聞いてるのかにゃ?」


「…あ。あぁ、すまない。今日王都についたばかりで、塔の見学をしていたんだ。」


「おぉ、新人さんにゃん! 熱心に募集板を見ていたけど、もう所属するクランは決めたのかにゃ~??」


「いや、まだだ。パーティメンバーにも聞かないといけないしな。……というかそもそもクランって何なんだ?」


「ふふふん。にゃるほどにゃ! クランとは『塔』専門の大規模パーティのことにゃん。『塔』を攻略する冒険者は必ずどこかのクランに所属しなければならない決まりににゃってるにゃん。」


「必ず?」


「そうにゃ。冒険者教会に認可されたクランは全部で20あるにゃ。王国認可のあるクランはさらに減って10にゃ。両方に認可されたクランは5つで、どれもランキング上位の常連にゃよ?」



 それからしばらく、猫獣人の女の子(カノンと名乗っていた)とクランについて話し込んだ。貢献度とは魔石や素材の納品を数値化したものだとか、上位クランの特徴だとかを色々と聞くことが出来た。

 それと、ランキング上位のクランに所属している冒険者は、王都で色々と優遇を受けることが出来るらしい。武器防具の割引や宿屋の割引等が最たるものだ。『塔』の魔獣からでる魔石は質がよいものが多く、安定した量を確保するためにもこうした措置は必要なんだとか。



「君とその仲間がよければ、うちのクランに来ると良いにゃ。歓迎するにゃん!」



 そんな勧誘の言葉を残して彼女は去って行った。彼女が所属しているクランは確か『黄金の夜明け』とか言ったか。ランキング上位に名前が載ってるな……。割と大きいクランらしいけど、こういう勧誘とかもするんだな。

 まぁ、少しあいつらと相談してどこかのクランに所属しておくか。『黄金の夜明け』への所属は……まぁ、要相談だな。

『塔』の見学はこれくらいにして、次はどこへ行こうか。王都の武器屋で装備の更新でもしようか。……金額は足りるかな……。



 ■■■



『塔』を後にした俺は、王都の西にある武器屋街に来ていた。塔が近いせいか通りの両脇にたくさんの武器防具屋が並んでいる。武器ごとの専門店などもあるようだ。鑑定のスキルを発動させながら、通りに面している武器屋を一通り眺めていく。どれも同じような品ぞろえが続くなか、ひときわ立派な門構えの武器屋が見えてきた。



「なんか立派な店だな。扱っている種類も多そうだが……」



 店先に並べられている武器を鑑定してみるとそこそこの性能だったため、中に入って更に見てみることにした。中に入るとすぐに店員がやってきた。



「いらっしゃいませ。なにかお探しでしょうか?」


「いや、少し新しい剣を探しているんだ。」



 そう返して自前のシミターを見せる。店員はシミターを見て、ちらっと首に下げているギルドカードを確認するとあからさまに落胆した顔をして自由に見るよう告げて奥へと引き上げていった。

 ……なんだあれ。ギルドランクが低いから対応を変えましたっていう態度に少し腹を立てながら、それでも品ぞろえを見てみる。……駄目だこの店。明らかに粗悪品が銀貨5枚とかで売っている。店先に並べられていたのは見せ掛けの武器か。

 早々に趣味の悪い店を後にして、武器屋街をさらに歩いていく。しばらく歩いていると、武器屋街の端の方にひっそりと建っている店を見つけた。周りの店からは少し離れた場所に立っているその店は、ブロンセ村の雑貨屋と同じように鍛冶場が併設されているようでカンカンと鉄を叩く音が響いていた。

 その音に引かれるように店の中へと入っていくと、少ないながらも武器が置いてあるのが見えた。試しに鑑定をかけてみると、先ほどの店とは比較にならないほどの良品が置かれている事がわかった。これは意外と良い店を引いたかもしれないな。



「ぁん? 客か? ひやかしか??」



 並べられている武器を見ていたら、カウンターの奥から声がかかった。ほどなくしておくからもっさりとした毛に包まれたガタイの良い親父が出てきた。申し訳程度に付いているクマ耳がかろうじて見えている。どうやら熊獣人らしい。



「武器を新調したくてな。少し見ていた。」


「見るだけか……冷やかしなら帰れよ? 最近の若い奴は見てくれや値段だけを気にして性能を見ようとしない奴が多すぎるからな。こういう無骨なのは気にいらんのだろう?」


「いや、どれもいい品なのはわかる。」


「ほぅ……。少しはわかる奴らしいな。どれ、お前の得物はなんだ? 見てやるよ。」



 最初は無愛想に対応していたが、並べてられている品に言及すると態度が和らいだ。得物を見てくれるというので、腰に下げていたシミターとパリーングナイフを外して店主の前に出す。



「ほほぅ。良く手入れされているな……。ふむ……今のお前さんはランクDか。王都ではダンジョンに挑戦するのか?? それとも『塔』攻略に参加するのか?」


「とりあえずはダンジョンに潜ってみようと思っている。『塔』攻略は……まぁ、おいおいだな。」


「ならこのシミターの上位版がいいだろうな。パリーイングナイフの方はまだしばらく使えるから変えることはないな。ちょっと待っとけ。」



 そう言って店主は奥へ入って行き、3本の剣を携えて帰って来た。どれも余分な装飾などはない無骨な雰囲気の剣だ。



「今すぐに用意出来るのはこの3本だ。時間がかかってもいいならこれから打つことも出来るが……どうする?」


「とりあえず、全部見てからだな。オーダーメイドは懐が心もとないし、機会があればという事で。」



 店主から剣を受け取りじっくりと見ていく。剣自体の重さや重心などは以前のものとそう変りない。というか、そういうものを選んでくれたんだろうな。一つ一つ鑑定をかけて見ていくと、2本の剣に目が留まった。


 ●●●

 ファルカタ

 長く湾曲した剣。

 切れ味+2

 ●●●


 ●●●

 カットラス

 湾曲した剣。刀身が短く狭い場所での使用に向く。

 切れ味+1、頑強+1

 ●●●


 どちらも甲乙付け難いいい品だ。ファルカタの方は刀身が長めのため、室内や洞窟などで使用するのは練習が必要そうだが、リーチが長くなるのはいいことだ。『塔』の攻略を前提とするなら取り回しのしやすい刀身が短めのカットラスの方が良いのかもしれない……。これは悩むな。

 散々悩んだ末に両方購入する事にした。『塔』攻略の前にダンジョン探索もあることだし、場面ごとに武器を変えることが必要になってくるかもしれないしな。シミターは買い取ってもらい、2本買うってことで値切り交渉もしたが、痛い出費だった。

 武器屋を出ると、空が茜色になりかけていた。随分と悩んでいたようだ。明日からは少し精力的に稼がなければ……。


週末に用事が入ったので、1話のみ更新。

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