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神のゲームに参加する事になった件  作者: 沙綾
1章 新人時代
12/37

1-11 特訓②

 


 武器指南の依頼を出して数日。村の近くでホーンラビット相手に弓や短剣の練習を2人にさせていたが、中々うまくいかない。まぁ、俺自身弓の扱いなんてわからないし、仕方のない事なのかもしれないな。

 そんな停滞ムードの中で今日もギルドへ依頼書を確認しにやってきた。ボードの前で吟味していると、受付嬢のアメリから声がかかった。



「ミズキさ~ん!! 依頼を受けてくれる冒険者の方が見つかりましたよー!」


「ん、わかった。今行く。」



 メンバーと共にギルド奥の個室へと向かう。そこで顔合わせのようだ。部屋に入るとすでに冒険者が待っていたので、軽く頭を下げる。中で待っていたのは革装備に身を包んだ比較的軽装の2人だった。短剣と弓だから、重い金属鎧は邪魔なんだろうな。

 アメリから紹介を受け、ランクCの高ランクの冒険者だとわかった。パーティの前衛が負傷し療養中のため、3日間の拘束期間も問題ないとのこと。人柄的にも問題なさそうなので、お願いすることにした。



「よろしくお願いしますぅ。」


「よろしく!」



 2人がそれぞれの相手に挨拶をしている。弓を教えてくれるのは長い耳が特徴のエルフの女性、短剣を教えてくれるのはホビットの男性だな。こうやって人以外の種族を目の当たりにすると、異世界なんだと実感する。

 そう言えば、ギルド受付には獣人がいるし、雑貨屋のおやじはドワーフだったな。割と異種族が普通に暮らしているんだな。差別とか迫害とか色々ありそうなもんだけど、どうなんだろう?? お国柄なのか? ……あとでタクトに確認してみよう。



「じゃぁ、期間は今日から3日間ってことでいいかしら??」


「そうだな、それでいい。よろしく頼む。」


「うん、まかせて!」


「「よろしくお願いします」」



 Cランク冒険者に2人を任せて個室を後にする。3日後の2人の成長が楽しみだ。

 さて。久しぶりのソロ依頼は何にしようかな?? 装備を新調したためにさびしくなった懐を少しでも潤わせるべく依頼を選んでいく。少し村から離れた場所の依頼をタクトと一緒に探すと、割と条件に合った依頼が見つかった。スタンプボアの肉の採取依頼だ。



『スタンプボアでしたら場所も問題なさそうですね。草原は見晴らしも良いですから実験にちょうど良いと思われます。』


「草原は色々いるから的にも困らないか。」



 ギルド受付へと向かうと、アメリではなく猫獣人のミケットが担当に変わっていた。ミケット……三毛猫っぽい名前なんだけど、キジトラ柄なんだよなぁ…。そんなことを考えながら依頼の受付をお願いする。



「んにゃー、スタンプボアの依頼ひとつだけかにゃー?? にゃ? パーティメンバーはどうしたにゃ??」


「あいつらは特訓中。その間俺だけで稼ぐから安全第一だろ。」


「そういうことかにゃー! 気をつけて行って来るにゃ!」



 無事に受付を済ませてギルドを後にする。ミケットは最初の依頼から俺の事を見ているからか、よく受ける依頼に口を出してくる。それにブラッディウルフの件の時はたっぷりと叱られた。まぁ、自分でも反省しているし、それはいいのだが……。メンバーからお母さん見たいですねと言われて少々複雑だ。



 ■■■



 村の南にある草原は、ハウンドドックやスタンプボア、ホーンラビットなどたくさんの魔獣が生息している。見晴らしも良く、魔術の練習をするには最適の場所だ。あいつらが特訓している間、俺も魔術を使いやすく改良していこう。

 早速見つけたホーンラビットへ向けて改良版のウィンドショットを放つ。風の速度を上げて圧縮し、回転を加えたそれはホーンラビットに当たると圧縮が解除されて暴風となり、周囲の草を巻き込んで砂埃を上げた。砂埃が晴れた後には、ズタズタに切り裂かれ虫の息の魔獣が残されていた。……意外と威力が高いな。



『ミズキ様……。それは風の初級魔術…でございますよね??』


「あぁ。いや、まさかこんな結果になるとは…。」


『初級魔術でこのような威力が出るとは…。これなら私も牽制だけではなく戦闘に参加できそうでございます!』



 嬉しそうに俺に報告してくるタクト。それにしても、ノックバック位出来るかと期待していたらこの有様だ。……この威力は正直想定外だな。暴風といかもう爆風っぽいから、『ブラスト=ショット』とでも名付けようかな?そのほうが想像しやすい。

 タクトにも改良版の仕組みを説明して使えるようにしてもらう。タクトの攻撃手段が増えるのはいいことだからな。タクトも何度かホーンラビットへ向けてブラスト=ショットの練習をしている。その間俺は解体して使えそうな部位を回収していく。



『ミズキ様! 4時の方向に魔力反応です。大きめですので、目標のスタンプボアかと思われます。』



 最後のホーンラビットを解体中にタクトから声がかかる。どうやら1匹だけのようだ。丁度いいので、もうひとつの改良魔術の的になってもらおう。

 まだ距離があるスタンプボアに向かって、改良版のアクアショットを放つ。今回は圧縮して形状を弾丸状にし、螺旋形に回転を加えている。要するに水でできた銃弾を打ち出すようなイメージだな。1発だと不安なので、立て続けに2、3発続けて放つ。



 ピッ・・・ギャァ!!!



 俺の放ったアクアショットは、こちらに突進してきていたスタンプボアの両前脚を打ち抜き、特徴的な鼻を地面に付けさせた。もちろん、突進の勢いがそれで止まるはずもなく、鼻は無残にも紅葉おろしのようになっていた。……すごく痛そうだ……。

 ダメージが大きすぎて立ち上がれないでいるスタンプボアに近づき、頸動脈を断ち切って止めを指す。ここでは大きな木もないので、血抜きに必要な処置だ。事切れたスタンプボアも解体で大きめの肉ブロックへと分けていく。これで依頼の量に足りているかな?残りは踊る羊亭の女将に渡して夕食にしてもらおう。


「こっちは割と予想通りだな。貫通力と威力が増してる。」


『水の初級魔術でございますね?? スタンプビアの毛皮を貫通できるとは……初級魔術の威力を超えているような気がいたします。』



 こっちの魔術もタクトに説明し、使えるようにしてもらう。元々のアクアショットは、アクアボールを飛ばすだけの魔術だ。これは銃弾を飛ばすイメージだから『アクアショット=バレット』がイメージしやすいか? 銃弾が可能なら、他の形も出来そうだしな。

 他にもいくつか改良版の魔術が思いついたが、もう少し煮詰めて明日以降に試し打ちをすることにした。

 スタンプボアの肉を依頼用と自分用に分け、素材もまとめると、残りはホーンラビットの解体ででた廃棄物と一緒に穴を掘って埋める。割と良い金額になりそうだ。ゆっくりとどの魔術をどう改良するか考えながら村へと戻る。

 ギルドで依頼の完了報告と素材の売却を終えると、今日1日武器指南されていた2人が帰って来た。心なしか装備がぼろぼろになっているような……?



「ミズキさぁ~ん!!」



 手を挙げて合図をすると、アスタが半泣きで抱きついてきた。……これは相当みっちりとやられたようだ。ミルキィは半分魂が抜けかけている。ほほを軽く叩くとこっちの世界に戻ってきた。指南役の冒険者は少し呆れ顔で後ろからやってきた。明日以降もよろしく頼むと告げると、快く請け負ってくれた。報酬は最終日に支払われるため、今日のお礼に自分用に取り分けておいたスタンプボアの肉から少しお裾分けすると、喜んでくれた。明日も手加減なしでお願いしたい。



「うぅっ……全身がだるいですぅ……。」


「打ち身がぁっ……!」



 出来の悪いロボットのような挙動になっている2人を労い、今日はスタンプボアの肉があることを告げるととたんに元気になった。現金な奴らだ、全く。そんな2人にせかされながら踊る羊亭へと向かった。



 ■■■



 そんなこんなで約束の3日間が過ぎた。俺は特訓中の2人を労うべく、毎日食肉採取の依頼を受けては踊る羊亭に提供した。もちろんその間も魔術の改良を怠ってはいない。あれから改良版魔術が2つ程増えた。

 今日は2人の成長を確認するべく、簡単な依頼を受けて草原へとやって来ていた。



『前方2時の方角に魔力反応です。ホーンラビットの群れですね。』


「まずはあたしがっ!」



 そういうとミルキィは弓を構える。キリキリと弓を引き、まず1射。続けて2射、3射と矢を射っていく。以前とは比べ物にならないほどのスピードと正確さだ。ホーンラビットの眉間に次々と矢が刺さっていく。倒れる仲間達によってこちらに気が付いたホーンラビットの半分は逃走し、もう半分は反撃の態勢を取った。



「次は僕だねっ! 『マッド=ピットホール』」



 向かってくるホーンラビットの手前に、広く浅めの落とし穴を作る。泥が敷き詰められているようで、足を取られて転んだホーンラビットへアスタが突進していく。両手に短剣を構えて、起き上がろうともがくホーンラビットへ次々と止めを刺していた。魔獣が向かってくる前に魔術で必死になって攻撃していたアスタの面影はどこにもない。

 2人とも成長したんだなぁ。最後の獲物に止めを刺してドヤ顔で振り返るアスタを見ながらそんな事を考える。武器指南の依頼を出してよかった。



「ん、お疲れ。2人とも良く動けるようになってびっくりだ。」


「でしょでしょぉ~? まぁ、軽く地獄を見たからねっ! これくらいの魔獣ならもう大丈夫だよっ!」


「あっ、あたしも頑張りましたっ!」



 少しは自信も度胸も付いたようで、一安心だ。これからはもっと危険な魔獣や、夜盗なんかも相手にしなくちゃならないからな。少しずつ俺も慣れていかないとな。

 2人が狩った魔獣を解体処理して村へと戻る。特訓の成果も出ているようだし、ギルドカードを更新してみるのもいいかもしれない。きっとランクが上がっているだろう。Dランクになると護衛の依頼が受けられるようになるから、いよいよ王都へ向けて出発出来るようになるな。



「帰りにギルドでカードの更新でもするか。そろそろお前らもランクアップするころだろ?? 新しいスキルが付いてるかもな。」


「おぉっ! そう言えばまだ更新はしてなかった! 特訓の成果が表れてるといいなぁ……。」


「ずっと初心者からランクが上がらなかったので、ランクアップは嬉しいですぅ! ミズキさん、早く更新しに行きましょう!!」



 テンションの高い2人にせかされてギルドへと急ぐ。別に早く行ったから何か変わるという訳でもあるまいし……。気持ちは分からなくもないがな。

 受付嬢へ3人ともカードを預ける。無事に3人ともランクアップしたようで、返却されたカードの色が俺とアルスは鈍色、ミルキィは青銅色に変っていた。

 ニマニマして自分のカードを見つめる2人にも了承を取り、隅の方でカード内容の確認をする。パーティの戦力確認は大事だからな。



 ○○○


 名前:ミズキ

 種族:人族ヒューマン

 職業:魔法剣士

 レベル:20

 ギルドランク:D(Cランクまで残り20)

 ステータス:

 STR C

 VIT D

 DEX B

 AGI C

 INT B

 LUK D


 スキル:言語理解(S)、剣術(C)[ツインブレイク・刺突・カウンタースラッシュ]、鑑定(C)、魔法適性(B)、格闘術(C)[闘気(炎)]、解体術(C) 、気配察知(E)、短剣術(D)[パリィ]

 魔法:生活魔法、風術(下級)、水術(下級)

 加護:精霊の加護


 *従者:タクト

 スキル:魔力感知(A)、鑑定(C)、交神(S)

 魔法:初級全魔術、魔道具化


 ○○○


 名前:アスタ

 種族:人族ヒューマン

 職業:魔術師

 レベル:15

 ギルドランク:D(Cランクまで残り25)

 ステータス:

 STR D

 VIT D

 DEX C

 AGI D

 INT D

 LUK B


 スキル:短剣術(D)[パリィ・フェイント]、魔法適性(D)

 魔法:生活魔法、火術(下級)、土術(下級)


 ○○○


 名前:ミルキィ

 種族:半人族ハーフエルフ

 職業:神官

 レベル:15

 ギルドランク:E(Dランクまで残り1)

 ステータス:

 STR D

 VIT D

 DEX C

 AGI D

 INT C

 LUK C


 スキル:植物鑑定(D)、弓術(D)[ピアッシングアロー]

 魔法:生活魔法、神聖術(下級)、探知術(初級)

 加護:主神の加護(弱)


 ○○○



 3人とも思っていた以上に成長していた。これなら護衛任務を受けても大丈夫そうだな。そんなことを考えていると、ミルキィから声がかかった。



「ミズキさん! ランクアップのお祝いしましょう!!」


「そうだそうだー! 一杯肉喰おーぜ!」


「……そうだな、ポーラさんにでも頼んでみるか?」



 ……その日の夜は結局遅くまで飲み食いしていた。


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