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4.チーム

 錆び付いた扉が軋みながらゆっくりと開かれた。

 ギギギ、と音を立てる扉が不気味に感じられ、開かれた扉を見つめるも動こうとする囚人は一人もいなかった。


「お、おい、まさかチーム戦って事は俺たちが戦うんじゃないだろうな! 初対面の人たちといきなり戦うなんてそんな事出来る筈ないだろ!」


 先ほどから質問を繰り返したりとうるさいメガネの男が声を荒らげた。洸輔もまた同感だった。


『さっきからうるさい人ですね……。さっさと行けよ! その空間ごと異次元に飛ばされたいか! 俺のゼウスで飛ばす事くらい容易い事だ!』


 スピーカーから聞こえる八尾の声は荒々しく、相当苛立っているのが感じられた。これ以上ここにいて本当に異次元へ飛ばされかねない。

 囚人たちは渋々、自身が向かうべき部屋へと向かった。そして重たい扉がゆっくりと閉じられる。これでもう後には引けない。洸輔たちは覚悟した。

 先ほどの様な牢屋などは一切なく、いや、牢屋どころか何もない白い空間にポツンと佇む五つの人影。空気が重たかった。そんな空気を壊すかの様に洸輔が口を開く。


「なんか……わけの分からない事になってしまいましたね。でも今俺たちはこうしてチームになったわけですし、とりあえず自己紹介とかどうですか?」

「それ良いね、何をするか分からない以上、チームの団結力は多分必要になってくると思うし」


 少し高めの声で話したのは一人の男だった。少し長めの髪は金色に染められており、二重でパッチリと開かれた目にすらっと伸びた鼻。俗に言うイケメンとはこのことだろう。体格は身長は百六十五センチの洸輔とさほど変わらない為、おそらく百七十手前といったところだろう。だが、その小柄な身長とは打って変わってその腕は筋肉質でかなりがっちりとしている。イケメンでたくましいなどと言うスペックの男に少し洸輔は嫉妬した。


「えっと、じゃあ俺から自己紹介させてもらうよ。俺の名前は紅衣(くれない) すぐる。今年二十歳になるけどまだ十九だ。工事現場で働いてる。……これくらいでいいかな?」

「ありがとうございます。紅衣さん、これからよろしくお願いします」


 洸輔は礼を言ってから俊に手を差し出した。「俊で良いよ」と笑みを浮かべながら俊も手を握り返しがっちりと握手する。


「じゃあ次は俺が自己紹介します。名前は康川 洸輔、高校二年生でまだ十六のガキですが、どうぞよろしくお願いします」


 高く特徴的でよく通る声、黒髪だが、右側にだけツーブロックを入れてアシンメトリーの少し派手な髪型。顔立ちはいたって平凡で、二重のパッチリと開かれた目が印象的である。身長百六十五センチと小柄で体も細いが、服を着ているからか細いと言う印象をチームに与える事は無かった。

 洸輔が自己紹介を済ませると、一人の女性が口を開いた。


「じゃあ次は私が挨拶するね。名前は秋元(あきもと)かえで、高校三年生だから康川くんの一個年上かな。よろしくね」


 とても可愛らしい声で小柄で身長は百五十にも満たない低身長とロリータ的要素を含みまくっている楓だが、俗に言う巨乳だった。洸輔と俊、そしてまだ名乗っていはいないが、メガネの男が無意識のうちにその揺れるものを凝視していた。

 それに気づいたのか、楓はむぅっと口を膨らませて怒った表情を見せた。はっと我に返った三人はあわあわとしてから謝罪をいれて、そこから流れる様にメガネの男が自己紹介を始めた。


「えっと、どうも、平津(へいづ) かもめって言います。よろしくお願いします。ちなみに僕も高三です。好きなものは基本アニメとゲームが好きです、あと納豆」


 低くよく響く声で、身長はごく平均的な百七十前後。少しヲタ臭がするがコミュ障などではなくハキハキと話す。

 四人が自己紹介を終え、最後の一人になった。ボーッとして話を聞いているか聞いていないか分からないような雰囲気だったが、自分の番だと気づき口を開いた。


斎藤(さいとう) あつしですー。よろしくー」


 のほほんとした雰囲気を醸し出す彼はまるで緊張感が無い。伸びきった長髪で、目が隠れてしまうくらいの前髪を左右に散らして耳にかけていた。百七十五は超えているであろう身長だが、四肢は太くも細くもないごく平均的な男性の体と言えるだろう。

 チームの全員がよろしく、と言葉を交え終えるのと同時にスピーカーからまたあの男の声が聞こえてくる。


「えーと、自己紹介は終わったでしょうか? せっかく待ってあげたんですしまぁ終わってるでしょう。それでは、時間も少し押し気味なので始めましょう、ゼウスウォーズを」


 スピーカー音声がプツンと切れると同時に突然白い部屋が無くなってしまった。次の瞬間には、大きな武舞台の中央に五人、いや、相手のチームも含めて十人が立っていた。八尾のゼウスによって武舞台に飛ばされた十人はお互いを見つめ合う。ケンカをするでもなく、仲良くするでもない。ただ呆然と見つめて彼らと本当に戦ねばならんのかと悩んでいる中、ゴングが鳴らされた。そして直後にMCが声を張り上げた。


「ゼウスウォーズ! スタートォォォォオオ!」


 会場は歓声に包まれた。


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