1話 目覚めたら
――ああ、俺、死ぬのか。
自分の目の前まで迫り来るトラックと沢山の人の騒ぐ声を聞きながら俺は瞼を閉じた。
葛葉港18歳の人生は横断歩道のど真ん中で終わったのである。
「・・・様・・・・・・ーゼ様・・・・・・ルイーゼ様!」
体を揺さぶられ、気持ちの良い眠りから起こされる。誰だよ久しぶりに気持ちよく寝てたのに・・・・・・文句の一つでも言おうと顔を上げたらそこはお城の一室でした
信じられないかもしれないけど俺の目は正常だ。寝ぼけているかもしれない!と頬が赤くなるまでつまんで見たがお城のお姫様が住んでいるような部屋の風景は変わらなかった。
「こ、こここここれはどどどどどういうことだ」
確か俺はトラックに轢かれて死んだと思う。なのに普通に生きているし、生きている以前にここはどこだろうか。どこかの大富豪が莫大な金で俺を手術で助けてくれたのだろうか。ありえないけどありえるかもれない。
冷や汗が止まらないまま部屋をウロチョロしていると自分の体に違和感を感じた。一番違和感があった股の部分を触る。・・・・・・アレが無い。俺は何時の間にチョン切る手術をしただろうか。
体中から血の気が引くのが分かる。鏡で今の俺の顔を見たら真っ青だろう・・・・・そうそうこの女の子のように。
「・・・・・・あれ」
目の前の高級そうなでかい鏡にはパット見は明るい茶で下にいくにつれて濃くなっている髪色で、腰までのゆるいカールスタイル、赤い目はつり上がっていてキツそうな印象を与えるが顔は美少女の部類に入るだろう少女が立っている。
服装は妹が従兄弟の結婚式に着ていたワンピースと似ている。確か・・・・・・シフォンワンピースというものでこれは赤をベージュにピンクや白のフリルと飾りがついていて、肩には薄い白のケープを羽織っている。
スタイルも・・・・・・うむ。悪くない。身長は150~160ぐらいだな!うん!
「ってこの鏡にうつってるの俺じゃないか!!」
本当に訳が分からなくなってきた。事故で死んだと思ったらお城の部屋にいてしかも美少女(俺)になっている。どこの二次元だよ!
「あのルイーゼ様、さっきからなにをなさっているのですか」
ぎゃああ人がいた!と思ったけどさっき起こされたんだった。
しかしおなごの部屋に入るとはどんな男・・・・・・と振り返ると執事服を着たイケメンがいた・・・・・・。
ジャ●ーズのイケメングループに入ってそうな奴だ。
あと執事って本当にいたのか。じゃあ外にでれば生メイドが見れるかもしれない!
・・・しかしルイーゼ。こいつの名前か。
もしかして俺は転生というものをしてしまったのではないか!?いやでもルイーゼの記憶は全くないし、神様が魂を間違えて入れちゃったとか。
どこかのお嬢様だと思うけど・・・・・・とりあえず執事に聞いてみるか。
「おま・・・執事、私のフルネームを答えなさい」
どうだろうかこのちょいとツンデレ風な感じのお嬢様口調は。完璧だ。
「はい。貴方様はルイーゼ・フォン・シャルロッテ・シュトルベルク様です」
長い。長すぎる。外見で外人さんって分かってたけど長い。
「もしかしてこれからはルイーゼ様ではなくルイーゼ・フォン・シャルロッテ・シュトルベルク様と一ヶ月間お呼びしなければならない命令でしょうか?」
「いやそんなめんどくさい命令しない・・・わよ!!えーと、次は、シュトルベルク家とはどんな家か説明しなさい」
執事は眉を寄せて困った表情を作った。なにか考え込んでいる様子だ。
「・・・シュトルベルク家は150年前にここシュトルベルク国を作り、農作物や香辛料を中心に発展しましたが、現在は魔物せいで作物が荒らされたりと不況の状態が続いています。しかしシュトルベルク家は世界でも裕福、な生活ができていると思います」
「一つ質問。お、私はこのシュトルベルク国のなに?」
「姫です」
俺の脳はそこで思考停止した。