独楽
勢いでかいてしまった。後悔しかしていない。
僕の目の前で独楽が回っている。勢いよく回っている。ついさっき回したところだ。
最初こそ、僕の力でそれを回したけれど、そのあとは知らない。彼らは勝手に回ろうとしている。
回る気がないかのようにぐったりとしていたのに、ちょっと手を加えてやったら、自分で回りだした。
彼らは世界が自分を中心に回っていると錯覚している。勝手に踊って錯覚している。
すぐに終わりが来るのだろう。ひとつの独楽の回転の速さがゆっくりと落ちていく。短く永い人生を歩んだ彼に、死神が近づいていく。ソレから逃れたい彼は、最後の力を振り絞って逃げる。が、死神は鎌を振り下ろす。彼はその場でのたうちまわり、それっきり動かなくなった。
ひとつの独楽は回っていた。彼もまた、同じように錯覚している。有頂天になっている彼を、僕は片手で止めた。現実を知った彼はその場でぐったりとして動かなくなった。
彼らは回り終えることで気づいたのだ。自分達を中心に世界が回っていないことに。