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法話例集  作者: 木島別弥
1/3

1、次元

 あるところに、真理を探究するものがいた。彼は、仏僧にたずねていった。

「この世の真理とはいかなるものでしょうか?」

 仏僧は答えていった。

「仏教においては、この世の真理を語るに、より高次元の存在へ霊性を上昇させることが大切だとされている。縦、横、高さ、で三次元。時空となって、四次元。平行宇宙を入れて五次元。波動を体感できるようになれば、六次元。天使や神々とたわむれるようになって、七次元。そして、仏教の悟りによってたどりつける次元は、八次元だとされている。この八次元が涅槃、すなわち、ニルヴァーナである」

「八次元! それはすごい。すると、あなたは何次元まで霊性を上げることができたのですか?」

 凡夫は吃驚して仏僧にたずねた。

「拙僧は、九次元まで霊性を高めている」

「く、九次元。それはいったいどういう境地なのでしょうか!」

「九次元ごときで驚いていてはならんぞ。喝。聞くところによると、最近の物理学会でも霊性を高める研究をしており、聞けば、十一次元までたどりついた聖者がいるとか。まことに、最先端科学とは恐ろしいものだ。最先端科学は、敬して遠ざけるのがよかろう」

 すると、凡夫は、首をかしげて質問した。

「あのお、失礼ですが、物理学がこの世の真理なのでしょうか。物質の根源を探究していけば、大衆は救われるのでしょうか?」

「うむ。鋭い質問である。物理学は、この世の真理ではない。まことの教えとは、当然、即物的なものではなく、この世の真理は、仏の道にあるにまちがいない」

「では、仏教では、十一次元は、いかなる霊性をもつものとして、考えられているのでしょうか?」

「うむ。十次元とは、万民救済を行える菩薩の世界だ。十一次元は、仏性物理によって解説されている。あらゆる粒子は、ダルマ(法)によって生成消滅をくり返すという仏性物理だ」

「尊師は、なぜ、九次元の霊性であられるのに、十一次元の霊性がわかるのでしょうか?」

「バカもの! 本来、九次元であるはずの我が魂は、愚かな汝に説法するために、偉大なるさらなる高次元の存在に導かれて口が動いたためである。それがわからんとは、お主には、信心が足りん!」

 大喝された凡夫は、平伏して仏僧にたずねた。

「すると、この世の真理とは、十一次元の霊性なのでしょうか?」

「うむ。迷えるのも無理はない。実は、わたしは十二次元の守護霊に導かれて、霊性を高め、愚民を救済する定めを背負っているのだ」

「おお、十二次元の守護霊さまとは、なんとありがたいものだ。これは、我々凡夫では、とても戦っても敵わないし、理解することもできない。真理を競い合って勝てるわけがない。十二次元の守護霊に導かれているこの聖者に従えば、きっと苦しみから救われるにちがいない。ありがたや、ありがたや」

「待ちなさい。この程度のことでありがたがってはいけない。そもそも菩薩の慈悲とは、十二次元の守護霊に導かれて行う施しよりも、ありがたく尊いものなのだから、それはあなたには想像することもできないのだろうけど、あなたの想像以上の慈悲と極楽を与えてくれるのが菩薩道というものなのです」

「わかりました。わかりました。今日はありがとうございます」

 こうして、凡夫は感謝感激して飛んで行った。


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