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8/19

Bad again

ガチャ。


「ただいまぁ」


バタン。


ドンドンドンー


静まり返った室内に如月サンが帰ってきた音だけが響く。


ゆっくり顔を上げてうつむいたままで涙を拭った。


スッと目の前に白いシート状のモノが現れた。


「ひんやりします」


神楽サンの説明はただそれだけで。


うつむいたままでそれを受け取る。


持った感じはそんな感じはしないけど?


階段を上ってる如月サンの足音をちょっぴり意識しながら半信半疑で顔に当ててみる。


『ひゃっっっ‼』


トントン


ノックの音と、アタシの驚きの声はほぼ同時だった。


顔に当てた途端、泣きはらした目周りダケがスーッとひんやりしたから。


思わず声をあげちゃったよ。


「妃音様!?」


アタシの声に驚いたドア越しの如月サンの声もまた、驚いていた。


『何でもない!どうぞ』


シートを当てたままでドアに向かって叫んだ。


「失礼致します!」  


如月サンが入ってきてもアタシはシートを外せないでいた。


この気持ち良さ、尋常じゃないんだもん!!


「ご苦労様、如月」


優しげな神楽サン。


「乃亜様は無事に校舎内まで見届けて参りました」


『ありがとう』


シートを当てたままで。


「着替えて参ります」


如月サンは部屋を出て行った。


「コーヒー、いかがですか?」


穏やかな空気が流れる。


『頂きます』


顔から少しシートを離してコーヒーを一口。


『やっぱりおいしい!!』


思わず笑顔になってしまう。


神楽サンは少し失笑気味にフッと笑った。


「やはり妃音様には笑っていて頂かないと」


いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ→→→→→→→→→→!!!!!!!!!!


急激的に顔から火が出そう。


解ってる!


解ってるよ!!!


あくまでも“お仕えしている”立場で言ってるって。


解ってます!!ってば!!!!!


だからこそ止めて欲しい!!


こういうコト、てんで言われ慣れてないから誤解しちゃうじゃないのよ。


今ドキドキしてるよ。


「失礼致します」


如月サンが着替えて現れた。


「オレも着替えてオマエの分のコーヒーも淹れてくる」


ぶっきらぼうにすら感じられる言い方で神楽サンはスッと立ち上がり、部屋を出て行った。


「ありがとうございます!」


嬉しそうな如月サンの声。


「チーフのコーヒー、RCSでもメチャクチャ評判なんです」


本当に嬉しそうなのが表情で解る。


『そうなの?だって2世紀も未来でもこういうやり方なの?』


アタシの勝手なイメージが安直過ぎるダケなのだろうか。


アタシのイメージだと未来ってなんでもオートマチックな気がするんだけど。


妄想がアタシの脳内を駆け巡る。


「我々のハウスキーパーの講習と同様、なんでもかんでも技術の進歩ダケが優れているとは限りません。何百年経ってもいつの時代も温故知新なんです」


“温故知新”、かぁぁぁ。


解ってはいても、言われると物凄く複雑。


“何百年経っても”、とか、“いつの時代も”、とか、何とも思わなかったのに。


“故きを温めて新しきを知る“か。


まぁ、イイコトには変わりないからいっか!


「失礼致します」


神楽サンの声だ。


如月サンがすかさずドアを開けに向かう。


その前に颯爽とドアを開けて入室してきちゃった神楽サンの手にしていたトレイを如月サンが受け取る。


「ありがとう」


神楽サンも如月サンも何とまぁスマートなんでしょう。


動きに微塵のムダも見受けられない。


どんだけハイパーな教育を受けてんだろう、エージェントって・・・。


ちょっぴり身震い。


神楽サンはまさに神のような”カユいトコロに手が届くオトコ”だ。


すでに飲んでいるアタシや神楽サン自身のお代わりも持ってきてくれた。


3人で一息つく。


「やっぱりチーフのコーヒーは絶品ですね!」


「当然だ」


ぷっっっ!


へんな2人。


神楽サンも如月サンもそれ以外は黙ったまま。


何も言わずにただコーヒーを口にして。


如月サンのPPのモニター越しにbossもいて。


自分から言えって???


何から言えばイイのよ。


聞いてきてくれた方がよっぽどイイよ。


アタシ自身、どこから話せばイイのかワケ解んないし。


あ゛っ!


大きく深呼吸して切り出した。


『昨夜、夢の中で、ストーンが青っぽく光ってたの』


ゆっくり、静かめに話し始めた。


3人(boss含む)は黙ったまま。


『そしたら、朝目が醒めてもストーンは夢の中と同じ様に光ったままで』


言いながらストーンと右手に目をやる。


神楽サンの表情も、如月サンの表情も、bossの表情も見てないけど、何となく引きつってるような雰囲気。


『朝部屋で叫んだのはそのせい。自分で収拾がつかなくなって』


「左様で御座いましたか」


完全に凹んでる口調の神楽サン。


また沈黙。


『実は、今もまだ光ってるの』


「えっ!」

「えっ??」


声を上げたのは如月サンとboss。


神楽サンは無言で。


またしても沈黙が流れる。


「それ以外にも、御座いますよね」


ゆっくり、静かな口調だった。


「チーフ?」

「神楽!?」


bossも如月サンも唖然としている。


やっぱりこの人には適わないな。


ってか、あんだけ泣きじゃくったらそりゃ神楽サンじゃなくったって何かしら異変に気付くか。


アタシに驚きも躊躇いも戸惑いもなかった。


神楽サンの反応は大方の予想通りだ。


『しかも、その時に、右手に熱さを感じたと思ったら、、、』


最後まで言ってなくても、


ものすごい張り詰めきった空気に変わってるのをカラダで感じた。


アタシは再度大きく深呼吸してコーヒーを一口飲み話し始めた。


『さっき、通学途中に、突然視界が歪みだして』


更に空気が凍り付いてる気がする。


今にもピキピキ言っちゃいそうなくらい。


この空気に緊張しちゃうよ。


またコーヒーを一口。


3人は終始無言。


『周りの人達がみんな、フリーズしちゃって』


3人の顔を1人1人見ながら話す。

 

如月サンはまるで物の怪にでも睨まれてるかってくらいのひきつりきった顔。


『そしたら聞き覚えのない声でアタシを呼ぶ声がして。必死に神楽サンと如月サンを呼んだんだけど、全然ダメで』


モニター越しのbossは眉間のシワがマックスで。


『じゃあbossに連絡!!と思ってPPをいじったんだけど全く動かなくて』


如月サンやbossとはまるっきり反対の“無”の表情なのは神楽サン。


『そのうちにまるでアタシの感情を表すかのように右手の光が球のようにどんどん大きくなってきて』


何かを感じたらしく神楽サンが自分のPPを操作し出した。


『そしたらレジスタニアが現れて“お迎えに参りました”って言われて。言い知れない恐怖に声に出して叫んだら、光の球が直視出来ない程の閃光を放って。目を開けたら周りの景色が動き出してて神楽サンがやっと声を掛けてくれて』


絶句の如月サン。


bossもPPを操作し出す。


「神楽!」


「かしこまりました!」


えっ?


2人のやりとりに、アタシと如月サンは唖然。


何今の・・・。


“「神楽!」「かしこまりました!」”


って、


何がかしこまったっての?


唖然とするアタシと如月サンを尻目にポーカーフェイスでPPを操作し続ける神楽サンとboss。


「お話するに耐えないであろうコトまで事細かにお伝え下さいまして、誠に恐縮です」


深々とアタマを下げるboss。


「ワタクシはコレにて失礼致します」


モニターからbossの姿が消えた。

 

何かアタシの知らないところで恐ろしく話が進んでる感、爆裂。


無意識に如月サンと顔を見合わせてお互いにクビを傾げる。


唖然とするアタシと如月サンに対して、話し始めてくれた。


「実は、数日前からプラチナムマウンテンが度々光を放つと言う現象が御座いまして」


「あっ!!」


反応する如月サンに、


尋常じゃない勢いで鳥肌が立って、


コトバを失うアタシ。


何となく読めて来たよ?


・・・、もしかして??


「あくまでも仮説ではございますが、妃音様のストーンの異変と、マウンテンの異変が何らかの形でシンクロしてるのではないかとbossとワタクシで推測致しまして」


まさかその意志表示がさっきの“アレ”???


“「神楽!」「かしこまりました!」”


って、わずか2人合計10文字足らずの短い会話に全てが込められてるっての?????


・・・・・・・・・・。


益々唖然。


「チーフが妃音様の居場所を突き止めた時と同じ現象ってコトですか?」


ハッとして尋ねる如月サン。


「その通りだ」


えっ?


2人のやりとりにもまた唖然としてしまう。


「bossからマウンテンの異変を聞いた際、そのコトを思い出し、妃音様にも何かしら起きるのではと言う確信に程近い推測が浮かびまして」


プラチナムマウンテンに異変・・・。


「よっぽど妃音様はマウンテンに導かれし御方なのですね」


ひどく感心してる様子の如月サン。


『時空を超えちゃってるって言う前代未聞の異端児だからなんじゃないの?』


自分で言うのもなんですが。


「もしそうであっても妃音様程の御方は類を見ません」


ド真面目に神楽サン。


アタシは自然とストーンに目が行っていた。


「そもそも妃音様をこの時代に導いたのもストーンですから」


何とも穏やかな神楽サンの語り口に、


自然と納得していた。


そうだよね、考えてみたら。


正真正銘、“守護石”なんだよね。


“あなたにとって、命と同じくらい大切なモノ”


お母様のコトバが否応なく浮かぶ。


もちろん“後継者”だからこその現象なんだろうけど、


アタシが“後継者”じゃなかったら経験“しなくてイイ”コトなんだろうけど、


それでもストーンには最上級の感謝。


アタシの何がストーンに“導かれた”理由かはもちろんわかんない。


だけど、


恥じないように、


アタシらしくいよう。







きっと、


ホントなら、


今のアタシには、


そんなコト想う余裕なんて、


どこにもないんだと思う。


だけど、それでもこんなにも強く感じられるのも、


きっとストーンのお陰なんだね。


この想いをずっと黙ったまま聞いていた神楽サンと如月サンは、ただ満面の笑顔で頷いてくれていた。


この2人のお陰もあるのかな、、、少しは。






まだ明るい時間の空なんて今までこんなにゆっくり見るコトなかったな。


ベランダで青空にストーンをかざしがら色んなコトを想いめぐらしている。


このストーンの意味


を、強く強く意識ながら。


隣の部屋では神楽が“例のシステム”をデザインして如月がプログラミング中。


さっき、また一層“後継者”としての“自覚”みたいなモノを認識したからなのか、


自然と、神楽と如月を呼ぶのに“サン”が消えていた。


ホントに、全くの自然な流れだった。


何の違和感も持たずに“神楽”“如月”呼ばわりしている自分にビックリしたくらいで。


2人は心なしか嬉しそうな表情に見えた。


応える返事もどこかしら嬉々としているような風に聞こえて。


でもやっぱり、依然として、


“戻る覚悟”は、


まだまだないな。


ソレとこれとは、別だよ。


ってか、今現在の状態がギリギリの限界ラインなんだと思う。


まだきっと、“後継者としての覚悟”は完全なモノじゃないと思う。


依然消えない右手の光。


きっとコレも、何かしらの力なんだよね、


アタシ特有の。





“アタシ特有”


・・・かぁぁぁ。


“アタシ”、、、、、って。




神崎妃音?




それとも、



琉按妃音?




どっちにしても、アタシはアタシなハズ。


だけど、


思う。


琉按妃音までのリミットは、


確実に、


一歩ずつ、


いゃ、もしかしたら急ぎ足で、


近づいてきている。


アタシの意思とは全く無関係に。





「妃音様」


ベランダに如月が現れた。


返事が弱々しくなってしまう。


『はぃぃぃ?』


振り返って見た如月はメチャクチャ笑顔だった。


「ピアノ、聴かせて頂けませんか?」


えっ????


ちょっと躊躇しちゃう。


でも屈託のない、無邪気にも見える如月の顔を見ていたら自然と頷いていた。


如月にも神楽程じゃないけど、安心感があるな。


やっぱりそうだよね。


神楽に対してのドキドキは決して神楽個人に対してのドキドキじゃないんだ。


コレで確信出来たよ。


“やっと妃音が楽しそうに笑ってくれた”


あの時の言葉がそのまんま蘇る。


神楽も如月も、きっとアタシは“後継者・妃音様”としてしか見れないんだよね。


それ以外の何者でもないんだ。


だったらアタシだって、神楽と如月のコトは、“自分に仕えるエージェント(時々アニキ)”としてダケ見てればイイんだよね。


難しいケド・・・。










如月は神楽とは違って楽器は苦手らしく、アタシがピアノを弾くだけだった。


だけどビックリしたのが、


歌がハンパなく上手い!!!


声がイイんだ、また。


アタシがチラッと歌ったらすぐ覚えて歌ったんだけど。


アタシのピアノに神楽のギター、加えて如月の歌。


立派なユニットが出来ちゃうじゃない!!!


音楽一家の神崎家に相応しいよ。


もしかしてこの2人がアタシのエージェントなのって、ただの偶然なんかじゃなく、出来上がってた必然??


なんてありもしないコト、思ってみたり。


『神楽、来れるかなぁ』


如月に言ってみる。


「呼んで参ります。ついでにコーヒーを淹れてきてもらっちゃいましょうね」


『ありがとう』


ピアノから離れて、壁に寄りかかった。


大きくため息。


1人になると否応なしに考えちゃうな、


お兄様のコト。


いくらココで考えたって仕方ないのは分かってる。


だけど、無意識に、ストーンや右手を見入ってしまう。


一層、ため息が大きく、深くなる。


今のアタシは、“神崎妃音”より、“琉按妃音”だよな。


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


【妃音】


お兄様の声。


今度は視界じゃなくて、音が歪んでる。


音って言っても、ホントなら無音のハズなのに。


ストーンは????????????


今度こそストーンの状態を見ないと。


????????????????????


黒??????????


黒って何??


直感だけど、


黒ってコトは、


良くない暗示っぽくない?


でも、お兄様だよ?


お兄様じゃないの???


『神楽ぁぁぁ!如月ぃぃぃ!!!』


全力で叫ぶ。


「呼んでもムダだよ、妃音」


!?!?!?!?!?


声がヤケにリアルに、クリアーに聞こえる。


やっぱりこの前と同じ、お兄様の声だ。


ドコっっっ!?


いくら辺りを見渡してもお兄様どころか誰の姿も見えない。


ストーンは黒のまま。


ブレスレットは


黒いぃぃぃ!!!


ダメだ、bossに↑↑↑↑↑


、、、・・・使えないぃぃ→→→


再び。


気を失いそう。


「妃音はずっとココにいてイイからね」


また声だけ。




はぁっっっ!!!





閃光みたいなモーレツな勢いでの鳥肌が立った。


思い出した、この声!!


南山サンに襲われた時、


今朝の“あの事件”の時。


全部同じ、この声だったよ???


『お兄様?』


声の限り叫んだ。


すると音の歪みが消えてストーンの色も元に戻った。


カラダが急にフワッと軽くなった気がした。


「お待たせ致しました!・・・、妃音様???」


まるで魂が抜けたかのような茫然自失のアタシに、如月と神楽は血相を変えてすっ飛んできた。


アタシは泣くコトも、怒るコトも、笑うコトも出来ずに、


ホントに魂が抜けたみたいな状態でいるしか無かった。


“妃音はずっとココにいてイイからね”


どういうコト?


それと、


お兄様の声がするとどうしてストーンが黒くなったりレジスタニアが現れたり異変が起きたりするの?


胸騒ぎがして仕方無かった。


ホントにあの声はお兄様なの?


”お兄様”って叫んだら歪みが消えたってコトは、やっぱりお兄様で間違いはないんだよね。





だとしたら・・・。






アタシのアタマの中には、思いもしたくないけどそう思えば辻褄が合ってしまう、とんでもない仮説が浮かんでしまっていた。


いくら否定したくても出来ない事実と共に。






でも誰に言える?


神楽??


如月?????






言えないよ!


自分の実の兄だよ?


神楽や如月にとっては仕えるに値してしまう存在だよ??


言えるワケないよ。


いくら否定する要素がないとは言え仮説にしか過ぎないし。





じゃあ誰がいる?


お父様?お母様??お祖父様???お祖母様????





バカ言わないでよ!!!


誰が10年以上離れてた人間の言うコトなんか信じるのよ!!!!!


ましてやずっとそばにいたお兄様のコトを。






boss!?





RSCの最高責任者。





アタシを捜し続けてくれたRSCのトップ。





大丈夫かなぁ。





なんの根拠もなかったけど、何となく確信出来た。


“bossになら言える”


ってーーーーー





それともう1つ、コレも違う意味で何の根拠もない仮説、と言うかちょっとした期待。


“もしかしたらbossもそう思ってたりしないかな”なんて。


何も言わず、じっとアタシのコトをただ見てる如月と神楽。


『bossと話がしたい。1人にしてくれないかな』


やっと口を開いたアタシの発言に躊躇いながらも、2人とも何も言わず部屋を出ていってくれた。


「かしこまりました。bossを呼びますね」


って、ちょっと憂いを感じちゃうようなビミョーな表情で神楽が去り際に言ってくれただけで。


2人の背中に心の中で“ごめんね”って呟いた。




「お待たせ致しました妃音様」


速っっっ!!!


音速?


光速??


200年も未来だなんて誰が信じるってのよ、この速さ。


“時差”ってモンがないワケ?????





ぃや、どーだってイイか、そんなコト。


『忙しいトコロごめんなさい』


ちょっと潮らしく。


「滅相も御座いません。妃音様の御用でしたら最優先させて頂きます」


・・・“後継者だから”だよね。


表情が曇る。


大きく深く深呼吸して。


『誰にも聞かれないようにしてもらえる?』


「承知致しました」


穏やかな笑顔のboss。


『如月や神楽にもまだ知られたくないの』


bossの目をジッと見て。


「かしこまりました。仰せの通りに致します」


『ありがとう。』


神楽が置いていってくれたカフェオレを一口飲んで切り出した。


コレまで話した何度かの異変の時に必ずお兄様の声がしたコト。


しかもその後にレジスタニアが現れたコト。


そして、


さっきのコト。。。


bossはずっと何も言わずに黙って聞き続けてくれた。


そして最後に、アタシはとんでもない発言をした。


『あくまでも仮説なんだけどぉ』


コトバに詰まる。


静寂が流れてしまう。


ストーンと手のひらの光を見つめて。


再び深く深呼吸。


意を決して言おうとした瞬間、bossの口から衝撃的な発言が飛び出した。


「琉雅様のコトでございますか?」


目玉も心臓も、飛び出しそうな程に驚いた。


かなりすっとんきょうな顔でbossを直視していた。


「ご安心下さいませ妃音様」


へっ???


何が??


すっとんきょうな顔、継続中。


「神楽も申しておりまして、ワタクシと神楽で超極秘に調査中でございます」


えっっっっっ?????


淡々とbossは言うケド・・・


“だから何が??”


アタシの表情は、100%そう言っていたようで、


「神楽が“琉雅様とレジスタニアが何かしら関係があるのではないか”と申してきまして。聞いた時は言語道断でしたが、神楽がむやみやたらにそんな大それたコトを言い出すヤツではないとは思いまして」


フッと失笑するboss。


「とは申しましても、もしソレが我々の勘違いだったとしたら大問題ですので、あくまでもワタクシと神楽ダケの完全シークレット事案として秘密裏に進めていたトコロでした」







神楽・・・。





不思議と涙が込み上げてきた。





ゴメンナサイ。





神楽の顔が浮かぶ。


でも、尚更考えてしまう。


『当たり前のコト、だけど、、、』


力無く問い出す。


『みんな、アタシが後継者だからやってくれてるんだよね?』


わかってるよ、馬鹿馬鹿し過ぎる質問だってコトくらい。


自分で自分が情けなくはなるけど、


どうしてだか聞きたくて仕方なかった。


アタシの愚問極まりなさすぎな質問にさすがのbossも再び失笑。


・・・ですよね。


「神楽も如月も、妃音様を大変尊敬申し上げております」


え゛っっっっ?????


「わずか数日でそこまでさせてしまうのは、妃音様のお人柄の為せる業ではないでしょうか?」


・・・・・・・・・・。




アタシ、数秒間freeze。




『アタシが???』


地味に涙目&涙声のアタシに、bossはゆっくり大きく、優しく頷いてくれた。


ヒクヒクし出す。


恥ずかしさとかは、まるでなかった。


さっきからそのまま継続の、“驚き”しかなくて。


アタシが?????


尊敬??????????


何で??????????


「ワタクシが存じ上げる皇家の方々の中でも、妃音様程の御方は居られません」


ぃやぃや、全く以て、ワケが分かんない。


だって、ドコが???


アタシのドコが尊敬される??????????


しかも出逢って何日??????????


『ウソ言わないで』


真顔で。


「ウソ偽りは申しておりません。神楽はモチロン、如月も常に申しております」


満面の笑顔のboss。


その笑顔に、偽りは感じられない。


尚更、理解不能だワ。


bossはただただ微笑んでいる。


「妃音様ほどお人柄が顕著に表れる御方はワタクシは今まで出逢ったコトが御座いません」


ぃやぃや、bossこそ僅か数日で何を。


うっすら疑いの眼差し。


「そもそも、プラチナムマウンテンに導かれし御方である時点でソレだけの御方であるコトに違いありませんし、神楽も如月も、これほどにストーンとシンクロなされる御方にお仕え出来るコト自体、誇れるコトだと感じているのだと存じます」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






またしてもストーンに目をやる。


確かに神楽、言ってた。


だけど、


『全然わかんないよ』


まだうっすらと声がかすれる。


「それが妃音様らしさなのではないでしょうか。ワタクシごときが申し上げるにはおこがまし過ぎるコトとは存じますが」


“アタシらしさ”?


ちょっと胸に刺さる。


「妃音様は、妃音様なんですよ」


えっ???


bossの声が、顔が神がかってる気が。


「神崎妃音様であられようが、琉按妃音様であられようが、我々はモチロン、どちらの御家族様に取りましても妃音様にはお変わりありません」


今のbossのコトバ、


豪速球直球ド真ん中にアタシのココロを貫いた。


アタシの意思とは関係なく、自然と涙が溢れ出ていた。


アタシの心の中を見透かされてるみたいなタイミング。


声が出せない位に感極まるアタシに、


bossは何も言わずにただただその場に居てくれた。























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