masquerade
「他にもストーンのパワーを封じようと企てたレジスタニアがマウンテンの怒りに触れ宇宙の彼方に塵となって飛ばされてしまったりと、その力は全くの未知数で、予測も解析も不可能なんです」
鳥肌が立っていた。
準備に集中出来るハズもなく。
如月サンは講義を受けた内容を淡々と話すだけといった感じだったケド、
今まで何とも思わなかったペンダントが、
何だか急に物々しく、とてつもなく重く思えてきた。
その後準備を終え2人に詳しくアタシの部屋で話すコトになり。
“夢”のコト、
“声”のコト。
アタシは、自分の想いを改めて考えさせられているような思いを感じながら話していた。
“このストーンを授かった者としての覚悟”
みたいなモノを。
だからなのか、いつのまにか自然とタメ語に変わっていた。
「妃音様が失踪されようが、妃音様が次期皇位継承者様であられるコトには何ら変わりません。マウンテンが導きし御方はストーンの御加護によって必ずご無事でおられると言う確信がございますので」
この神楽サンのコトバを聞いて尚更思った。
今こんなあり得ない事実を知らされても、“呪縛”とかそんなおどろおどろしい感覚は不思議と無い。
あるのはより強い“覚悟”ダケで。
かと言って、今すぐ戻る気は、さらさらない。
つまりは“皇女”としての覚悟そのものは出来たケド、
“この時代を離れる”覚悟とは、また別モノなワケで。
アタシは一晩中ベランダで星空を眺めていた。
時が経つのもまるで気にせずに。
隣の部屋には神楽サンがいて。
(呼び方はまだ“サン”づけのままのようで。)
如月サンは例のごとく補習に行っていて。
bossにはバレちゃうのかなぁ。
なんて、ちょっとフクザツな思いを抱きながら。
ん?
え゛ぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
久々にブレスレットが光ってるぅぅぅ!!!
咄嗟に隣の部屋の神楽サンを・・・
いない...
どどどどど、、、
どうしよう・・・。
ってか、何でいないのよ神楽サ→→→ン!!!
「妃音様!!!」
来たっっっ↑↑↑↑↑
ちょっと涙目になる。
安心と、ちょっとした怒りで。
神楽サンは動じるコトなく冷静かつ迅速にPPを操作している。
ブレスレットはまだ光ったまま。
PPから出ているモニターはどうやら何かの場所を示しているようだ。
レジスタニア???
“あの時”の記憶が。
えっ!?・・・
周りの景色が、
歪んで見え始めている。
アタシは無意識で神楽サンの腕を掴んでいた。
「大丈夫です」
ちゅど----------ん↓↓↓↓↓
涙腺、崩壊・・・。
号泣したい気持ちを堪えるのに必死。
自然に流れる涙を左手で何度か拭う。
この涙の理由は、もちろん神楽サンの“大丈夫です”による最高潮の安堵感。
こんなに“コトバの力”が強い人も、多分他にはいないだろう。
なんてコトを悠長に思っている余裕は実は全くなく、さっきより歪みが大きくなっている!
自然と神楽サンの腕を掴む手に力が入ってしまっている。
ちゅど→→→→→→→→→→ん↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
アタシの右手の上に神楽サンの右手が重なった。
なぜかたったそれだけで一層アタシの“癒しのツボ”に直撃。
いゃ、そんなコト言ってる場合じゃないだろさっきから!!
だけどそのくらいの絶大な安心感があるよ、神楽サンには。
あっ・・・。
歪みが消えた。
光も消えた。
掴んでいた力がフッと弱まる。
「妃音様?」
『歪みが』
「歪み?」
えっ?
神楽サンの表情。
どうみても驚いている。
『歪んで、、、ない?』
眉間にシワが寄る。
絶句。
アタシだけが歪んで見えてたっての?
「ワタクシは何も異変は感じませんでした」
・・・・・・・・・・?????
どういうコト!?
「申し訳ありませんが、お話し頂けますか?」
困惑顔の神楽サン。
「如月!!」
話し終わるなり、神楽サンはPPで如月サンを呼び出した。
「ハイ!チーフ!!」
すぐに如月サン登場。
何度見てもこの何Dか分からない立体動画に驚かされる。
「今bossと一緒か?」
神楽サンの顔が強張っている。
「ハイ」
おっ!!!
boss登場。
「お変わりありませんか?妃音様」
bossも、神楽サン程では無いモノの安心感がある。
「boss、たった今妃音様のブレスレットが反応致しました」
神楽サンがすかさず報告。
「と言ってもワタクシのモニターには全く反応しなかったんです」
「何ぃ???」
bossにも一瞬にして眉間にシワが寄る。
「しかも、妃音様のブレスレットが反応している間、妃音様だけ景色が歪んで見えたそうです」
「お体の具合は大丈夫ですか?ここ数日、あまり優れない様子だと伺いましたが」
bossがアタシに話し掛けている。
数百年も先の未来にいるハズのbossが、
リアルタイムで。
何ともunbelievableな状態なんだろう。
ノイズも時差も全くなく。
『お陰さまで。bossや神楽サンや如月サンが手配してくれたSMPのお陰です。ありがとうございます』
「妃音様までbossだなどと!!どうか朱雀とお呼び下さい」
ププ---ッ!
慌ててるbossがおかしくて仕方なかった。
思わず吹き出し笑い。
「そのようなお言葉遣いもどうかお止め下さいませ。如月からは聞いておりますが」
困惑しきりのboss。
『は〜い!』
笑いながらわざとらしく伸ばしてみる。
神楽サンはただ失笑しているだけだった。
「先程のブレスレットが光っていた時と言うのは、ストーンはどのような状態だったのですか?」
あ゛・・・・・、そう言えば。
つい神楽サンの顔を見てしまう。
ストーンの状態、、、
どうだったっけ。
ポカンとした顔で神楽サンを見る。
「ワタクシにはストーンも何の異変も見えませんでした」
ポカンとするアタシの代わりに神楽サンが答えてくれた。
『ごめんなさい。アタシ、見てませんでした』
「そんな!謝らないで下さい。そんな状態の時にこちらこそ不謹慎でした。申し訳ありません」
ありゃりゃりゃ。
bossに謝らせちゃってるよ。
『bossこそそんな』
こっちが恐縮しちゃうじゃないのよ!!
「あくまでも仮説ですが、もしストーンが何かしら光るなどしていれば、神楽のモニターがしっかりレジスタニアをサーチしたと思うのです」
はぁ。
ポカンとするしかなく。
「ワタクシが妃音様をお迎えに上がった際、何らかの形で防波されて直接妃音様の元へ行けなかったのと同じケースと言うコトでしょうか」
見たコトもない程の神妙な表情で如月サンが言った。
「と言うコトは、ブレスレットが効かないと言うコトになります、、、よね」
神楽サンのコトバに如月サンもbossも一層顔つきが険しくなる。
アタシはたまらず口を開いた。
『アタシが・・・、』
一旦言い掛けて。
ちょっと胸が痛くなっちゃったから。
『早く戻れば済むの?』
本音は、
言いたくなかった。
アタシがそんなコト言うのが余程衝撃だったのか、bossも神楽サンも如月サンもみんな憂慮の表情に一変してしまった。
少しの沈黙も。
沈黙を破ってくれたのは神楽サン。
「いえ妃音様。ご自分を責めるのはお止め下さいませ。レジスタニアを壊滅させられない我々に全責任がございます」
深々とアタマを下げる神楽サンに、bossも如月サンも続いた。
コトバには出さないけど、かなり畏縮。
「どのみちレジスタニアを壊滅させない限り妃音様はドコにいても狙われます。妃音様が狙われてしまうのは完全に我々の責任でございます」
bossが続けた。
“ドコにいても狙われる”
またしても、考えさせられてしまう。
“自分の立場”を・・・。
懲りずにベランダにいた。
今夜も眠れずに。
最近、あんまり眠れてないな。
仕方ないけどね。
今まであり得なかった展開が次から次へと起きてるんだから。
精神状態を保てているだけ奇跡だよ。
いつノイローゼとか、精神崩壊とか起こしてもおかしくなさそうなモノだけど。
コレも、ストーンのお陰なのかな。
ソレと、
隣の部屋に目を向けた。
“一心不乱”とはまさにこのコトなんだなって状態でPPを操作している神楽サンと、
神楽サンよりは遥かに頼りないケドムードメーカーの如月サン。
そして、
神楽サンとは違った安心感のboss。
この3人のお陰もあるんだろうな。
ちょっとニヤけちゃったりして。
近くにはいなくてもいつでも隣にいてくれているような安定した絶対の存在感。
そして何より、
神通力とも言うべき神憑り的なあの“コトバのチカラ”かな。
脳波にまで刺激されるくらいのチカラ。
アレも解析不能な力の1つだね。
ん・・・?
んんん・・・・・・???
何の前触れもなく突然閃いた!!
“解析不能”
“プログラミングが得意”
“チーフがデザインしたシステムをプログラミング”
アタシは神楽サンの元へ急いだ。
ある仮説を抱いて。
『神楽サン!!!』
アタシの勢いに神楽サンは圧倒され気味で。
一瞬ダケ戸惑っていた。
「いかがなさいましたか妃音様」
手が止まる神楽サン。
『例えばの話なんだけど』
何故か軽く息を切らして。
『ストーンの力って、与えられた人によって様々なんだよね』
何故かアタシ、高揚気味。
心なしか後退気味の神楽サン。
「ハイ」
上がり気味のアタシは尚も続ける。
『与えられた人以外は触れるコトすら出来ないって言ったよね』
「ハイ」
アタシ、畳み掛ける。
『だから、解析も不能だって言ったよね』
「ハイ」
『神楽サンや如月サンのチカラを持ってしても?』
「えっ!?」
神楽サンの表情がふと変わった。
やっと本題。
の前に。
「妃音様、お座り下さいませ。何かご用意致しますか?」
表情はビミョーに困惑気味だったケド、態度と口振りは至って冷静な神楽サン。
アタシも深呼吸してテンションを普通に戻して返事する。
『コーヒー、飲みたい』
冷静を装おうと、ほんのりはにかんじゃう。
「一緒に行かれますか?」
笑顔での神楽サンの問い掛けに間髪入れずに頷く。
さすがに今は1人になりたくないから。
神楽サンもきっとソレを見越してくれたんだな。
そのままキッチンで話し始めた。
『アタシが身につけたままだったら解析システム作れない?』
また神楽サンの表情がチラッと変わった。
「妃音様?」
どうやらアタシの提案は突飛もなかったようだ。
神楽サンの表情がちょっぴり怖かった。
「確かに妃音様におかれましては歴代の皇王様方の時にはなかった現象が多く見られます」
と、ココでコーヒー完成。
『頂きます』
すかさず一口。
「なおかつ、今まではコレと言って守護山でもあるプラチナムマウンテンはおろか、ストーンを解析しよう等と、半ば恐れ多いコトを考えた者すらいなかったでしょう」
話し方が既に生真面目過ぎる神楽サン。
堅苦し過ぎて何となく聞いてるのが疲れそうになるよ。
「ですが、妃音様のケースが特殊なのと妃音様からのご依頼であるコト、そして先程のコトがワタクシ事ではこざいますがどうしても気になりますので、妃音様がそうおっしゃって頂けるのであれば、是非ワタクシからも妃音様にお願い申し上げます」
そう言うと神楽サンはアタマを下げた。
“先程のコト”???
『モニターに反応しなかったのとストーンが光らなかったコト?』
「ハイ」
ソレとストーンの関係性??
全くアタシには理解不能だった。
「ひいては妃音様の歪みにも関わるコトではないかと推測致しますので」
ますます理解不能。
まぁイイや、神楽サンに任せよう。
「まずシステムをデザインしてから妃音様にご協力頂きます。今夜はとりあえず安心してお休み下さい」
また神通力だよ!!!
ホントに“フゥ〜っ”と肩の力が抜けてくカンジがする。
コレのお陰で今夜はぐっすり眠れそうだよ。
んっっっ???
ドコだ、ココ。
真っ白な大地。
だけどかなり荒れ果てて。
赤褐色の空。
この前とは違う。
草木1つ生えてなくて、地面はかなりひび割れてて。
ストーンは???
え゛っっっ!?
うっすら青みがかってる。
何で!?!?!?!?!?
しかも浮いてる。
アレっ?
遠くに人が見える。
誰!?
神楽・・・サン?
ちょっと違うかな。
如月サン???
、、、、、いゃ、違うな。
boss??・・・
でもない。
誰!?
霧なのか何なのか、霞んでハッキリ見えない。
しかも後ろ姿。
・・・・・・・・・・、はっっっっっ!!!!!
まさ、か...
『お兄様!?』
もちろん後ろ姿だから幼い頃の面影も何もわからないけど、
とっさに呼んでいた。
するとスッと姿が消えてしまった。
そのままアタシは目を覚ましていた。
カーテンの隙間から陽が射し込んでいる。
どうやら朝まで寝れたようだ。
でも・・・
目覚のテンションは、サイアク。
ストーンを見つめて、ちょっぴりふけってみて。
お兄様・・・。
何で最近お兄様がやたら離れないんだろう。
そりゃあんなん見ちゃったら仕方ないか。
衝撃的だったからね。
・・・・・・・・・・
後継者になれない自分が後継者のいない間すらも何も出来ない。
お兄様はどんな御気持ちなんだろうか。
ダメダメ!!
また離れなくなっちゃうよ!?
気を取り直して下に降りよう!!
・・・ん?
今日は吐き気?
ごく軽いモノだけど。
またストレス性かな。
そりゃ次から次へとおかしくもなるか。
吐き気だから今度こそSMPで治るでしょ。
隣にまだ神楽サンいるかなぁ。
部屋のドアをノックしてみる。
・・・無反応。
もう下に降りてるのかな。
下に行ったらお願いしよっと。
はぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
イッキに血の気が引いた。
なぜなら、、、
ふと目にしたストーンが、
うっすら青みがかったままだったから。
アレは夢じゃなかったっての???
ぃや、夢だよね。
じゃぁどうして!?
ダメだアタシ。
完全にキャパオーバーだ・・・。
どうしよう。
下に降りれない。
!!!
また吐き気だ。
すぐには治まるのだけど。
無理!!!
もう無理!!!
とは言え、だからと言ってどうにかなる問題でもない。
じゃあどうすんのよ。
だからどうにも出来ないんだってば↑↑↑↑↑
ぅああああああああああ!!!!!!!!!!
アタマを抱え、心の中で大絶叫。
、、、、、
あ…れ???れ???
アタマを抱えてる右手に何故だかふんわりとした熱さを感じてる。
ゆっくりと手をアタマから離し目もゆっくり開けて右手を見た。
ひゃっっっっっ↑↑↑↑↑!!!!!!
※☆@△☞♯♭⇨○
みみみみみみみ…
右手がストーンと同じ様にうっすら青みがかってる↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑!!!!!!!!!!
ぼんやり光ってる。
アタシ モウゲンカイ、、、デス。。。
ショリ シキレマセン・・・・・・・・・・
「妃音様!?!?!?」
えっっっ???
目の前に神楽サンがいた。
何で?
いつの間に?????
キツネにつままれたみたいな半ばオマヌケな顔で神楽サンを見る。
「妃音様の発する波動があまりにも強すぎて、ブレスレットが反応致しましたので」
あっっっ。
階段をモノ凄いスピードで駆け上がってくる音がするよ?・・・。
もしかして。
「妃音様!!!!」
案の定如月サンも血相を変えてやって来た。
「ブレスレットが異常に反応しましたがどうかなさいましたか!?」
.....神楽サン、如月サン。
2人があまりにも心配そうな顔をしてるからごくごく自然に涙が出てきちゃったよ。
うつむいて涙を拭う。
「妃音様??」
「妃音様!?」
2人の声が重なる。
『ありがとう、2人とも。それと、ごめんなさい』
泣き笑いで。
2人のこんな哀しそうな顔、見たくなかった。
“「妃音様がいてチーフがいてワタクシがいる。こんな最強の組み合わせ、他に無いと思います」”
不意にあの時の如月サンのコトバが浮かんだ。
聞いた時は
“何言っちゃってんの!?”
なんてバカにしちゃってたけど、
今は思える。
“ホントにそうかも”
って。
凸凹コンビの様でいて、
実は誰よりもお互いのコトを理解していて、
なおかつ実は気が合って。
こんな2人に護られたら、そりゃ最強かもね。
そう思ったらなんだかまた泣けてきた。
『ご飯準備行けてなくてごめんなさい。2人とも大丈夫?』
涙をグッと拭いて。
「ハイ妃音様。ご安心下さいませ。ちょうど一段落致しました」
如月サンの笑顔がやたらと優しく見えた。
「申し訳ありません。ワタクシはちょっと急用がありましてRCSに行っておりました」
えっ!?
ってコトは?
『如月サン1人でやってくれてたの!?』
思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。
「ハイ。でもまだ下ごしらえですから」
如月サンは純粋な笑顔で言ってくれた。
ありゃりゃ。
『ごめんなさい。じゃ続きやろっ』
とびきりの笑顔で立ち上がった。
「ですが」
「妃音様!!」
2人同時に止められた。
『ヘンな夢見ちゃったの!!さすがに夢の内容までは言う必要ないよね!?』
アタシのコトバに2人ともぐうの音も出なくなったようで、渋々ではあるけれどわかってくれたみたいだ。
さすがに夢の内容まではいくらなんでも話す必要ないでしょ。
「妃音様」
2人の情けない表情がちょっと辛かった。
何事も無かったかのようにその後は過ぎ、何事もないままいつものように学校へ向かった。
ストーンも手も、青みがかったままで。
パパママはもちろん神楽サンにも如月サンにも突っ込まれない。
度々アタシが意識して右手に目をやっちゃうコトに対しては、ママや神楽サンとかに尋ねられるけど。
2人には見えてないのかなぁ。
コレは言わなきゃいけないよなぁ、きっと。
えっ?????????????????????
駅に向かう途中だった。
また、周りの景色が歪み始めた。
えっ!!!!!!!?
神楽サン?
如月サン???
2人だけじゃなかった。
周りの動きがフリーズしていた。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
ブレスレットが光ってる!!!!!!!!!!
しかもこの光。
・・・・・南山サンの、“あの時”と同じ。
一気に心拍数が激しく上がる。
アタマに血が上ってるのがわかる。
「妃音様!」
ドキ→→→→→→→→→→ン↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ドスすら感じる、地を這うような迫力の低い声。
胸が焼けそうな程に熱くなってる。
一気にアタマに血が上ってるのがわかる。
心拍数もMAX。
神楽サ→→→ン!
如月サ→→→→→ン!!
何してんのよぉぉぉ↑↑↑↑
そんなトコで突っ立ってないで早く助けてよ!!!
いつもなら
”妃音様っっっ!!”
って言ってすっ飛んで来てくれるじゃないのよ!
はっっっっっっっっっっ!!!!!
そうだ!boss!!!
bossにならPPで呼べ、、、、、
ない……よ?
PPが、、、、、、、、
効か、、、ないぃぃぃぃぃ。
ぅそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
心の中で叫ぶ。
!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!
右手の光が強くなり、大きな球のような形になってきた。
「妃音様、お迎えに参りました」
目の前に現れたのは、“あの格好“をした集団だった。
レジスタニアだ、間違いなく。
“お迎えに参りました”って???
”消される“!!!!!
そう思った瞬間、アタシは全力で叫んでいた。
ぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
声に出して叫んでいた。
☆☞@♨♯※⇨⇩!!!
手元の光が眩さを増しながら、直視出来ない程の閃光を放ち天高く真っすぐ真上に放たれた。
「妃音??????」
えっ??????????????????????????????????????????
アタマの中、混乱。
目の前に確かに神楽サンがいる。
何でっ?
“何で?”ってのもおかしいけど、
言いたくなるよ。
周りの風景が動いてるし、
如月サンも神楽サンもちゃんと目の前にいるし。
2人とも朝みたいな情けない顔して。
こんな2人の顔を見ちゃったら、
「妃音!?」
「妃音!?!?!?」
その場にへたり込んで泣きじゃくってしまっていた、
人目もはばからず。
近くの公園に移動し一息つくことにした。
如月サンには、乃亜に心配させないようにととりあえず乃亜と登校してもらうコトにして。
今ここには神楽サンと2人。
途中、右手を何度となく無意識的に見てしまう。
恐らくそれに気付いてるであろう神楽サンが何も言わないのが逆に怖い。
「高等部特進科2年の神崎如月と神崎妃音・並びに大学部機械工学科4年の神崎神楽、欠席申請御願い致します」
神楽サンが学院に連絡してくれてる声だけが響く。
それ以外は、家に着くまでずっと無言だった。
何と出来過ぎた偶然なコトに、幸いにもパパもママももう出掛けていた。
良かったぁ。
こんな時間に帰って来たなんて、ママに心配かけちゃうもんね。
安堵の大きな深いため息をつく。
「妃音様?」
!!!!!ドッキ→→→→→→→→→→ン↑↑↑↑↑↑↑!!!!!!!!!
『はいっ!!』
つい声が上擦る。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
今神楽サン、メチャクチャ小さく吹き出し笑いした↑↑↑↑
笑ってんじゃないわよ!!!さっき助けてくれなかったクセにぃぃぃ!!!!!
って言いたいケド、言えないアタシ。
心の中で叫び、小さくため息をつく。
「bossも同席させて宜しいでしょうか。」
えっっっっっっっっっっ。
思わず顔がひきつる。
何だか物々しくなってないか?
「ではモニタリングは許可いただけますか?」
何だろう、この、柔らかい物腰なのにも関わらず感じてしまう迫力は。
『はい』
意味もなく敬語に戻っちゃうじゃないのよ。
「ご承諾頂きまして大変恐縮でございます。感謝致します」
深々とアタマを下げて。
何も言い返せなかった。
複雑な気持ちに襲われちゃって。
今までこんなに自分のコトを人に話さなきゃいけないコトなんて、3歳の“あの日”だけだったから。
それと、
“アタシに起きてる出来事”なのに、
自分の意思とは全く無関係のトコロで、こんなにも周りの人を巻き込むコトに対しての困惑で。
とりあえず着替えよう。
『着替えたい』
ぼんやり気味にそう告げながら部屋に向かった。
脳みそ、かなり溶けてそうだな。
ってか、むしろ入ってるかなぁ。
全部溶けて流れ出てんじゃないだろうか。
部屋に入った瞬間、ドッと急激に猛烈なまでの疲労に襲われた。
それでも無意識に右手に目が行ってしまう。
ぼんやりとした熱さ。
未だに光ってる。
ストーンも光ってる。
“着替える”とは言ったモノの、ドアの前で立ち止まり、その場に座り込んでしまっていた。
クローゼットまでわずか数歩なのに。
座り込んだアタシは、“無感情”に近い状態でただジッと、ストーンを見つめていた。
アタマの中はさっきのコトが離れずに。
なぜなのか、涙がこみ上げてきた。
完全にキャパオーバーなんだな、きっと。
光る右の掌に、同じ光を放ったままのストーンを乗せて右手をただただ見つめる。
こぼれる涙を時折左手で拭いながら。
着替えよう!
気合いを入れて立ち上がる。
着替えてる間も心はここに在らずだった。
涙は溢れて来たら頬を伝う程度しか流れてなかったケド、
何も考えられなくて。
ドアをノックする音。
神楽サンだね、きっと。
「神楽デス。よろしいでしょうか」
瞬殺だった。
“神楽デス”の“かぐ”あたりでアタシの涙腺と理性は崩壊した。
『どうぞ』
涙声の返事に反応してなのか神楽サンは慌てた様子で入ってきた。
精一杯涙を堪えてる表情が神楽サンにバレて、神楽サンは手に持っていたコーヒーの乗ったトレイをミニテーブルの上に置いた。
「どうなさいましたか?」
って、鬼気迫る表情で言いながら。
アタシはたまらなく我慢出来なくなって、何も考えるコトなく神楽サンに抱きついてしまっていた。
無感情な状態なアタシに特別“照れ”とか“驚き”とかもちろんなく。
ごくごく自然だった。
「妃音様???」
神楽サンの声は心なしか震え気味なようだった。
神楽サンの声を聴けば聴く程涙がこぼれる。
「妃音様?」
優しい、温かいいつもの神楽サンの声。
止まらない涙をどうにかコントロールしながらゆっくり口にした。
『ごめんなさい。でももうちょっとこのままでいさせて下さい』
呼吸を整えながら、ゆっくりと、大きく深呼吸しながら。
「ワタクシごときので宜しければ、いつでも何分でも好きにお使い下さい」
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
神楽…サン・・・。
細いケド、がっちりしたカラダ。
“ご安心下さい”や“大丈夫です”だけじゃない、神憑り的な安心感。
神楽サン的にはあくまでも“お仕えしている”立場のアタシ。
だけどこの安心感は尋常じゃない。
アタシは神楽サンの胸で、しばらく泣き止めないでいた。




