神様の宝石でできた島
何で寄りによってこんな時に神楽を呼ぶのよ!!
何の嫌がらせ!?
殺人的なタイミングだワ。
額や掌にヘンな汗かいてるし地味に呼吸が乱れてるし。
まさかbossが何か言った??
まさかねぇぇぇ。
だからって神楽を呼ぶのは反則過ぎるよ。
顔も恐らく絶好調に引きつってる気がするし!!!
外のテラスに移動した。
「失礼致します!」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛↓↓↓↓↓
神楽登場→→→
心拍数、急上昇。
ヤメて、精神衛生上良くないからぁ。
「神楽も座れ。そのコーヒーは神楽の分だ」
「えっ?あ、ハイ」
神楽もメチャクチャ動揺してるよ。
「失礼致します」
神楽は対面に座っていたアタシとお父様の間に座った。
「妃音も明日で17歳だ。そろそろ話しておかなきゃいけないコトがあってな」
あっっっ・・・・・、
明日誕生日か。
バタバタしててすっかり忘れてたよ。
「このプラチナムストーンは持つ者それぞれに秘められたパワーが異なるのが特徴だ」
はいぃぃぃ。
存じておりますよ?
「ただ、このストーンに導かれし者が後継者の証であるのと同様に、もう1つ誰にも共通する効力がある」
ほぅ。
アタシも神楽も黙ったまま。
「妃音には想う人はいるか?」
ぁん???????????????
何て!?!?!?!?!?
またむせた。
本日2度目の失態。
『はぃ???』
むせた勢いで声がかすれてる。
「このストーンには、運命の相手をも導く力があるらしい」
!!!!!!!!!!
??????????
アタシ、フリーズ。
「コレは歴代の皇全てに共通しているコトで、記録としても残っている」
えっ???
まさか、、、
何度か反応したコトあったよね、、、神楽に。
分からないままスルーしてたけどさぁぁぁ。
もしかして今のこの感情もそうなの?
はっっっ!!!!!もしかして何度かあったぼんやりとしたストーンの光も?????
青っぽく光ってたのを思い出した。
「ワタシもそうだったがそれまで一度も異性に対して特別な感情を抱くコトは無かったのだが、皇妃と出逢った時に初めて人を好きになった」
っっっっっ!!!!!
心臓、急停止。
「ワタシだけではない。皇大王様も全ての皇が同じ経験をして、その御方とその後の人生を共にしてきたそうだ」
おーーーーーまい、がーーーーーーーーーー!!!!!
収まっていた喪失感&悲壮感復活。
笑えなさすぎだろ。
寄りによってその“運命”の相手が神楽なんて。
「この先誰か妃音にも想う相手が現れたらすなわちその相手が妃音の運命の相手と言うコトだ。覚えておきなさい」
話すだけ話してお父様は部屋を出て行った。
あり得ないよ。
泣くに泣けないし笑いも出来ないし。
もうやだ!逃げたい消えたい今すぐいなくなりたい地球に帰りたいぃぃぃぃぃ↓↓↓↓↓
乃亜ぁぁぁぁぁ。
アンタが願っていたアタシの初恋?がこんな悲劇になっちゃったよぉ。
「ご昼食の後は皇大王様のお部屋で妃皇王教育です。ご昼食のお時間になりましたらお迎えに参ります。失礼致します」
そう言って神楽はテーブルを片付けて出て行った。
アタシはしばらくそのまま動けなかった。
やっとまともに出来た1人の時間は、尋常じゃない程に切なく永く無機質な時間と化していた。
神楽にいちいち過剰反応してしまう。
精神衛生上かなりの劣悪な環境。
昼食はお母様のお作法教育、その後はお祖父様の妃皇王教育。
何とか気を紛らわそうと教育に集中して。
とは言え教育の間は視界に神楽がいる。
意識して視界から外して何とか乗り越えて。
夕食もやっぱりお作法教育。
もう嫁にでも来たかのような詰め込みっぷり。
加えてみんなの前では至って普通に接して(るつもり)。
部屋に戻るとどっぷり疲れが出る。
頑張って何とか精気を振り絞って気丈に振る舞っている(つもりの)アタシと相反して、全くいつもと変わらない様子の神楽。
理不尽なのは百も承知で神楽に対してイライラしてしまう。
ムリだ、こんなんで神楽がアタシのマネージャーなんて。
消えたいよ、マジで。
神楽にも失礼だ。
こんな運命、皮肉すぎる。
「本日も1日お疲れ様で御座いました。ではまた明朝。私はこれにて失礼致します」
『ありがとう』
アレから神楽の顔を一度も見れていない。
神楽に対してメチャクチャイヤらしい程に素っ気なく接してしまっている。
ダメだっっっ、決めた!
『bossぅ』
モニターに向かって呼び掛けた。
「ハイ妃音様」
音速並みの速さで現れた。
『やっぱりムリだワ、アタシ』
bossの顔は見れる。
悲壮感爆裂だけど。
わざとらしく無反応なboss。
『マネージャーは、、、他の誰かにして・・・、下さい』
完全に自己中でしかない発言だった。
bossはまだ無反応。
アタシの躊躇いを見抜いているんだろう、きっと。
『神楽の為ならって承認しようと思ってたケド』
最低だな、アタシ。
「神楽は、“ワタクシは妃音様の御意思に従うまでです”と、ワタクシの問い掛けに答え、自分の意見は申しませんでした」
bossがやんわりと教えてくれた。
神楽・・・・・。
余計に辛い。
本音は神楽が望む通りにしてあげたい。
でも、今のアタシにはそんな力(メンタル的なね)はナイ。
「まだ保留にしておくコトも出来ますが?」
bossはそう妥協案を提案してくれたけど、
『いっそのこと、神楽を外して下さい』
最低な本音だった。
今までどれだけ神楽に支えてもらったの?
どんだけその神楽を裏切るの?
でも、だからこその決断だった。
今までたくさん支えてもらったから尚更これ以上の迷惑は掛けられない。
「かしこまりました」
bossがモニターから消えた途端、一気にぶわっと涙が込み上げてきた。
自分の情けなさゆえの、号泣ではない涙。
悔しすぎてすすり泣き。
たまらず外に出て空を見上げた。
星がにじんで見える。
アタマの中にはCrystal skyが流れてきた。
アタシのココロは全く以てCrystalじゃないけど。
「妃音様ぁぁぁ!!」
部屋の中から如月の声がしている。
反応出来ないよ。
「入りますよ!!」
えっ!?
声が近くなった。
『勝手に入って来ないでよ!!』
bossとかしか勝手には入って来れないハズなのに。
「コレを緊急事態と呼ばずして何と呼ぶんですか!」
何?如月、有り得ないほどにコーフンしてる。
『何よ』
泣き顔を見られたくないから背中を向けたままで。
「チーフが何をしたって言うんですかぁ!!」
ぁん???
「昼間からおかしいですよ、チーフ」
『知らない』
ぶっきらぼうに。
「昼前に皇大王様に呼ばれたからって妃音様のお部屋に行って帰って来たら取り乱してるし、今もbossに呼ばれて帰って来たら何だか真っ青な顔して立ち尽くしてたので慌ててbossに確認したら妃音様からの命でチーフを妃音様付から外したって聞いて、驚きのあまりいてもたってもいられなくなっちゃいました!」
えっ!?!?!?
うそ・・・・・。
『だって神楽アタシの前ではフツーに』
顔を思いっきり引きつらせたまま如月に顔を向けた。
「そりゃ妃音様の御前だからですよ。相当ギリギリのトコロで耐えていたと思いますよ?」
ウソだぁぁぁ!!
全く信じてない。
『あの堅物鋼の男の神楽がんなワケないじゃないのよ』
ハナで笑いながら。
半分強がりだった。
「まさか皇王様に問い詰めるワケには行きませんから皇王様と何をお話になったのかお聞かせ頂けませんか?」
「如月!!!!!」
bossだ。
メチャクチャ鬼の形相だ。
さすがに一瞬怯む如月。
「何やってるんだ!ヤケに妃音様の御部屋から騒々しい声がすると思ったら!妃音様、申し訳御座いませんでした」
如月はbossによって即座に強制連行されていった。
静かになる室内。
ふぅぅぅ。
深くため息。
神楽が取り乱す?
真っ青な顔して立ち尽くす???
どうせ堅物クソ真面目だからなだけでしょ。
でも・・・・・、
胸が捻り潰される程に痛く切なく辛い想いのまま、翌朝を迎えてしまっていた。
「おはようございます妃音様。お誕生日おめでとうございます」
誕生日の朝の挨拶1発目は神楽じゃなく、如月だった。
しかも昨夜みっちり説教されたのか、メチャクチャしおらしい。
『おはよう如月』
寝不足プラス精神的にヤラれているせいで尋常じゃ無い程にバックテンションなアタシ。
「しばらくの間、ワタクシがお仕えさせて頂きます。よろしくお願い致します」
胸が痛い。
『お願いね』
ソレしか言わないアタシに業を煮やしている様子の如月。
「チーフはお休みを頂いております」
アタシの様子を確認しながら。
『そう』
何を言わせたいのよ如月は。
「本日のご予定は・・・」
如月が今日のスケジュールを読み上げてる間も上の空だった。
ホールに行くと、お父様・お母様・お兄様・お祖父様が勢揃いしていた。
「お誕生日おめでとうございます」
「誕生日おめでとう」
エージェントさんや家族みんなが口々に祝福してプレゼントをくれるその中に、神楽の姿はなかった。
お父様の表情もどことなく暗い。
神楽がいないコトは本人以外の多くの人達にも動揺を生んでいるようだった。
「妃音様のバースデーセレモニーは国民への御披露目と一緒に来週の週末で調整致します」
bossだけがいつも通りに淡々と任務をこなしてくれていた。
何とも言えない申し訳なさを痛烈に感じていた。
今日は初アカデミア。
伝説のエージェントのまさかの解官は、アカデミアにも衝撃的な事件として伝わっているようで。
自分のしたコトの重大性に、今更ながら押し潰されそうになっている。
休み時間も昼休みも1人離れてボケーッとしているアタシを如月は何も言わずに黙ったままそばにいてくれて。
きっと如月のコトだからいろいろと問い詰めたいハズ。
昨夜の勢いで。
でも敢えて黙ってくれている。
もしかしたら気付いてくれてるのかな。
“誰よりも人の気持ちに敏感”な如月だから。
「乃亜様、お元気ですかね」
突然如月が言い出した。
何も返せないアタシ。
「楽しかったですね、あの1ヶ月は」
顔を上げて如月の顔を見た。
すごく温かな表情をしていた。
「出逢った時から我々と妃音様は主従関係でした。それでもそう感じない程に楽しかったのは妃音様とチーフと私の3人だったからに他ならないと思います」
空を見上げたまま。
“アタシと神楽と如月だから”
それはアタシもそう思うよ。
黙って聞き続ける。
「今回の解官は何を想ってのコトかは存じませんが、きっと妃音様のコトですから何かしらチーフの為にと思われての苦渋の決断と推測致します」
『神楽の為を思ってなら解官なんかさせないでしょ』
ぶっきらぼうに答えた。
「そうとは限らないのではないですか?」
えっ?
如月?
「確かにチーフは妃音様にお仕えする為だけに今までずっとパーフェクトを取り続けて来ました。何度も幹部への昇官を断ってでも妃音様にお仕えするコトだけを考えてきました」
如月、アンタ、知ってたの??
「でもそれは妃音様の為ではなく、チーフ自身の為ですよね」
そりゃあ・・・、ねぇ。
「人の為って、聞こえはカッコいいですけど裏を返せば半分以上は自分の為なんですよね」
んっっっっっ?????
「一方通行では“人の為”って言わないと思うんです。ホントの“人の為”って、お互いが何らかの犠牲を払ってお互いに想いが通じて初めて成立するモノなんじゃないでしょうか」
絶句だった。
如月がこんなコトを言うなんて。
「だから妃音様がなさった事は十分チーフの為になってますって。ホントに妃音様はチーフのコトがお好きなんですね」
フッと笑ってそう締めくくった。
なっっっっっ!!!!!
顔から火が吹き出そうだったけど、同時にちょっと目頭が熱くなっていた。
ってか、何でこんなにバレてんの!?
そんなに分かり易いの?アタシ。
やっぱり消えたい逃げたい今すぐに。
いろんな意味で。
部屋に戻ってからも如月のコトバがアタマから離れなかった。
“お互いが何らかの犠牲を払ってお互いの気持ちが通じて初めて人の為になる”-
如月があーは言ってくれたけど正直今回のコトが自分ではこのコトバに当てはまるかどうかは分からない。
でもアタシがこんな幼稚な気持ちのままじゃ神楽の為にはならないのは事実だと思う。
自分的にも離れてみないと見えないコトもあるだろうし。
「妃音様、よろしいですか?」
如月だ。
『どうぞ』
ん?
モニターからじゃなく入口から入ってきた。
あ゛っっっ↑
コーヒー。
「チーフからです。自分で行けないからとワタクシに行けと」
神楽・・・・・。
目の前に置かれたカップをただ見つめてしまう。
神楽の顔が浮かぶ。
「ほんっっっとにクソが付く真面目ですよね、チーフって。解官された身で妃音様の御前には行けないってきかなくて」
失笑しながら話してくれた。
「でも、ちゃんと分かってましたよ。妃音様のお気持ちが」
えっ?
全身に衝撃が走った。
「もちろんワタクシは何も申しておりません。“妃音様がむやみやたらに解官などと仰るハズがない”って。“何かしらの熟慮の末に仰ったハズだから自分はそれを受け入れるまでだ”と」
神楽・・・・・。
カップの先にまたしても神楽の顔が浮かぶ。
ちょっとうるっとしてしまった。
思わずカップに手が掛かる。
カップを持ったら更に涙が込み上げてきた。
「チーフってホントに堅物で融通が利かなくて頑固でどうしようもないですけど、」
如月?
ただの悪口になってないか?
メチャクチャ笑顔で言ってるけど。
「妃音様にお仕えしたいって一心でここまでオールパーフェクトを取り続けられるその原動力って、ホントに恩義とチーフのその性格だけだとお思いですか?」
はっ?????
何言ってんの?如月。
呆気に取られ過ぎてポカンとしてしまう。
アタシ、飛びっきりのアホ面になってるよ、きっと。
「ワタクシは妃音様もチーフもホントにホントに大好きです。だからお2人には誰よりも幸せになって欲しいんです」
如月。
『アタシだって神楽も如月もみんな大好きよ!?だから幸せになって欲しいの。だから解官したの。アタシと一緒にいたらエージェントとしてダメになっちゃうから』
あ゛、、、、、言っちゃった・・・・・。
「やっぱりそうでしたか。妃音様はチーフに対してエージェントとしての未来をお望みだったんですね」
はっ???
如月の声が、、、大きくなってない?
「だそうですよ、チーフ!」
え゛っっっっっっっっっ??????????
チ・イ、、、フぅぅぅ???
『神楽!』
入口から神楽が現れた。
如月がいなくなり、アタシと神楽ダケになってしまった。
ちょっと待ってよ。
如月ぃぃぃぃぃ。
室内に沈黙が流れる。
「お誕生日、おめでとうございます」
沈黙を破ったのは神楽だった。
両足を揃え、最敬礼の90度に上体を曲げている。
アタシ、反応出来ない。
「本来なら解官された身で妃音様の御前には」
上体を曲げたまま話してたけど急に何かが込み上げてきて思わず話を遮ってしまった。
『それ、如月に聞いたよ』
ぶっきらぼうに。
また沈黙。
何から言えばイイの?
あっ!
外に出よう。
星空を見ながらなら言える気がするから。
空を見上げて深呼吸して口を開いた。
『だってそうなんでしょ?神楽はアタシに仕える為ダケに頑張って来たんでしょ?』
黙ったままの神楽。
持ってきたコーヒーを一口。
「ワタクシもそう思っておりました」
神楽の声が遠い。
「エージェントとしての誇りと自信は揺るぎないものだと自負しておりました」
“ました”?
過去形???
振り返り、少し離れた神楽の姿を確認した。
こっちをじっと見ていた。
久しぶりに神楽の顔を見たかも。
「一生妃音様にお仕えするのが夢でここまで参りました。妃音様にいつかお相手が現れてもそばでお仕え出来ればソレこそが本望だと思い妃音様付になるコトだけを願って参りました」
神楽がゆっくり歩き出した。
やっぱりそうじゃないのよ。
近付く神楽。
心音が激しくなる。
「ですがいざ地球で妃音様と共に生活させて頂き、色々知っていくウチに次第に何か自分に変化が現れて参りました」
へっ!?!?!?
何て???
顔がだんだん歪んでいく。
と同時に神楽がどんどん近づいてくる。
ちょっっっ!
心拍数がぁぁぁ。
「勘違いだと思い、必死に自分の気持ちを抑えて参りました」
もしかしてちょいちょい見せたためらいはソレだった?
「ですがどう頑張っても妃音様の優しさに触れるたびにどんどん想いが強くなっていきまして、」
マジで!?
ダメだ、まともな表情に戻せない。
たまらずまた神楽に背を向けた。
「そんな中昨日皇王様からあの様なお話をお伺いし、ワタクシのエージェントとしてのプライドは実は想像以上に脆かったのだと思い知らされました」
えっ?????
「あのお話をお伺いして、いつか妃音様の隣に他の誰かがいる姿を想像したらとても冷静にはいられませんでした」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
ウソ・・・・・。
“取り乱して帰ってきた”
ウソじゃなかったんだ。
「その時自分の気持ちに気付いてしまいまして」
アタシの涙のダムが決壊した。
一気に溢れ出てきて声に出して泣いていた。
「なのでいかなるご決断であろうと受け入れようと決めました。が、やっぱりワタクシはそんなに強くありませんでした」
“自分は妃音様のご意思に従うだけと自分の意思は申しませんでした”
“真っ青な顔で立ち尽くしていた”
bossと如月のコトバが涙を助長させる。
「ですが所詮叶わぬ想いのようです」
神楽が立ち止まった。
違うよ!!
うつむいて泣いてるからか、涙がポタポタ下に落ちていく。
『ゴメンナサイ』
泣きじゃくりながらアタシも打ち明けた。
次から次へと涙が落ちていく。
「妃音様?」
聞き返す神楽。
『違うの』
顔を上げられない。
俯いたままでしか話せない。
「えっ?」
神楽の驚きの声が響く。
『アタシも、パパ以外の男の人と今まで一緒に生活するコトが無かったからきっと勘違いなんだって言い聞かせて抑えてたの。初トキメキの相手が自分のエージェントだなんて有り得ないって』
「妃音様」
足音がこっちに向かってきた。
アタシの破裂しそうな心音が聞こえるんじゃないだろうか。
『だからお父様のお話の時、動揺で答えられなかった』
な゛っっっっっっっっっっっっっっっ?????
『神楽???』
アタシの背中に神楽のカラダが触れた。
を゛を゛を゛を゛を゛↑↑↑↑↑↑↑↑↑
神楽の腕が、アタシの前にぃぃぃぃぃ。
後ろからハグはヤメて下さいぃぃぃぃぃ!!!
尋常じゃない破壊力なんだから!!!
ヤバい↑全身のチカラが抜けそう。
!!!!!
神楽が強く抱き締めてくれてる。
密着すぎて心音も震えも伝わってそう。
「妃音様」
ぅ゛わ゛っっっ何この甘い声。
ますますチカラが抜けちゃうよ。
「ワタクシ達、似た者同士なのでしょうか」
ぃやぁぁあ↑↑↑↑↑
お願いだから耳元囁きもヤメて下さいぃぃぃ。
恋愛初心者には刺激が強すぎます↓↓↓
でも気持ちは素直に言える。
『アタシがちゃんと言えなかったばかりに神楽を傷つけちゃってゴメンなさい』
って。
ま゛っ、ま゛ざが???
神楽はアタシの肩に手を掛けて強引にアタシのカラダを回した。
ぴやぃぁあぅおぅいぁぁぁぁぁ。
超至近距離に神楽の顔がぁぁぁぁぁ。
ムリ!!失神する↑↑↑
たまらず目をギュッと力強く瞑っちゃう。
「妃音様」
ぅお→い!
首を激しく左右に振る。
目はギュッと瞑ったままで。
「えっ?」
戸惑う神楽。
しばらく沈黙が流れる。
「妃音?」
プッッッ!!!
やっと言葉にしたのにどんだけ語尾が弱いのよ。
ハテナが強すぎ。
思わず吹き出しちゃった。
そりゃ仕方ないけどこんな時に“妃音様”はないでしょに。
ムードもへったくれもあるかぁい!!!
「妃音!」
ぴぃぃぃ→→→→→
脳の何かが停止した音か?コレは。
“妃音”だってぇ!!!
目をゆっくり開けた。
やっぱり目の前に神楽が!ってか近過ぎ↑↑↑
ぴや→→→→→→→→→→→→→→→
理性崩壊!
確認できないくらいの神楽のドアップと、神楽の全身の体温と、
神楽の唇がアタシの唇にぃぃぃ。
温かくて優しくて。
このまま時が止まればイイのにと想わせる時間。
えっ???
空から星?
キラキラ輝くモノが降ってきた。
2人で空を見上げた。
まさに夜空の満天の星が降り注いでいるかのような現象を。
抱き合ったまま、しばらくそのままでいつまでも。
「おはようございます妃音様」
う゛っっっ!!!
メチャクチャ上機嫌な如月。
『おはよう』
アタシは如月のテンションにドン引き。
『ありがとう』
ぶっきらぼうにただ一言。
「ワタクシは何も致しておりません」
気持ち悪い程に笑顔な如月。
でも、気持ち悪いのは如月ダケじゃなかった。
「おはようございます妃音様」
『おはようございます』
「おはよう妃音」
『おはようございます』
ホールに行くとなぜか全員気持ち悪い程にニヤケていた。
ぁん!?!?!?
思わず如月を睨みつけた。
如月はアタマと手を激しく小さく振り否定。
神楽???
じゃないよねぇ???
この場にいないし。
「そう言えば妃音、昨日の話に実は続きがあるのをすっかり忘れていたよ」
ん?
お父様が突然言い出した。
みんなが一段とニヤケる。
何でしょう。
如月と目を合わせる。
首を傾げる如月。
「運命の相手と結ばれし瞬間にプラチナムマウンテンが祝福してくれて、“神様の宝石”と呼ばれる星が降り注ぐような現象が起きるから覚えておいてくれ」
ぶぅ→→→→→→→→→→!!!!!
“星が降り注ぐ”の辺りでまたしても華麗に吹き出してしまった。
「妃音様!」
慌てて駆け寄る如月。
周りのみんなは拍手やら笑顔やら温かく見守ってくれてるけど、しまいには
「おめでとうございます!」
なんてコトバまで。
もしかしてお父様、ハッパかけた?
眉間にしわを思いっきり寄せてお父様とbossをキツく見据えた。
白々しく笑うお父様に会釈するboss。
ハメられた、、、
無邪気なオトナ達に。
結局昨夜の“神様の宝石”は全国民の知るトコロとなり、アタシの御披露目はアタシのパートナーの御披露目も兼ねて行われるコトになってしまった。
しかしまんまとしてやられたワ、
bossにもお父様にも。
後から聞いたのが、神様の宝石の話は知ってる人は知ってたらしく、当然bossも知っていて、bossの誘導尋問に知らずに見事に引っ掛かったコトでbossがお父様に神楽だってのを報告した上でのお父様のあの話だったらしい。
惨敗だゎ。
やっぱりお父様とbossの作戦に見事に引っ掛かってしまった。
だからbossはアタシが神楽を解官させても冷静でいられたんだな、きっと。
ちくしょーーーーー!!!!!
bossもお父様に言う前に話してくれれば良かったのにイイ大人が寄ってたかって・・・・・。
正式に神楽と2人でお父様・お母様・お祖父様・お兄様に挨拶して御披露目を迎えた。
結局アタシのマネージャーは、神楽とbossと相談して如月にお願いするコトになった。
研修期間中にも関わらず妃皇王のマネージャーに異例の大抜擢って、そりゃもうものすごい注目度だったんだけど。
実質は“サブマネージャー”。
マネージャーやるって言って聞かない“こじらせオトナ”が1人いるもんで。
それが予想できていたのか、皇妃王(女性皇王の場合のパートナーの冠名)に神楽がいるのに好き好んでアタシのマネージャーになりたいと思う奇特なエージェントがいないのではって言うまことしやかなウワサもありつつ。
実際如月の異例の大抜擢のウワサはあっという間に消えちゃって。
そもそも神楽、アタシ付に戻っちゃったし。
如月に同情すら上がってるような状況で。
結局は何も変わってない。
変わったコトと言えば、今や毎朝の恒例行事と化している如月と神楽の痴話喧嘩。
“「神楽様はもう皇妃王様なんですから!マネージャー業務はワタクシがやりますから!!!」”
って言う如月と、
“「皇妃王とマネージャーくらい両立してやる!オールパーフェクトで来たんだ、これくらい何て事ないっっっ!」”
って言って聞かない神楽が。
そもそも神楽は今まで散々パーフェクトでここまで来てるから、いくら皇妃王としての教育って言っても今更ならしく。
“オールパーフェクト”って自分で言っちゃう程だからね。
“妃音様に付きたい一心”はすなわちそう言うことだったのね。
さすが伝説のエージェント。
誰も何も言えず・・・。
何だか見守るしかない状況。
如月も神楽もそうは言っても楽しそうだし。
“妃音様がいてチーフがいてワタクシがいる。こんな最強な組み合わせ、他にないと思います”か・・・・・。
2人の姿を見てると想うに、“最強”なのはきっと、
アタシと神楽と如月の3人なんじゃなくて、
神楽と如月の“絆”の強さなのかもね。
2人だけの空間---
「妃音さ・・・、、、」
白のツナギを着た神楽が言いかけた。
アタシはスルー。
神楽がアタシを呼ぶ時、2人だけの時は名前だけで呼んでもらっている。
様呼ばわりしようもんなら無視するって言う罰付きで。
みんなの前では“妃音様”って呼んでて、2人の時だけ名前だけで呼ぶなんてワケわかんなくなってみんなの前でも名前だけで呼ばれたりしそうなモノだけど、敢えて厳しく。
出逢った時から神楽にとっては既にアタシは“妃音様”だったから直すのは相当大変だろうけどさ。
その分これからはアタシもみんなの前では“神楽様”って呼ぶようになるし。
「申し・・・・・、」
おぃおぃ。
もちろん敬語尊敬語謙譲語も厳禁。
だからまたしても言いかけて止まってる。
「ごめん」
メチャクチャ照れてる神楽。
『だから如月にマネージャーを譲ればイイのに。今日は婚冠式なんだよ?正式に一生のパートナーになる日なんだから』
アタシも苦笑いするしかない。
そう、今日は婚冠式。
要は結婚式。
結婚に伴いパートナーが戴冠するから“婚冠式”。
だから神楽は白のツナギを着ているの。
神楽は音を立てて脚をそろえ直し直立して言った。
「妃音様のマネージャーもパートナーも生涯ワタクシだけです」
なっっっっっ!!!!!
ぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
は・・・
恥ずかしいぃぃぃぃぃ↑
恥ずかしすぎて声にならないよ↑↑↑
神楽のこういう発言は今に始まったコトじゃないけど、何せ免疫がナイもので、パートナーとして今改めて聞いても抵抗感がハンパないわ。
心臓が破裂しそう。
「何やってんですか2人とも!!早くして下さい」
モニターに騒々しく如月が現れた。
「今行く!」
眉間にシワを寄せながらもビシッとキメてる神楽。
瞬間的に“エージェント”に戻れる恐るべき器用さ。
「早くして下さいね!」
声を荒げてモニターから消えた。
再び2人だけの空間。
しばしの沈黙。
『今の、、、』
恥ずかしすぎて続きが言えない。
“プロポーズ?”が。
神楽は見逃しそうな程の小さな頷きと共にそっと優しく抱きついてきた。
それが答えなんだね。
優しく、だけど力強く抱き締めるその腕はとっても安心できてとっても落ち着ける。
何時間でもこうしていたくなる。
破裂しそうだった心臓も、これには落ち着ける。
それもきっと、ストーンが導いてくれたゆえのチカラなのかな、なんて。
「改めて宜しく」
神楽のカラダが離れたかと思ったらすぐさまアタシの手を握り、前を一歩歩き出した。
細いけど広さの感じられるたくましい背中。
『こちらこそ』
背中に向かって返事してアタシも歩き出した。
「まさかこんな日がくるなんてね」
移動途中、半歩前を歩く神楽が切り出した。
アタシも歩きながら地球でのコトを思い出していた。
『そうだね』
思わずほっこり。
「あの時のケガももしかしたらこうなる為のお導きだったのかなって、何となく考える時があるんだ」
えっ???
神楽の表情は穏やかだった。
「アレがエージェントとしての原点だから」
穏やかと言うよりは誇らしげと言った方が正しいかな。
言いながらもアタシの手を握るチカラが何となく強くなっていた。
だとしたらあの時にはすでにもう。
なんてね。
「お待ち致しておりました」
入口に如月が毅然として立っていた。
真新しいマネージャーのつなぎをまとった如月が。
セレモニーホールには大勢の人が集まっていた。
全ての人の笑顔に見守られて神楽は正式にアタシのパートナーとなった。
プラチナムマウンテンに導かれしパートナーの証として、アタシはもちろん、神楽にもプラチナムストーンで出来た指輪を授かって。
こうして神楽が隣にいる今も夢を見てるみたい。
つい何ヶ月か前まではただのエージェントと後継者の関係だったのにね。
いつの間にかこんなにも落ち着ける関係になっちゃって。
まさかプラチナムマウンテンに導かれてたなんて。
式の後のセレモニーの最中、
ずっと隣にいる神楽の横顔を時折見ながらふと考える。
「乃亜様や神崎御夫妻もきっと悦ばれるでしょうね」
ふと如月が言った。
神楽も微笑む。
時空間的にはもう200年以上も過去の話になっちゃうんだけどね。
アタシもパパママからもらった指輪と3人とお揃いのブレスレットに目を向けながら頷いた。
手にはパパママからもらった指輪と、神楽とお揃いのプラチナムストーンの指輪が輝いている。
2つの指輪の輝きとブレスレットのパワーとが1つになって神秘的な輝きを放っているようだ。
まるでパパママや乃亜がホントに祝福してくれているみたいに。
「ずっとずっと、いつまでもパートナーとしてエージェントとしてそばにいさせて下さいね」
みんなの前での告白?に、その場にいた全ての人々から笑顔と祝福と歓声と拍手が沸き起こった。
みんなの前での恥ずかしさはあったものの、さすがに2回目のプロポーズ?は素直に受け入れるコトが出来た。
嬉しさのあまりアタシはみんなの前にも関わらず、あろうことかアタシから神楽に抱きついてしまっていた。
祝福の歓声や拍手が更に大きくなったその瞬間、
今度は室内にも関わらず、セレモニーホールの中にまで“神様の宝石”が降り注ぎ、指輪とブレスレットの光が神様の宝石の輝きを更に強くして、この前よりもキラキラして見えた。
「乃亜様や神崎御夫妻も見守って下さっているんだね」
神楽もまた、如月と同じコトを呟いた。
超至近距離の神楽。
周りの音にも消されることなくお互いの心音が聞こえそう。
『きっとそうだね』
アタシが答えると、今度は神楽がそっと優しくキスしてくれた。
神様の宝石は、2つの指輪とブレスレットの輝きも加えて、いつまでも眩い輝きを放ってウチらを祝福してくれているようだった-------