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power movement

アタシは部屋に移動した。


ベッドの上に横たわって天井をただひたすら見つめていた。


bossは隣の部屋で待機中。


アタマの中、ぐっちゃぐちゃ。


いろんなコトが思い浮かんでいる。


『bossぅ』


溜め息まじりに壁越しにbossを呼んだ。


ベランダ経由で移動出来るにも関わらずかなり面倒くさがって。


bossも瞬間移動並みの速さで現れた。


『行きたいトコロがあるの』


天井を見上げたまま。


「かしこまりました」


すぐに2人とも準備してbossの運転・アタシのナビで神楽カスタム車である場所へ向かった。


移動中は車内にはアタシのナビの声とウインカーの音だけ。


会話はない。


『この先右に曲がってすぐの駐車場に車を停めて』


「かしこまりました」


曲がってる間、大きく深呼吸した。


クルマを降り、アタシは道路を渡った。


「妃音ねぇちゃん!」


遠くからアタシを呼びながら駆け寄ってくる女子中学生。


『アカネ!』


アタシも呼びながら駆け寄る。


後ろから歩いてきたboss。


「こんにちは」


アカネがbossに向かって挨拶した。


「こんにちは」


bossも返す。


boss、姿出してたのね。


「はじめまして、月柴あかねです」


しっかりお辞儀して。


「はじめまして。朱雀って呼んでね」


メチャクチャ爽やかモードなboss。


「カッコいい名前ですね!」


アカネは人懐っこくてとっても明るい性格。


先を歩き出したアカネの背中を見ながらbossに説明した。


『ココはアタシがこの時代に来てから神崎家に養女に行くまで過ごした施設。アカネはココの施設のコ』


アタシが来たかったのはココ。


児童養護施設、ひまわり園。


いろいろ考えてたら地球にやってきた時の頃がヤケに懐かしくなってきちゃって。


無性に来たくなった。


「そうでしたか」


bossも感慨深そうに園の外景をじっくり見ている。


『ちょいちょい余裕がある時は顔を出してたんだけど最近来れてなかったから』


ソレもあったけど、何より急に来たくなったの、無性に。


小学生組がわぁーっと駆け寄って来てくれた。


「あら妃音」


園長先生はじめ職員の先生方も。


気さくに挨拶するboss。


久々にみんなと遊んだり勉強を教えたりしてあっという間に時間が過ぎた。


「バイバーイ!」

「またねぇ!」


いつまでも門の前で見送ってくれていた。


「とても温かい環境ですね」


帰りの車内は自然に会話が弾んだ。


『みんな今でもとっても良くしてくれるし仲良しだし』


ちょっと涙が。


ここにももう来れないんだなって思ったらつい。


『ホントにこの10数年楽しかった』


ちょっとしみじみ。


いろんなコトが蘇ってきた。


「皇王様や皇妃様が安心なさると思います」


!!!!!!!!!!


痛っっっ!!


心臓に衝撃が。


ついその名前に反応してしまって。


お兄様のあの表情を思い出しちゃって。


『帰りたく・・・・・ないよ』


思わず半泣きで呟いてしまっていた。


「妃音様?」


bossが焦る。


恐怖感まで蘇ってきて、またしても寒気がしてきた。


吐き気も。


『帰りたくない』


すぐに収まったと思った恐怖は後からもじわじわやってくる、軽いトラウマと化していた---





家に戻りすぐにベッドに入った。


「夕食の支度は」


bossが家事をいろいろやってくれながら。


『今日はパパもママも泊まりだから大丈夫』


何なんだろホントこの人達。


「妃音様は夕食は?」


ん~~~。


『それよりboss、まだいて大丈夫なの?』


素朴な疑問。


「ご心配恐れ入ります。リアルオンラインでPPを繋いでおりますので大丈夫かと」


やっぱりイリュージョンだな。


何百年も先とオンラインなんて。


しかも宇宙レベルの話だし。


「何かお作りしておきますか?」


!!!!!!!!!!


bossの手料理に預かれるコトなんてそうそうないもんね。


『ありがとう』




気がつけば寝てしまっていた。


全くの無意識。


そりゃいくらSMP飲んだってあんな経験しちゃあ疲れないワケないよね。


「妃音様?」


ドアのノックと共にbossの声がした。


『どうぞ』


起き上がって。


「家事は出来る範囲で済ませておきました」


え゛っっっ!?bossが家事???


『ありがとう。bossに家事なんてさせちゃってごめんなさい』


ちょっとさすがに恐縮。


「滅相もございません。そんなおヤメ下さいませ」


慌てもせず冷静なboss。


とは言えいくらあの2人の代わりとは言え、、、ねぇ・・・。


「コレも立派な大事な任務の1つですから。良かったらハーブティーですがどうぞ」


ぅおぅぅぅ!!!


さすがの圧巻の神対応。


『ありがとう』


ふぅーーー。


かなりホッとする。


思わずボーっ。


『スゴく落ち着く』


ハーブティーなんて何て気の利いたコトしてくれんのよねぇ。


『そんな知識もあるの?エージェントって』


ただただ感心。


「コレは趣味です。いくらメディカルが進歩しSMPなどの医科学系ドリンクが発達しているとは言え、やはり激務の中リラックス効果のあるモノは興味を持ちます」


なるほど。


外はすっかり暗くなっていた。


暗くなって来ただけでまた恐怖が。


「神楽が悩んでおりました」


また神楽?


bossが一生懸命フォローしてくれようとしてるのが辛い。


「妃音様を御護りするのが我々の任務なのですが御護り出来てるとは到底言える状況ではない。と」


やっぱり。


『あんなコト思ってなかったハズなのに何で言っちゃったんだろう。サイテーだね、アタシ』


実はずっと後悔していた。


いくら何でもあの発言はナイでしょって。


「ワタクシ如きが申し上げるには大変おこがましい限りですが、妃音様はものすごく強いお方です」


『強い?アタシが?』


ハナで笑っちゃった。


有り得なさすぎて。


『こんなヘタレのどこが?』


「いつでも常に誰かのコトをお考えです」


はぁ???


さすがにbossの発言とは言え、どう頑張っても否定するポイントしか見つからなかった。


『常に誰か人のコトを考えていれてたら神楽達にあんな発言したりなんかしないよ』


あの発言は、間違いなく自分のコトしかアタマになかった。


「ワタクシはそうは思いません」


bossの表情は穏やかだけどしっかりとした芯のある表情だった。


何も言い返せなかった。


『妃音様がもしあの発言について神楽達に責任を感じておられるとしたらそれは全くの筋違いで御座います』


えっっっ!?


まっすぐにじっとアタシを見据えて。


さっきの穏やかな表情ではなく、真摯な表情で。


「妃音様を御護りするのが我々の厳命であるにも関わらず、肝心な時に限って全く御護り出来ておりません」


・・・・・。


異議が出せない。


「いくら妃音様が普段の日常の任務に関して評価なさっておられたとしても、妃音様の窮地に何も出来ないのでは、エージェントとしての責務は何一つ果たせてないも同然になってしまいます。よって妃音様が仰った以前の問題として、本人達が任務の怠慢として認識すべきコトなのです」


任務の怠慢・・・。


見事に何も反論出来なかった。


“アタシがどう思おうが窮地に何も出来ないのでは何一つ出来ていないのも同然”


そんなコトを言われちゃったら。


「ですから、妃音様があの2人に責任を感じておられるのであればそれはあの2人のコトを思ってのコト」


・・・・・。


反省の気持ちがそんな風に言われたら、何だか泣けてくるね。


ちょっと目からウロコ的な、自分の意見が違う面から見えてきて。


「むしろあの2人は妃音様に言われたと言うコトよりも、妃音様に言わせてしまったと言うコトの方に罪悪感を抱いていると思います」


辛過ぎる。


あの2人のアタシに対しての想いがこんなにも大きすぎて受け入れられてない未熟なアタシ。


「妃音様を御護り出来ていないのは全て最高責任者であるワタクシの未熟さ以外にございません」


えっっっ?????


bossが土下座!?


『止めて!!』


狼狽えながらも慌ててbossの肩に手を掛ける。


アタシはようやく話す気持ちになった。


『お兄様が現れたの』


bossはゆっくりとカラダを起こした。


またしても軽く寒気と吐き気。


「ムリはなさらないで下さい」


bossの声が温かい。


小さく頷き、深呼吸しながらゆっくり続ける。


要所要所、大事なポイントだけを。


お兄様が実体みたいだったコト、お兄様にストーンを掴まれて息が出来なくなってきて立っていられなくなって、


空間的にありえない程のレジスタニアに囲まれて、お兄様の手のひらの光に吹き飛ばされて、


寒気も吐き気も治まらない中、ハーブティーを飲みながら、何度も何度も深呼吸して呼吸を調えながら。


その後の現象を話す頃には情けないかなまた涙がこぼれ落ちていた。


「時間が、無いようですね」


bossも聞くに堪えなかったのかコトバを絞り出すように発した。


しばらく静寂と時間ダケが流れる。


「妃音様の御気持ちを踏みにじるようで大変申し上げ難いのですが」


メチャクチャ低い、かすれた声のboss。


「皇王様とは申しません。皇大王様のお力をお借りしてもよろしいでしょうか」


・・・・・。


bossの無念さは絞り出すかのような声に表れていた。


お祖父様・・・。


確かにお父様に言うよりはまだお祖父様ならイイのかな。


家族の誰かに言わなきゃいけないのなら・・・。


しばらく黙ったままで考える。


ココまで来たら四の五の言っていられないのはわかる。


だけど、、、、、


胸が潰されそう。


「我々で、」


えっっっ!?


この声。


「我々で何とかします」


ドアが開き、姿を現したのは神楽だった。


「神楽」


わずかに驚きを見せるboss。


コトバが出なかった。


「乃亜様と如月はまだカラオケです。ワタクシだけ先に帰って参りました。いつまでもbossにお任せするわけには参りませんので」


涙が止まらなかった。


神楽の表情と、凛々し過ぎる声に。


涙って枯れることってナイのかなぁ。


そんなどうしようもない疑問が浮かんでしまうくらい、最近泣いてばかりいる。


立ち止まり神楽は深々とアタマを下げた。


「我々がどうにも出来ないトコロで妃音様が危険にさらされ始めてから色々手を尽くしてはおりますが、一向に解決策が見つからず、ワタクシも無力さの痛感から皇大王様のお力をと考えてしまいました」


神楽の顔を見られないでいた。


「ですが皇大王様に一蹴されてしまいました」


えっっっ!?


「“詳しくは聞かないが、妃音が望んでいるコトなのであれば喜んで協力する。でなければ協力するコトは出来ない”と」


お祖父様・・・。


「強く何かに貫かれた気持ちでした」


神楽の声が痛々しい。


苦心が伝わる。


「妃音様を御護りしたいハズの想いが、焦りの余り妃音様ご自身のお気持ちを無視してしまうトコロでした」


神楽・・・。


「そこに憔悴しきった妃音様が現れ、妃音様の口からあのような発言をさせてしまい、正直どうして良いかわからなくなってしまいました」


なぜだか神楽の表情を見ずにはいられなかった。


「ですが、ワタクシは何があっても妃音様のエージェントとして妃音様を御護りするのが任務です。妃音様のご意志をサポートするのが我々の責務」


『神楽・・・』


さっきのbossのコトバを思い出し、今の神楽のコトバでしっかり確認した。


bossにしろ神楽にしろ(恐らく)如月にしろ、どんな想いでアタシを護るって言ってくれてるのかが。


胸が熱くなった。


苦しんでいるのはアタシだけじゃない。


みんなも苦しんでくれている。


何だか正直ソレで十分だった。


『bossも神楽も、みんなありがとう』


涙声で、精一杯の笑顔で言った。


  


アタシがbossに話したコトは全てbossから神楽や如月に伝えてくれた上で、帰宅してきた如月を含めて3人で改めて話し合いが行われた。


最大の争点は“dead stone”だ。


「あの例の塊のコトでしょうか」

「そうとしか思えないがまだ残っていると言うコトか?」

「てコトは怨念の怨念?」

「レジスタニアを壊滅しない限りムリなのか?」


3人の会話は段々物々しさを帯びてきて、聞くに堪えなくなってきていた。


アタシはアタシで、1人ベランダに出てアタシなりに分析してみていた。


時折くる乃亜からのメールをやりとりしながら。


とは言え月のパワーが強くなってきているのは事実。


時間がないのも事実。


やっぱりお祖父様に加わってもらった方がイイのかなぁ。


お祖父様のお力を借りるコトが決して悪いコトだとは思わない。


むしろ本来は借りるべきなのかも知れない。


“bossでも神楽でも如月でもムリ”ならば尚更。


ましてやプラチナムマウンテンのそばに埋めたハズのあの塊がdead stoneと関連しているならば。


でも、お兄様がどうやってこの時代に来れたのかを解明しないと話は進められない気もする。


となるとお兄様の周辺調査が必須。


かと言ってお兄様のエージェントさんに聞くワケにもいかず。


ってコトはやっぱりお祖父様か誰かの力が?


アタシはひたすらストーンを見つめながら考えていた。


ストーンに問い掛けるつもりで。


「戻り次第プラチナムマウンテン周辺の警戒は強化する」


3人の真剣な会話が聞こえてくる。


決してお兄様が悪いワケではない。


誰も悪くない。


だからこそ何とかしないと。


どうしたらイイの???


このアタシの掌の光がもう少し自分でコントロール出来れば。


右の掌にストーンを乗せてみる。


えっ???


アタシ、フリーズ。


今まで同じコトをしても何とも反応しなかったのに、


光っている右手のひらにストーンを乗せたらストーンが光の上の方まで浮かんでいった。


声が出ない。


落ち着けアタシ!!


早く3人に。


「妃音様?」


神楽の声がする。


右手はそのままでクビから上だけを動かす。


「いかがなさいましたか?」


スッと神楽の横にbossと如月も現れる。


“いかがなさいましたか”???


ってコトは??


「システムが反応致しました」


!!!!!


精度が上がった?


「マウンテンも反応を示しております」


とboss。


『ストーンが』


右手は上げれなかった。


恐らく緊張で。


ストーンは3人にも浮かんで見えているようだったけど、手のひらの光は依然として3人には見えていないようだった。


しばらくアタシはその手を動かせないでいた。


「神楽!」


bossが声を荒げた。


「はい!!」


もしかしてまた会話成立???


神楽は自分のPPをアタシの手のひらに向けた。


やっぱり今ので会話成立したってコト?


よくわかんないけど唖然。


アタシもお兄様のあの光を冷静に解析出来る余裕があればな。


なんて、多分実際には不可能な仮説。


ソレが出来れば解決に一歩近付ける気がする。


あ゛っっっっっ!!!!!!!!!!


“あの時”に戻れないかなぁ。


アタシが最初に吹き飛ばされた“あの時”-


あの時じゃなくてもイイ気はするけど、あんなカンジの状態なら冷静でいられるかなって。


昼間みたいな、あんな至近距離にお兄様がいたらムリだけど。


浮かぶストーンをただ見つめながら願いを込めるつもりで想像してみた。


可能性と奇跡を信じて-----























































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