super high
『どうし…?』
思わず立ち尽くしてしまった。
「突然神楽が私の前に現れたもので」
リアルbossだ。
アタシ唖然。
初めて見るスーパーリアルbossは、高身長でスタイルも良くて、まるでモデルさんみたいだった。
ぃやっ、そこじゃなくて!!
『神楽は?』
声がうわずる。
「どうしても気になるコトがあり、少し琉按星にいたいと申し出がありまして。その間くらい如月1人で大丈夫と申しておりましたが、ワタクシの独断で神楽の代理として参りました」
ちょうどタイミング良く如月が息を切らして戻ってきた。
「boss??」
如月の目がまんまる。
そりゃそうもなるけどさぁ。
ところで、、、
「ご安心下さいませ、ワタクシの姿は妃音様と如月以外見えておりませんので」
良くおわかりで。
そりゃアタシが周りをキョロキョロしてたら気付くか。
と、そこで昼休み終了のベルが鳴った。
3人で(1人は周りからは見えてないけど)教室へ戻る。
神楽、何やってんのかなぁ。
窓越しに空を見上げながらふと考える。
!!!!!
モーレツな吐き気に襲われた。
とっさに口を押さえる。
少し前屈みになる。
「妃音様?」
冷静だけど声色がコワいboss。
ムリ!!!!!
左手を挙げて先生にアピールして教室を飛び出した。
「妃音?」
如月の鬼気迫る声が響く。
「妃音?」
廊下から如月の声がする。
「大丈夫ですか?妃音様!」
いくらウチらにしか姿が見えないとは言えさすがにトイレにまでは入れないbossの声もする。
ゆっくり深呼吸しながら顔を上げたアタシの目に、鏡越しに有り得ない人の姿が映った。
声にならなかった。
カラダが硬直して動かなかった。
お兄様・・・・・
間違いなくお兄様だ。
今の(と思われる)お兄様がアタシの背後にいた。
!!!!!!!!!!
お兄様の手がアタシの口をふさぐ。
声が出ない。
震えるコトすら出来ない。
「妃音様?」
「妃音???」
2人の声はしっかり聞こえるのにアタシは声が出せないから返事も出来ない。
アタシ的にはさっきから声を出してるのに。
「久しぶりだね妃音。逢いたかったよ」
願っていたお兄様との再会は、信じられないほど凍り付くような雰囲気でのモノとなってしまった。
「bossがいるんだね。まぁbossでもどうにも出来ないよ」
家の洗面台の前で聞いたあの“声”と同じ、自信に満ち溢れた狂気に満ちた声。
「妃音にどうしてもお礼が言いたくて、妃音にしか見えない方法で会いに来たよ」
??????????
表情が引きつる。
アタシにしか見えない方法?
バリアか何か???
実体は実体だよね、確かに感触あるし。
「よくも余計なマネをしてくれたね、妃音」
地下室のコト?
言いながらお兄様のもう片方の手がアタシの胸の上部のストーンに近付いている。
カラダが動けばこんな状況。
もどかしさと苛立ちと切なさと悔しさと悲しさがアタシのアタマの中を駆け巡る。
涙が出て来た。
自分の意思とは無関係にカラダが硬直していても涙が出てはゆっくりと頬を伝う。
「どうして泣くの?うれし泣き?」
アタシの口をふさいでいるお兄様の手にアタシの涙が伝った。
「この前も言っただろ、妃音はココにいてイイんだ。だから邪魔しないでくれるかな」
お兄様の手がストーンを掴んだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アタマが、、、、、
割れそうに痛い。
うずくまりたいのに動けない。
アタマを抱えたいのに動けない。
目を閉じながらも鏡越しにうっすらと見えるお兄様の手は間違いなくストーンを握り締めていた。
それどころか引っ張ってすらいる。
硬直するアタシのカラダまで引っ張られている。
『ヤメて!』
ココロの中では叫んでる。
光は?
手のひらの光は???
光を放てられれば。
せめて光だけでも、、、
お願い!!!!!!!
痛みと闘いながらもココロの中で祈る。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
囲まれてる・・・、アタシ、、、
たくさんのレジスタニアに。
どうなってんの?
背景は確かに学校のトイレなのに空間的にこの人数が収まるのは物理的にも不可能なハズ。
レジスタニアは幻覚?
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
息が苦しくなってきた。
???????????????
周りが暗くなってきた?
どういうコト?
「どうしてわかってくれない?オレは妃音が大事だ。だからこそこのままココにいて欲しいんだ」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
アタシの口から離した手を真上にかざすとお兄様の手にはまた“あの光”がーーー
一気に恐怖が蘇る。
意識が薄れてきた。
『ど、、、』
声が出た!!!!!
次の瞬間、アタシはまたあの光に吹き飛ばされてしまった。
どこ?ココ。
一面真っ暗で何も見えない。
あっ、意識も頭痛も治ってる。
カラダも動く!!
すかさずストーンを確認。
ある。
手のひらの光は?
ない!!!!!
ん???
うっすら何かが見える。
よく見てみる。
アタシの周りを何やら光みたいなモノがくるっと囲っている。
まさかコレが手のひらの光?
この光って、バリアだったの???
にしてもココドコよぉ↑↑↑
真っ暗で何もわからない。
『神楽ぁ!』
声が出たっ!
でも、呼んで自爆。
呼ぶのが辛過ぎた。
誰が悪いワケじゃないけど、さっきのあの場があまりにもセンセーショナルで。
ん?
声が聞こえる。
「…う雅様が」
良く聞き取れない。
「妃音さ…はいっし…」
何なの?電波の悪いケータイみたい。
ようやくハッキリ聞こえたと思ったらお兄様の高笑い。
またしても狂気を感じる。
足音?
こっちに近づいてくる?
「オレの言うことを聞かない妃音が悪いんだよ。聞き分けのない妹にはとっておきのお仕置きをしてあげるよ」
えっ???
!!!!!!!!!!
目の前に閃光が放たれた。
目を開けるとガラスか何かクリアなモノ越しにお兄様やさっきよりはるかに大勢のレジスタニアが立っていた。
「ゴメンね妃音。聞き分けのナイ子にはお仕置きをしなきゃね」
お兄様の手がガラス?に触れている。
気がつくとアタシの辺り一面上も足元も背後もみんなガラス?に囲われていた。
バリアの光じゃなくてガラス?の反射光だった?
お兄様がガラス?に触れた途端、また意識が薄れ始めてきた。
「妃音には永遠にこの中にいてもらうよ。このdead stoneの中にね」
dead stone?????
何ソレ。
薄れゆく意識の中でも考えてしまう。
苦し・・・・・、い。
「ゴメンね妃音。後継者はオレがなるからさ、妃音はもうラクになってよ」
お兄様の声すら遠のいていく。
苦しい・・・・・・。
視界が回っている。
アタシ、、、
「おやすみ。バイバイ妃音」
なぜかソレだけハッキリ聞こえた。
イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
残りの僅かな力を振り絞り、力の限り叫んだ。
「妃音?」
「妃音様大丈夫ですか?」
え?
肩で息をしている。
あれ?アタシ立ってる。
んんん???
アタシが手を突いてもたれ掛かっているのは、
学校のトイレの洗面台、だった。
アタマが痛い。
肩で息をするほどに呼吸が乱れている。
クラクラする。
立っているのがやっと。
かなり洗面台に力を掛けている。
ゆっくり顔を上げる。
さっきの恐怖に耐えながら。
鏡に映っているのはアタシとトイレの壁。
それと、血の気のないアタシの顔。
汗がびっしょり。
でも学校にいる。
鏡越しにストーンを確認。
ストーン、、、
“dead stone”
何だろう、dead stoneって。
片手は洗面台に手をかけたままで何とかカラダを支えながら手を洗い、もう一度鏡で自分の顔を確認する。
ものすごい表情。
生気がないってこういうコト言うのかな。
アタマ痛い。
吐き気も。
さっきの恐怖が離れない。
『boss』
精一杯呼んだつもりがメチャクチャ蚊の泣くような声。
「ハイ妃音様。妃音様???」
すかさず現れたbossにアタシはゆっくりと告げた。
驚愕のbossに。
『帰る』
一言。
ハァハァしながら。
「いかがなさいましたか?」
駆け寄るboss。
bossに身をゆっくりと傾ける。
『部屋で寝たい』
1人になりたかった。
お兄様に襲われる恐怖には耐えられないけど、
1人になりたかった。
「かしこまりました」
ゆっくりと歩き出した。
全体重をbossに預けて。
「カバンは如月に持って帰らせます」
トイレを出ると如月がいた。
今にも泣き出しそうな顔で。
「このまま帰る。先生に伝えておいてくれ。荷物も頼む」
「は、、、い」
声が弱々しい。
弱り果ててる如月をよそに、ゆっくりと階段に向かった。
階段に行くとbossはアタシを上の階段に座らせそのままおんぶしてくれた。
「揺れは平気ですか?」
さすがな気遣いのboss。
『ありがとう』
多少の揺れはどうしても発生しちゃうのに、bossはきっとかなり気遣って歩いてくれている。
玄関に着いた頃、如月が追いついた。
「妃音様」
いつもの如月らしくない弱りっぷり。
『1人にして』
如月に背を向けたまま。
「えっ?」
声がかすれてる。
『神楽も』
駆けてくる神楽にも向かって。
『1人になりたい』
思いっきりドスの利いた声で。
bossは黙ったまま。
そもそもbossにおんぶされといて、“1人になりたい”なんてわがままな話、ナイのだけれど。
「妃音様?」
声になってない如月。
神楽は黙ったまま。
『もうウンザリ』
限界だった。
とっくに越えていたんだろうけど、
抑えられていたモノが崩壊したんだと思う。
bossの背中からゆっくりと降りた。
さすがにいくらbossとは言え居づらくて。
bossは何も言わず、アタシの気持ちを察しているかのごとく如月からアタシのカバンを受け取ってくれた。
『何が妃音様よ、何が護るよ』
ダメだ、泣けてきた。
肩を震わせて、痛みをこらえて。
あちこち痛くてブチ切れてる場合じゃないんだろうけど、
キレるとかそう言うんじゃなかった。
アタシの中のリミッターが完全に崩壊していた。
『もうウンザリ。1人にして』
ふらつきながら歩き出した。
すかさずbossが手をかけてくれる。
如月の姿は見えないけど立ち尽くしてるっぽい。
神楽も立ち尽くしてる。
その前を泣きじゃくりながら通過。
どうやって用意したのかはこの際どうでもイイとしてbossの運転する車で帰宅した。
校門をでる寸前、乃亜達のバスとすれ違った。
すれ違いざまに窓越しに乃亜に手を振った。
ん?
コレって乃亜達にどう見えるんだ?
bossの姿が見えないってコトはまさかアタシが運転してるようには見えないだろうからタクシーってコトになってる?
乃亜の顔が驚いている。
あっ!メール。
痛みをこらえて乃亜にメール。
メール来てたんだ。
乃亜から結果報告のメール。
“個人も団体もインターハイ!!”
乃亜のレベルでは当然の結果だったけど嬉しかった。
でもこんな状態じゃお祝いするのも辛い。
“ちょっと今日は帰る。大したことないから気にしないで。お祝いは今度改めて!今日はとりあえず神楽と如月がお祝いしてあげるよ”
勝手なコトを平気でメール。
無機質に2人にメール。
“乃亜のインターハイ出場祝いよろしく”
って。
なんて自己中なアタシ。
無神経にも程があるだろ。
でも1人になるにはちょうどイイかなと思って。
完全なまでのフリ逃げ。
家につくなりアタシはシャワーに直行した。
泣き顔も洗い流して。
その間bossがキッチンでコーヒーを入れてくれていた。
イイ匂い。
でもコーヒーの匂いに、無条件にも否応無しに神楽の顔が浮かぶ。
じわっと涙がにじむ。
「具合は良くなられましたか?」
移動中bossがSMPを出してくれたお陰で少し良くなった。
ウワサの?RMSもとうとう登場して。
アタシがbossに頼んだの。
一番軽いモノでイイからって。
本当はちゃんと脳波とか調べた上で出さなきゃいけないものらしいんだけど。
『お陰様でだいぶラク。ありがとう』
ちょっと涙声。
「神楽のモノには到底及びませんが」
ソファーに座るなりbossが差し出してくれた。
“神楽”・・・、か。
bossのコトバに手を出すのをためらってしまう。
あんなセリフを吐いといて聞ける名前じゃない。
「神楽はあいにくRCSでも有名な堅物でして」
優しい口調で話し始めた。
だから今はその名前はぁぁぁ。
いたたまれなくなりコーヒーを口にした。
どっちにしても今のアタシには劇薬並の刺激。
なんだけど。
『おいしい!』
コレはコレで美味しい!!
素直にコトバにしていた。
「神楽に教わりました」
bossはずっと笑顔。
「我々エージェントは養成機関から今現在も毎月試験が御座います」
何でそんなコトを言い出してるんだろう。
「神楽はあの通りコトバが少なく感情も表に出さず自分から話す方でない為、同僚からも大変誤解を受けやすいのが難点でして」
だから何でこんな時に神楽の話を?
しかもいきなり。
「誰よりもマジメで誰よりも芯が強いのが何よりの長所ではあるのですが」
さっきからずっと黙って聞いてるけど何なんだ?
何の嫌がらせだ?
「神楽は養成機関の頃から大変なエリートでして、未だかつて神楽以外誰1人成し得ていない伝説を持っております」
bossの笑顔が神懸かり的に優しい。
“伝説のエージェント”
如月が言ってたヤツね。
それにしてもboss、アタシに何があったのか気になってるだろうに聞いてこない。
アタシが落ち着くまで何も言わずに待ってくれてるんだね。
さすがboss。
気遣いが神的。
こんな時に神楽の話をしてるのは理解し難いけど。
「アカデミアと申します我々が一番最初に入る養成機関からエージェントとして任務している現在まで、神楽は全て満点を取り続けております」
何度聞いても恐ろしい。
「そんな逸材ゆえ、ワタクシを含め幹部は神楽に何度か幹部入りを打診しておりました」
コレも如月が言ってたね。
「ですが神楽は頑として“現場にいたい”と言ってききません」
まぁ神楽らしいか。
「我々エージェントは誰しもアカデミアの入関試験の際、どこでもそうですがやはり面接試験で志望動機を答えます」
今度は面接試験のハナシ?
「普通は琉按星の為にですとか皇王様の為にと言った視点から答えるのですが、神楽は違いました」
ん???
「ちなみに如月は“自分がこの星を護ります”でした」
ハナで笑い飛ばすboss。
アタシも苦笑い。
何とも如月らしい。
「神楽は、“妃音様をワタクシが必ず見つけ出します”でした」
えっっっ!?
顔が引きつる。
「ワタクシも驚きました。その場におられました皇大王様以下、数人の幹部エージェント達も驚きのあまりコトバがありませんでした」
アタシ?????
「妃音様の存在はもちろん行方が分かっていないコトも国民的に知られ渡っている事実ではありましたが、暗黙のタブー視の中誰も妃音様の名前を出す者は過去にもおりませんでした」
違う意味でコワいよ?
何でまたアタシ?
「ですが何せ満点を取った候補生ですから入関させないワケにもいかず、メンタルヘルスチェックにも何も問題無く、合格させない理由はどこにもありませんでした」
ふむふむ。
「アカデミアの卒業試験もソツなく満点で首席で退関しまして、いざRCSの入官試験の面接でまた神楽は何くわぬ顔で“妃音様の救出と妃音様の為”と答えました」
何なんだよ。
ストーカー???
「そこでも満点合格でしたので、また特に深く問い詰めるコトなくそのまま入官させました」
いい加減聞こうよ。
ココロの中で突っ込む。
「入官後も妃音様にお仕えしたいと妃音様の捜索を中心に任務に就いておりました」
boss、ずーっと嬉しそうに話してる。
アタシはただただぽかんとしたまま聞き続けて。
「その間も幾度となく幹部にと打診して参りましたが一貫して断られ続けまして」
頑固ってか偏屈??
らしいっちゃーらしいな。
「今回妃音様がこちらで生活なされておられると言うコトを突き詰めたのは神楽と如月の力でした」
如月、言ってたね。
小さく頷いてみる。
「その研究を認める際、さすがにいよいよ黙って許可し続けるには危険性を感じ始めて参りまして、とうとう問い詰めました」
遅すぎだろ、むしろ。
「しばらく黙っておりましたので、“ここまでの信念、何らかの理由があってのコトとしか思えんがさすがに聞かずに認めるわけにはいかない”とそれとなくけしかけました」
だからコワいってばよ。
「すると神楽は観念し、胸ポケットから1枚のこの時代で言うミニタオルを取り出して見せました」
ミニタオル?
「神楽はうっすら笑顔を見せて言いました。“コレがワタクシの原点です。コレがワタクシが妃音様にお仕えしたい何よりの理由です”と」
何で???
全くわからない。
ノドが乾いてきた。
立ち上がり冷蔵庫に向かう。
冷蔵庫の中から冷茶を取り出してソファーに戻る。
bossにも入れてあげて。
「恐れ入ります」
軽くアタマを下げて返事。
「そのタオルはこの時代のミニタオルよりは小さく薄手で、神楽は常に持ち歩いており、この10数年御護りのように肌身離さず身に付けていたそうです」
恐ろしさ・脅えすら感じてきたぞ?
「見るとソレは一般に出回っているタイプのモノではなく、皇家の皆様のみが所有なさっているデザインのモノでした」
・・・ミニタオル、、、ぅ???
「我々も何かの折りに賜物として戴くコトはあるのですが、神楽が持っていたモノは妃音様の御名前が記されているモノでした」
えっ???
ストーカー疑惑再浮上。
「驚きました。よりによって妃音様の御名前入りですから」
コワコワコワコワ。
うっすら寒気。
思わず肩をすくめる。
bossはフッと小さく失笑しながら話を続けた。
「神楽が幼い頃、神楽の両親と共に皇家主催のパーティーに招かれたコトがあったそうです」
ぱーてぃー???
全く記憶が出てこない。
アタシの必死に思い出す苦悶の表情に苦笑いのboss。
「子どもの出席者は彼の他にも数名いたようでしたがなにぶん大人主体のパーティー。妃音様の御希望でパーティーの中盤あたりで子ども達は皇邸の庭園に移動なさったそうです」
、、、、、、
まっっっっったく景色すら出て来ない。
「そこで神楽の不注意で、無理な体勢を取ってしまっていた神楽がそのまま階段から激しく転倒して壁に衝突しまったらしく、運悪く後頭部と背中を激しく切ってしまったそうです」
・・・・・・・・・・、、、
『あ゛ぁぁぁ!!』
思わず声を張り上げてしまった。
「思い出されましたか?」
激しく細かく頷く。
「未来の琉按星の建築物は事故防止策も万全な状態でそのようなケガは滅多に発生しないハズでしたので運悪くとしか言いようがなく、ましてや周りはほぼ子ども。オトナは妃音様付のエージェント数名のみ。周囲は騒然となったそうです」
そうだった。。。
「突然のコトに泣き出す子どもや慌てるエージェント達に対してはもちろん、琉雅様や神楽の対応までをも妃音様お一人で迅速かつ冷静・丁寧・的確に対応なされて、パーティーにも支障なく、見事に妃音様お一人でその場をとりなされたそうです」
恐ろしすぎだろ我ながら。
「その時妃音様が神楽の出血の処置にご自身のタオルを使って下さったらしく、その後返せないまま今まで持っていたそうです」
ぅわぅわぅわ…。
さっきと全く違った意味でコワコワコワぁぁぁ。
「その後改めてクリニカルチェックを受けた際、キズの処理をされかけたトコロでわずか7歳にも関わらず神楽はドクターにキズはこのままにして欲しいと願い出たそうです」
キズ?
「我々の住む時代ではどんなにハデなキズも跡形もなく消せる技術が御座いまして。普通はキズを残さないモノなのでドクターはもちろん、神楽のご両親は反対なさったそうですが、“妃音様に受けた恩義を忘れたくないから”と願い出たそうです」
恩義・・・。
まさかソレだけでずっと?
「聞けば神楽が満点を一度も外さず取り続けて来たのは妃音様にお仕えしたい一心に他ならないそうです」
はぁ???
まさに“開いた口が塞がらな”かった。
ただただボー然とするしかなくて。
バカ???
マジメにも堅物にも頑固にも程がある。
呆気に取られすぎてアタマがグチャグチャしてコトバが出ない。
「そんなコトとお笑いでしょうが、神楽はそんなヤツなんです」
アタシは何も言い返せなかった。