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endless night

「妃音様!?」


目の前には神楽がいた。


見たコトがない程の驚いた表情で。


アタマが割れそうに痛む。


ちょっと動かすのもハンパなく痛い。


つい表情が歪む。


それでも自然と涙は出てくる。


それすらカラダが痛む。


「痛みますか?」


神楽が慌てている。


表情を動かすコトすらちとキツいケド、頷くコトすら痛いから一言だけ返事する。


『うん』


自分ですら聞き取りにくいくらいのか細い声で。


自分では精一杯の音量。


あの衝撃波。


尋常じゃナイ程の衝撃波だった。


全身がモーレツに痛い程に。


思い出すだけで余りの辛さに涙が込み上げてきてしまう。


カラダもココロも尋常じゃナイ程に痛すぎる。


涙が止まらない。


だけど、そんな状態でもアタシはあるコトを思っていた。


泣きながら天井を見つめていると視界の端から神楽がスッとタオルを差し出してくれた。


『ありがとう』


コトバになってないと思うけどアタシ的には口に出して伝えた。


アタシのお気に入りのタオル。


きっと神楽は聴きたいに違いない。


“「いかがなさいましたか?」”


って。


だけど聴いてこない。


それが神楽。


その気遣いにも泣けてくる。


「失礼致します」


アタシの右手首にそっと優しい温かな神楽の手が触れた。


!!!


一瞬にしてカラダ中にフッと温かな衝撃波みたいなのが駆け巡る。


何コレ・・・。


すんごく温かい。


安心の涙も出てくる。


『神楽・・・』


「ハイ!」


PPでアタシの状態をチェックしている神楽がアタシを見る。


『手、、、』


言いながら左手も頑張って動かす。


気づいた神楽がすぐさまアタシの左手も握ってくれた。


何て安堵感なんだろう。


泣き顔すら穏やかになっていく。


神楽は両手でアタシの手を包み込むように優しく握ってくれた。


アタシの表情に安心したのか、神楽が話し始めた。


「妃音様がお目覚めになる寸前のほんの一瞬ダケ、解析システムと、マウンテンが反応を示したようです」


マウンテンも???


驚きだ。


でも、、、


『アタシ、お兄様の波動に跳ね飛ばされた』


コトバにしたらまた涙がうっすら滲む。


「琉雅様が?」


さっきまでの優しかった神楽の表情が一変した。







だけどアタシはモーレツな疲労と絶大な安心感のあまり、話の途中で眠ってしまっていたみたいだった。






「おはようございます」


さっきと同じ、優しい表情の神楽がいた。


さっきよりも外が明るい。


神楽はアタシの手を握っていてくれた自分の手を慌てて離した。


『もしかして、ずっと手握っててくれてた?』


あっ!声がさっきより出てる。


カラダも全然痛くない。


更に笑顔になる神楽。


「申し訳ありません!つい」


とか言いながらも笑顔。


照れてんの???


・・・んなワケないか。


『話の途中で寝ちゃってゴメンね』


言いながらゆっくり起き上がった。


すかさず神楽がアタシの肩に手を掛けてくれる。


『ありがとう』


ホントにソツがないなぁ。


四六時中こんなペースで接されてたらそりゃアタシみたいな男性恐怖症疑惑が掛けられるタイプの人間ですら勘違いしちゃうわな。


任務だって分かってたって。


乃亜みたいな恋愛体質ならキュンキュンし過ぎて倒れちゃうんじゃないだろうか。


なんて余裕は無いハズなのだけれど、それでもそんなコト思っちゃうのも神楽のお陰だったりしちゃう現実もまた、あったりしちゃうんだろうな。


『神楽のお陰でだいぶ楽になったよ。ありがとう』


大きく息をつく。


「そんな御言葉勿体無さすぎにございます。ワタクシは妃音様の状態をチェック致しまして、それに応じたOPLと申します点滴効果のあるパッドを貼らせていただいたダケです。妃音様にお断りもせずに無断で貼ってしまいましたコトをお許し下さいませ」


え゛っっっ?


アタマを下げてる神楽。


『謝るなんてヤメてよ!!神楽はアタシの為に任務としてやってくれてんだから!』


「えっ?」


ん?


一瞬神楽に戸惑いの色が見えた気が。


「あっ!!ハイ!左様ですよね。恐れ入ります」


ん?何だろう、今の。


アタシらしからない発言だったかしら?


『でも、さっき神楽がアタシの状態をチェックするのに触れてくれた時、一瞬にしてカラダを温かい衝撃波みたいなのが走ったの。両手を握ってもらったら更に安心しちゃって。だから寝ちゃって…。』


勘違いしてたらとても恥ずかしくて言えないケド、


素直に言えた。


「それこそ恐れ多い御言葉にございます。コーヒー、お飲みになりますか?」


照れてる?


ワケないか。


至ってクールな神楽。


『下、降りる』


お腹空いちゃった。


そう言えば昨夜も何も食べてなかったっけ。


さり気なく神楽が寄り添ってくれる。


『シャワーも』


「かしこまりました。その間に準備致しますね」


今は一段とこの笑顔に癒される。


シャワーとは言え本音は今は1人は怖いけど汗かいちゃったしな。


何だかんだ言って結構1人だったりするしね。


サッとシャワーだけにして、キッチンに向かった。


コーヒーの匂いと、美味しそうな匂い。


「おはようございます妃音様」


すっかり見慣れた如月のエプロン姿。


『おはよう如月』


って言ってももうお昼をだいぶ過ぎていた。


『家事、全部やってもらっちゃってゴメンね』


コーヒーに手を掛けて。


「とんでもないです。恐れ多い御言葉にございます」


苦笑いの如月。


コーヒーを飲んで、3人でちょっと遅い昼食。


アタシはふととんでも無いコトが浮かんでしまった。


『まさか2人とも“食事も睡眠も摂ってません”なんて言わない・・・、よね??』


この2人のコト、普通にやりかねないダケにアタシはかなり本気だったんだけど、


心配ご無用だったみたいで、


「ご心配頂きまして恐縮にございます。しっかり交代で摂らせて頂きました」


フッと笑って神楽が言った。


『良かった』


一安心。


「お父様とお母様にはご心配を掛けませんようにそれなりに対応致しました」


と如月。


『ありがとう』


ホントにこの2人、何なんだよ一体。


かゆいトコロに手が届きすぎ!


『美味しかった♪ごちそうさま!』


とひと息ついたトコロで、片付けを3人でやったあと部屋に戻り3人でコーヒーを片手にアタシが話し始めた。


話し始める前に小さく深呼吸して。


『あのさぁ、地下室にあった塊って、あの後どうしたの?』


「は?」


驚く如月。


「ハイ、bossと皇王様とで秘密裏に丁重にプラチナムマウンテンのすぐ近くに埋葬致しました」


神楽が淡々と話してくれた。


『そう』


吹き飛ばされて目覚めた時に気になってたコト。


あの塊の行方。


マウンテンのすぐ近くに埋葬。


マウンテンの力でちゃんと弔われるならイイな。


じゃ、次の話に。


また小さく深呼吸。


『良く分かんないけど、』


当然モニター越しにbossもいる。


『多分お兄様がレジスタニアに加わるトコロと思われる場面に行っちゃったみたいで、』


みんな黙ったままアタシの一言一句に耳を傾けて聞いている。


『きっとコレを阻止しろって、何か意味があってココにいるんだって察して、必死にこの光で何とかならないかって祈り続けて、』


3人には見えてなくても掌の光に目を向けて。


『そしたら、、、』


やっぱり思い出すとツラい。


『お兄様に気付かれちゃって、、、』


鼓動が早くなってる。


しばしの沈黙。


『ものすごい衝撃波に吹き飛ばされて』


涙声に変わってる。


室内にはアタシのすすり泣く声だけが響く。


「失礼致します」


しばらくの沈黙の後、突然神楽がそう告げて立ち上がり部屋を出て行った。


「神楽?」

「チーフ?」


bossも如月も動揺している様子。


『そしたら目が覚めて。だけどカラダ中尋常じゃナイ程に痛くて』


またしても長い沈黙が続いた。


神楽は帰ってこないまま。


「ワタクシは琉雅様の周辺と例の塊のリサーチを続けます」


bossが消えていった。


部屋にはアタシと如月ダケ。


「我々、妃音様を御護り出来てませんね」


驚く程に如月の声が沈んでいた。


聴くに耐えない程。


『ヤメてよ如月!!』


慌てすぎて声が裏返る。


『2人がいなかったらアタシきっととっくに壊れてただろうしきっととっくにレジスタニアに消されてたよ!!アタシどれだけ2人に助けられてるか』


またしても半泣き。


『神楽も聞いて!』


隣の部屋にいるだろうなって感じたから、ベランダ伝いに神楽にも呼び掛ける。


『2人と出逢ってから毎日がハチャメチャだったけど、2人がいたから何とかやって来れてるんだよ。本音だよ』


声がかすれてきてる。


涙が止まらなくなってきて。


「妃音様」


心なしか如月の声もかすれているように聞こえる。


『どんなにツラい夢を見たって目が覚めたら2人がいてくれて、何かあるとすぐ駆けつけてくれて』


神楽がベランダに出て来た。


続けて如月も。


3人でベランダのベンチに腰掛ける。


2人とも無言のまま。


『だからそんなコト思わないで』


2人それぞれに向かって。


2人は黙ったまま深くアタマを下げた。




PPを操作する2人を時折見ながらアタシは依然ベランダにいた。


ずーーーっとストーンを見つめたままで。


ふと空を見上げると夜空には三日月。


上弦の月が近付いている。


どうなっちゃうんだろう、アタシ。


どうしたらイイんだろう、アタシ。


全く予想も見当もつかないよ。


ただ1つ言えるのは、


“きっと何とかなる!”


神楽と如月とbossがいれば。


ただそれだけ。




お兄様に吹き飛ばされてから一段と、アタシはお兄様のコトでアタマがいっぱいだった。


お兄様を助けて!!!


ずっとストーンに祈ってる。


その為にアタシが出来ることは???


ずっとストーンに問いかけてる。


授業中もあまり先生の講義に集中出来なくて。


聞いてるようで聞いてない状態。


斜め後ろの如月に目を向けると、如月は気付かれないように器用に居眠り中。


神楽も如月もほぼ徹夜に近い状態で色々やってくれてるからな。


あの塊の解析とかパワーについてとか。


神楽も如月も、


アタシがどう言ってもどうしてもアタシを護れてないって自責の念を拭えないらしく、余計に必死になっちゃって。


見てるアタシが辛くなる程に。


だからアレから夜部屋に居るときはさり気なく2人に距離を置いてしまう。


3人とも限界ギリギリなのかも知れない。


そんな中、今夜はいよいよ上弦の月。


今日は朝から3人ともピリピリしている。


休んだ方がイイのではって議論まで出て。


だけど、休みたくなくて。


来月から夏休み。


今月末にはもしかしたらこの時代にいれないかも知れない。


だから1日でもいれる限り学校にいたいから。


乃亜やみんなの前で何かが起きるかも知れない。


そんな恐怖はあるにせよ、それでもいたい。


アタシのワガママに如月と神楽はただ黙って頷いてくれた。


“妃音様がお望みのままにそれをサポートするのが我々の務め”


後から如月がふとそう言ってくれていた。


こんなにも心強い味方が2人もいる。


だから言えるんだと思う。


「何か些細なコトでもすぐに報告して下さいね」


いつものように校門を抜けた直後の別れ際、いつも以上に真剣そのもので神楽が囁いた。


『ありがとう』


本音はずっとそばにいたいんだと思う。


だけど言わない。


それもまた神楽。


たまんないわ、こりゃ。


痛いほど伝わる。


神楽の気持ちが。


如月がアレじゃあねぇ。


いつも通り少し先を乃亜と歩いている如月を見ながら軽くため息。


まぁあくまでも乃亜に配慮してのコトだって割り切るようにしてはいるけどさ。


乃亜が嬉しそうならイイや。


そう言い聞かせて。


歩きながら空を見上げた。


大きな空。


夏の空は雲がスゴく高くに見える。


息をたくさん吸って大きく深呼吸。


ん???


掌が熱い?


・・・気がした。


何となく。


今までとは違ってぼんやりと。


気にしすぎて、神経張り過ぎて錯覚しちゃったかなぁ。


気のせいかな。


「じゃね、妃音」


昇降口前で乃亜が立ち止まった。


『頑張ってね!』


今日、乃亜は部活の県大会。


普通の学校はもう夏休みだったりするけどウチの学校(特に特進科)は今月末まで授業。


学校集合で大会会場に向かう。


応援に行きたいけど哀しいかな授業。


しかも世間は夏休みだってのにキッチリ7限目まで・・・。


教室に入ってからも時間の許す限りベランダから如月と2人で乃亜に手を振り続けた。


「始めるぞぉ!」


おっ!先生が来ちゃった。


慌てて席に戻り、ホームルーム開始。


今日1日が無事に終わりますように!!


そうココロの中で強く祈った。




何もないまま昼休みがきた。


乃亜がいないけどいつものようにセンターホールへ。


3人なダケに、遠慮なくお兄様関連の話で盛り上がる。


「bossからも特に何も報告はありません」


神楽も、


「静か、ですよね。不気味なくらいに」


如月も、


不安を隠せない様子。


『いい加減ウチらが警戒してんの気付いたのかなぁ』


それはアタシも同じで。


言いながらも視線はちょいちょい手のひらへ。


「勢力が弱まったんでしょうか」


如月のコトバでアタシも神楽も、言い出した如月も、しばらく無言になってしまった。


多分神楽も如月も、そしてアタシも頭の中をものすごい速度で色んなコトが駆け巡っているんだと思う。


“そんなコトがあるんだろうか”

“お兄様に何かあったのかしら”


アタシはお兄様が心配でたまらなかった。


「まさか最大になる満月を狙って、、、」


如月のコトバにアタシだけじゃなくて神楽も反応出来なかった。


だとしたら、、、


『でも、、、』


ぼんやりとした仮説。


『お兄様達にとってはその方が都合良くない?』


自分の身の危険の話のハズなのに、アタシあっけらかん。


如月と神楽、またしても無言。


根拠も何もないけど。


カンペキ仮説。


ストーンもマウンテンも反応してないけど。


「コーヒー、、、」


別人かのようなバックテンションで呟きながら立ち上がり、どこかへ行ってしまったのは神楽。


「チーフ?」

『神楽?』


さすがにアタシも如月と動揺。


動揺しすぎてアタシも如月もついつい3人でいるときのままの呼び方に。


「チーフ、最近おかしいですよね」


場を取り繕ってくれてるのが明らかだったけど如月の言う通り。


この前も話の途中で突然立ち上がって退室しちゃったし。


「コーヒーって、ココ神崎邸じゃないんですけどね」


場を和まそうとしてくれてるけど、表情は明らかに動揺。


2人で神楽を視線で追いながら。


神楽はホールを出て行った。


「えっ?」


慌てるアタシと如月。


慌てて神楽のお弁当を片付ける。


『如月、追って!すぐ行くから』


慌ててるからか如月はただ手を挙げて合図し、神楽を追いかけていった。


何なんだ?一体・・・。


とりあえず急いで3人分のお弁当を片付け、テーブルを拭いてアタシも後を追って・・・・・、





えっ?????






『boss???』






駆け出そうとしたアタシの目の前にいたのは、





なぜかboss、、、






だった。























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