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素敵な夜空

“あの日”から数日。


“あの日”がまるで無かったかのようにこの数日間、まるっきり何もない。


逆に恐ろしさすら感じる。


あの日以来神楽と如月、そしてbossの3人はストーンのパワーとお兄様がアタシに話し掛けられたトリックの解析に没頭。


解析が完了するまで如月の補習は一旦停止にしちゃう程の気迫で。


アタシはただ見守るしかなく。


『何もナイのも何だか不気味だね』


いつものご飯準備も3人でじゃなく、アタシと如月とで。


「あくまでも仮説ですが、新月に向けて月のパワーが弱まっていて琉雅様側も手を出せないのではないでしょうか」


なるほど・・・。


十分考えられるな、ソレ。


ホントはご飯準備、しばらくアタシで1人やるよってったんだけどさすがに認めてもらえず、


しかも幸いにもここ数日静かだからって、せめて神楽か如月かどっちかだけでもってコトで、進捗具合によってどっちか1人はアタシとご飯準備ってコトに。


何もナイならナイでアタシ1人にしてよってついつい思ってしまっちゃうのだけれど、


かと言って1人になったところでまたおかしくなるのが怖かったりもして。


多分1人でいる時に思い出したら間違い無く壊れちゃいそうな気がする。


耳を突き刺すあの高笑い。


正気の沙汰じゃなかった。


1人でいなくても、そばに神楽や如月がいても、思い出すダケで泣きそうになる。


お兄様との記憶はほとんどない。


何せこの十数年遠く離れてたから。


ついこの前想い出すまですっかり記憶から消えてたし。


それでいてのあの恐怖。


そりゃ耐えられるハズもなく。


ほんっと、神楽と如月、そしてbossのお陰だワ。


1人でいたいけどいられない。


こんな矛盾は拭えないけど、


入浴中すら怯えなきゃいけない現実もあり。


最近、夜のベランダでの時間が今までとは違った感覚でいる。


何だか、ただただぼんやりってカンジで。


でも手にはしっかりストーンを握り締めて。


何となく落ち着く気がして。


月は日に日に細くなっていくから月明かりにストーンを照らしてないし。


ぼんやりしながらいつも考えちゃうコト、


それが、


“お兄様が皇王になれる方法”ー


プラチナムマウンテンの導きは琉按星にとって絶対。


反すればマウンテンの怒りに触れて宇宙の彼方に塵となって飛ばされ、、、、、???


塵?????


その塵は?


導きに反した皇家の皇王になれなかった人が塵になったってコト???


またしても鳥肌。


お兄様もそうなってしまうかも知れないの???


でもまさかお兄様がその過去を知らないってワケがないよね。


アカデミアで学ぶだろうし。






えっっっ?????






アタシの脳裏にまたしてもとんでもなさすぎな仮説が浮かんだ。


しかもその瞬間、ストーンが一瞬眩く光った。


今まで見たコト無い程に強く。


このヒラメキはストーンの力ってコト???


『かっ!かっ!!』


動揺しすぎてコトバに詰まってしまった。


落ち着いて深呼吸。


「いかがなさいましたか?妃音様!!」


神楽が発してくれた。


如月も手を止めてアタシの方を見てる。


『今、ストーンが一瞬光ってその瞬間にとんでもなさすぎなコトが脳裏に浮かんじゃったんだけど』


神楽と如月の顔が強張る。


「ストーンが光った?」


ボソッと如月が。


『皇王になりたくてマウンテンの導きに反した皇家の方って塵になったって言ったよね?』


アタシ、興奮してる。


「はい」

「はい」


2人同時に。


『その塵って?』


「は?」


解ってない如月。


対して神楽は


「まさか妃音様!!」


さすがに察した模様。


「考えもしませんでした!いまだかつて誰もその後を追察した者も居ないハズです」


アタシがストーンの光と共に浮かんだ仮説は、


“塵”が皇王になりたかった皇家の方々のエネルギーの塊になったと仮定して、何らかの形でお兄様が入手してしまい、そのコトによってその“塵”が益々のエネルギーを吸収してしまったとしたら・・・。


ってモノ。


神楽はすぐさまbossにその旨を伝えた。


神楽とbossのやりとりを聞いていてやっと把握した如月。


「まさか!」


驚愕の様子で。


「ただでさえ宇宙には無数の塵が存在します。塵となって飛ばされてしまった際にどんな状態で飛ばされたかなど詳細は解っておりませんのでどれがどうか容易に判別するのはちょっと・・・」


当然の如く渋る神楽。


ずっと黙っていたbossが沈黙を破った。


「皇王様や皇大王様のストーンのパワーで、」


アタシが遮る。


『何て話すの?何の経緯も話さずにただ協力して頂くの?』


「妃音様」


思わず強い口調になってしまったアタシに、神楽が弱々しく声を掛ける。


『ゴメンナサイ。でもまだお父様やお祖父様には話せないよ』


お兄様の名前はまだ出せない。


「大変失礼致しました妃音様」


映像のbossが深謝する。


『謝らないで!謝るのはアタシの方』


語気が弱くなる。


『アタシが早く戻ればイイだけなんだよね』


解ってる。


「お止め下さいませ妃音様!」


えっ?


今度は神楽の口調が強くなる。


「前にも申しました。我々がレジスタニアをいつまでも壊滅出来ないのが全ての原因です。妃音様にその様な想いをさせてしまうのも然りです。皇王様からは無理に連れ戻すなと厳命されております」


鬼気迫る神楽。


「我々が解析システムを構築したらそれをマウンテンで操作したら何かしらのパワーが発生したりしないですかねぇ」


突拍子もないようでたまにありえそうな発言をする如月。


「今の段階ではそれしか策はないか」


結局ソコに行き着く。


「では急ぎますか」


と神楽。


「ワタクシも出来る限りの手は尽くします。では」


そう言ってbossは姿を消した。


神楽と如月も作業を再開させた。


「でも妃音様、良く浮かびましたね」


感心している如月。


そのコトバに思わずストーンに目が行く。


あの光が蘇る。


『ストーンのお陰だよ』


「光ったんですよね。妃音様ご自身に関しては月の影響はあまり関係無いと言うコトなのでしょうか」


操作しながらの神楽。


『ってコトよね、きっと』


視線は依然ぼわっと光ったままのストーンに向けたままで。


と同時に未だに消えない右手の光にも。


『月のパワーが弱くても、この光がシンクロしたのかもね。』


この光にも恐らく意味はあるんだろう。


何かしらのパワーがあってのコトなんだろう。


『そう言えばマウンテンってまだ光を放ってるの?』


ふと気になった。


『もしその光がホントにアタシとシンクロしてるんだとしたら、“塵”の謎もどうにかならないかなぁ』


とは言っても、


“神楽と如月でも太刀打ち出来ない”


ってお兄様の自信が気になる。


「考えられなくもないですよ!さすが妃音様!!」


へっ???


手を止めて言った如月に呆気にとられるアタシ。


“神楽と如月でも太刀打ち出来ない”としてもアタシなら出来る?


・・・、んなアホな。


この2人が出来ないコトがアタシに出来るワケないじゃない!


ケド、、、


“妃音様がいて、チーフがいて、ワタクシがいる。こんな最強な組み合わせ他にナイと思います”ー


如月のあの笑顔。


神楽と如月で出来なくても、神楽と如月とアタシでなら出来るー


そう言うコト、


なんだよね。


何と言ってもアタシにはストーンがある。


ストーンのお陰だよね。


この光も。


右の掌にストーンを乗せると必然的にストーンも光って見える。


この光、確かにあの時消えたと思ったのにまたこうして現れているってコトは、アタシを守ってくれるってのは確かなんだろうな。


しばらく右手に乗せたストーンをジーッと見ていた。


“マウンテンが導きし御方は、ストーンの御加護によって必ずご無事でおられると言う確信がございます”


そんなコトバも思い出しつつ、


お兄様のコト、想像して。


浮かんでくるのは夢みたいな現象でみたあのお兄様の過去、あのお兄様の狂気に満ちた笑い声。


鳥肌がまたしても立つ。


幼い頃の思い出のなかのお兄様からはとてもじゃないけど想像出来ない。


ケド、あの時お兄様が言った“アタシがいなくなった十数年”、


自分には何も出来ないもどかしさが、お兄様を変えてしまったのだとしたら、


アタシにも責任がある。


アタシは感じた。


“お兄様を助けなきゃ”


って。


「ホントおまえって突然突飛もないコト言い出すよな。しかもソレが満更でもなかったりするからコッチが驚かされるよ」


手は止めずに、視線も動かさないままで神楽が吐き捨てるかのように呟いた。


「えっ?」


神楽から出たコトバとは思えない驚きにコトバを失う如月。


『さすが首席!』


アタシも言ってみた。


「ぃやっ!そんな」


テレる如月。


「まぁオレの下にいるんだからソレくらいの閃きはあって当然だ。自惚れるな」


プッッッ!!


やっぱりさすが神楽。


締めるときは締めるのね。


今、ちょっとドキッとしちゃった。


いくら如月に向けて言ってるとは言え、“オレ”ってコトバに。


ごくまれにしか神楽の口から“オレ”なんて聞かないから。


「はい!!」


それでも嬉しかったようで如月はとびきりの笑顔で答えた。


「解析システムはあと一歩だ。問題は塵の問題と、琉雅様が妃音様に話し掛けられたトリックだ」


依然手も視線もそのままの神楽。


『もしかして、それも塵の塊に関係しないかなぁ』


アタシがポツリ。


「現段階ではそれしか検討が付きませんね」


ようやく神楽の視線だけアタシに向いた。


『何かアタシにも出来るコト、ない?』


言わずにはいられなかった。


ずっとPPをいじってる2人を見てると、何も出来ない自分がもどかしくて仕方なかったから。


「ありがとうございます妃音様。お気持ちダケでも感謝に堪えません。妃音様には十分すぎるくらいしていただいております」


如月もコッチを向いて言ってくれた。


「我々の力不足で妃音様を護りきれず、大変申し訳ありません」


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・。


しまったぁ。


言わなきゃ良かったと後悔。


神楽がスッと立ち上がり手を止め、深々とアタシに向かってアタマを下げた。


『ゴメンナサイ。そんなつもりで言ったんじゃ』


つい半泣きになってしまう。


「チーフ!!妃音様にお気を遣わせてどうするんですか!!」


冷静に見ていた如月が突っ込む。


神楽は慌ててアタマを上げた。


如月…。


また神楽のあのコトバを思い出した。


“誰よりも人の気持ちに敏感なんです”


ゴメンね、如月。


ありがとう。


「申し訳ありません!!」


またしても深謝する神楽。


その表情と声は慌てているのがモロにわかる程だった。


「プッッッ」


如月の吹き出し笑いにられてアタシも声に出して笑っちゃった。


「如月!!」


照れ隠しに如月に突っ込む神楽。


アタシと如月は顔を見合わせて笑い合った。


「琉雅様が何も仕掛けて来ないのがホントに月の力が弱ってきているからだとしたら、上弦の月までには全て完成させないとならない」


場を仕切り直すように神楽が再びPPをいじりだした。


一変した空気に如月の表情も引き締まる。


あっっっ!!!


んっっっ???


そーゆーコトか↑↑↑


おっっっっ???


何だか次から次へと色んなコトが浮かんでくる。


繋がってるみたいに。


“アタシに出来るコト”


アタシに“しか”出来ないコト。


ストーンの力を利用してどうにかならないか。


なるかどうかはわからないけど、試してみる価値はあるハズ。


まずは、ストーンにひたすら“想い”を込める。


この“芋づる式”とも言える程の次から次へと考えが出て来るのもストーンのおかげなんだろうから、それにも感謝しつつ。


神楽と初めて逢ったあの日、如月に言われた通りにストーンに強く祈ったら祈りが神楽達に通じたように、


祈り続ければマウンテンやお兄様にもアタシの願いが通じるんじゃないか。


そしたら何かしらの解決に繋がらないかな。


、、、なんて普通に考えたら有り得ないコトでもかなり真剣に想えてくる。






「あれ?」


如月が突然声を発した。


全く動じない神楽に、軽く驚くアタシ。


「この前妃音様にフォールインした時って“スーパームーン”だったんですね」


えっ?


「ソレが何だ?」


素っ気ない神楽に驚くアタシ再び。


『そうだったの?』


全く以て気付いてなかったわぁ。


そんな場合じゃなかったしなぁぁぁ。(しみじみ)


かなり勿体無いコトしたわぁ。


『ソレどころじゃなかったから全然気付かなかったわぁ。勿体無かったな』


残念そうに言うアタシに如月が謝る。


「失言したな、如月」


神楽の素っ気ない態度はソレを気にしてのコトだったようだ。


「申し訳ありません!!」


神楽の言葉に再度アタマを下げる如月。


『止めてよ!如月が謝るコトじゃナイから。アタシこそゴメンなさい』


アタシもアタマを下げる。


「で、何が言いたい?」


淡々とPPを操作し続ける神楽。


「ぃやっ、あの、ぉぉぉ」


急にコトバに詰まる如月。


『ゴメン如月!気にしないで』


ムダに明るく。


「我々の妃音様とのフォールインはもちろんですが、琉雅様側が動ける理由も何かしらスーパームーンの影響なのかなとぉ・・・。申し訳ありません!ソレだけですっ!!失礼致しましたぁ!」


仕出かした感爆裂の如また急ぎ気味に言い切るとそのままPPの操作に戻った。


スーパームーンか。


パソコンでその日のスーパームーンの画像を見てみる。


「失言はもちろんだが今更気付いたのか?」


ちょっと迫力すら感じてしまう神楽の言い方。


神楽は気付いてたってコトね。


“「迂闊でした」”


アタシが下弦の月に気付いた時の2人の様子を思い出した。


神楽のコトバに何のコトか分かってなかった如月。


神楽は初めから月の状態を意識してたんだね、きっと。


つくづく神楽のソツの無さに絶句。


「スーパームーンよりも大きな状態で月を見ますか?」


ん?


微笑む神楽。


ぽかんとするアタシをヨソに神楽は部屋の電気を消して壁にPPを向けた。


おぉぉぉぉぉう↑↑↑


壁いっぱいに鮮やかな満月が撮し出された。


天井を見ると星も撮し出されていて、よく見ると一瞬にして部屋全体が星空に変わった。


さすがにコトバが出ない。


ただただ圧巻と言ったカンジで。


これもまたPPのスゴさなんだろうな。


うっすら涙すら浮かんでくる。


『こんなコトも出来ちゃうんだね』


見上げながら。


「ご満足頂けて何よりでございます」


2人の笑顔に尚更泣けてしまう。


『2世紀先には宇宙旅行とか、気軽に行けちゃうの?』


ふとそんなコトが浮かんでくる。


「ハイ。妃音様は幼少の頃から宇宙旅行が何よりもお好きだったと伺っております」


小さな頃から星空を眺めるのが好きだったのはソコから来てるんだろうな。


“お空から来た”


幼い頃に言われていたコトバを思い出してフッと笑う。


『アタシ、小さな頃から星空を眺めるのが大好きで、施設に居た時もことあるごとに外に出て空を見上げてたから、何処から来たのか自分で言えなくて正体不明だったアタシに、施設の先生方が“妃音はお空から来たのかな?”なんて言われてて』


自然と話していた。


宇宙にいないのに、空にもいないのにこんな光景見せられたらココロがすんできて。


『宇宙旅行じゃなくてもコレで大満足』


ありのままの素直な気持ちだった。


「恐れ入ります。それにしても先生方、随分気の利いたコトを仰いますね」


神楽の温かな笑顔に、またまた泣きそうになる。


アタシは一晩中、撮し出された星空をひたすら見続けていた。


ストーンを握り締めてずっと祈りながらー




































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