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いつかみた空

それは今から約200年以上の未来のお話。


地球以外の惑星にも人が住める惑星が出始め、いつしか“宇宙”が“宇宙”と言う概念を無くし、惑星が1つの“国”と言う分類になっている時代―


その中にある“琉按星”と言う、環境がまるで地球と瓜二つの惑星がある。


そこの皇女(おうじょ)


琉按妃音(るあん ひおん)が、


この物語の主人公。


この皇女様、


生まれながらにしての、“次期皇位後継者”


ちなみに現在、若干2歳。


この琉按星は、惑星内にある惑星の守護山である“プラチナムマウンテン”と言う名のこの惑星独特の天然石で出来た山の力によって平和が保たれている。


それ故、この山の力はこの惑星にとって、


“絶対”


なのである。


なので代々この惑星のシンボルとも言える“長”、つまり“(おう)”はこの山の力によって導かれた皇家(おうけ)の者がなるしきたりになっている。


妃音はその皇家に生まれた1人。


皇家に生まれた者であっても、出生の瞬間にプラチナムマウンテンが眩い光を放ち、そこから天然石の“プラチナムストーン”が放出されてプラチナムストーンが無数の光と共にその下に現れた者でなければ後継者として認められない。


妃音はその“認められし”皇女なのである。


その実力、わずか2歳にして既に発揮していて、


後継者としての公務はもちろん、数種類の楽器・あらゆる言語の日常会話をこなす。


また、皇妃(おうひ)である妃音の母親から


“アナタは人の為にいるのです。まずは人の為に行動しなさい”


と叩き込まれて育っているせいもあり、


とある皇家主催のセレモニーでのこと。


皇邸(おうてい)の中庭で招待者の子息達が各々遊んでいた時、


ある1人の男児が階段から足を滑らせてハデに転んでしまい出血してしまうと言うアクシデントがあったコトがある。


そんな時でさえ母からの教えを忠実に守った妃音は、


慌てたり泣き出したり狼狽える周りの子供達や


対応に苦慮する大人達(妃音のSP〈エージェントと呼ぶ〉)をヨソに

1人、何1つ怯むコトなく毅然とした態度で、 冷静かつ適切に、時にエージェントや周りの子供達に指示を出しながら、迅速に応急処置をし始めた。


処置が終わった後も、念の為と邸内にいる大人達に一切気付かれるコトなく皇家専属の病院に妃音が連れていき、事なきを得たと言うエピソードがある。


若干2歳にして、である。


また天文学に対して大変興味があり空を眺めるのが大好きで、コトあるごとに1人外に出て空を眺めたり、


エージェントを引き連れて“宇宙散歩”に良く行くと言う。






ところが妃音の3歳の誕生日のセレモニーの日、


妃音のみならず琉按星の問題とも言える大事件が起きてしまう。


ソレがこの物語のきっかけともなってしまう、


【次期後継者失踪】


と言う、前代未聞の一大事へと発展してしまうのである。




犯人も原因も、誰にも解らなかった。


妃音がいなくなる直前まで一緒にいたエージェントまで誰1人として残っていなかったからだ。


証言者が誰もおらず手掛かりも何も残っておらず、捜索は難航し解明が不可能とまで言われた。


初めの数年は妃音が当時3歳と言うコトもあり、何とか国民の目を欺けられたが、さすがにいつまでもごまかせるワケもなく、


後継者失踪事件は次第に全国民が知るトコロとなる。


そうなるとロイヤルセントラルセクション(通称RCS(←全ての官庁の全集合体のような機関)) は、威信にかけて全勢力を捜索に注ぎ込んだ。


それでも数年経っても成果は無かったが、ある日突然、プラチナムマウンテンが何かを示すかのように反応するようになり、


何度か繰り返すウチにこの反応は妃音のストーンとのシンクロだと言う仮定に辿り着いた。


その仮定を提唱しシンクロを利用して妃音の居場所を突き止めるシステムを開発し、見事に妃音の居場所を突き止めたエージェント、


就くのが琉按星イチ難しいと言われるエージェント史上で唯一の“オールパーフェクト男”


別名“伝説のエージェント”


神楽(かぐら)と、


その神楽を教育係に持つ新人エージェントの如月(きさらぎ)


そして妃音の3人がこの物語のメインキャラクターである。


エージェントになるには、2年間の養成機関“アカデミア”に“入関(入学)”し、2年間毎月行われる試験にクリアし続け、


なおかつ“退関(卒業)”試験もクリアしなければRCSに入庁(入官)出来ない。


また、入官しエージェントになれてもなお定期的行われる試験に落ちてしまうと即クビと言う厳しすぎる条件の中、


神楽は入関試験から現在に至るまで、全てパーフェクトでクリアしている。


“伝説のエージェント”たる所以である。










ある日のRCS---


この日神楽はRCSの最高責任者であるbossコト“朱雀(スザク)”の元を訪ねていた。


“伝説のエージェント”である神楽は入官3年目にしてbossのサブを打診され続けているのだが、一向に受け入れないでいた。


それどころか、あろうことか神楽より年下であり今は失踪している妃音の捜索に携わりたく、現場から離れたくないと懇願しているのだ。


神楽は入関試験の時から“妃音様にお仕えしたい”とばかり言い続けてきた。


それだけでもbossには理解し難いコトだと言うのに、またしても神楽はbossに 理解し難いコトを言い出していた。


bossの様子は驚愕そのものだった。


“『恐らく新入官してくる如月をワタクシにお預け願えませんでしょうか』”


青天の霹靂だった。


普段余り人と接しないコトバ足らずで不器用な神楽が自ら教育係を申し出る等、想像の範囲を越えていたからだ。


『神楽、ホンキか?』


思わず出てしまったホンネだった。


最高責任者たるもの多少のコトでは動じないのだがさすがにコレは動じずにはいられなかった。


「はい。如月はプログラムに長けていると聞きました。是非とも如月の力が必要なんです」


真剣にジッとbossの目を見て言う神楽。


『神楽ともあろうエージェントが人の力を借りるなんて、相当苦慮しているのか?』


bossは神楽に絶対の信頼を寄せていた。


何とか神楽にサブを任せたいと思う程に。


「いえ、面白そうだなと思いまして」


こんなセリフさえも真剣に言う神楽。


ある程度神楽の性格を把握している自信のあるbossは敢えてそれ以上は聞かずに承諾した。


驚愕したのは入官してから教育係が神楽だと知らされた如月もまた、同じだった。






『どうしようオレぇ。自信無くすよな、“あの”神楽サンがチーフなんて。正エージェントになれんのかなぁ』


今年のアカデミア首席退関の如月をもってしても神楽が教育係と言うのは悩みのタネでしかなかった。


と言うのも神楽のウワサは当然アカデミアでも有名で、


“冷静沈着、ハガネのオトコ、氷のような冷静さ”


などプラスなイメージが神楽に対してなかった。


もちろん神楽が自ら如月の教育係を志願したコトは神楽とbossだけの秘密、如月は知る由もない。


不器用な神楽のコト、如月に知られたくないとbossに口止めを懇願したのだ。


そうとは知らずに如月は実務前から憂鬱で仕方なかった。




ところがいざ神楽の下に就いて見ると驚く程にそのイメージは一新された。


“冷静沈着”なのはウワサ通りだったが、コトバ足らずで不器用な為に誤解を受けやすいが故の“ハガネのオトコ、氷のような冷静さ”であるコトに次第に気づいてきた。


だが如月、若さゆえのプライドの高さから度々暴走する傾向にあり、その度に神楽に厳しく批判されていると言う欠点がある。


「如月、コレを頼む」


『ハイ!チーフ!!』


だが神楽は如月のプログラムの能力の高さには一目置いており、朱雀から如月のプライドの高さを指摘されていたがソレを承知で教育係を買って出ていた。


神楽も部下と言うよりはどちらかと言うとアシスタント的な関係で如月と接していたのだった。


神楽は確信していた。


“如月と自分の力が融合すれば妃音様の居場所を必ず突き止められるハズだ”と。


神楽には“プラチナムマウンテンの反応は妃音様のプラチナムストーンとのシンクロによるものだ”と言う確固たる自信があった。


神楽は自分で突き止めたいと言う強固な思いを持って入官した。


それ故に今回の“如月との合同プロジェクト”には並々ならぬ想いがあった。


完成した今、神楽は今すぐにでも自分がこのシステムを使って妃音の元へと行きたかった。


『チーフ、出来ました!!』


満面の笑顔の如月視線の先には安堵の表情の神楽がいた。


普段は無表情で自分に滅多に見せない神楽の表情に、言い様のない充実感を感じる如月。


「ご苦労様。じゃ、オマエが行ってこい。オレはまだやるコトがある」


不器用な神楽は如月に目を向けず自分の表情も1つも変えずに如月に告げた。


『え゛っっっ!?』


如月は一瞬コトバを失った。


妃音様発見まであと僅か。


如月もこのプログラムの立ち上げに参加してきてこのシステムがかなりの性能があるコトには気付いていた。


これなら間違いなく妃音様の居場所を突き止められるハズ。


如月も確信していた。


確かにこのプログラムを仕上げたのは自分だ。


と言っても神楽がデザインしたシステムをプログラムしただけ。


しかも神楽は自分の上司。


ましてや自分はまだ研修の身。


しかも自分の欠点を知ってるハズの神楽が自分にこんな大役を。


『もしかして実験台、ですか?』


余りの困惑っぷりに、出たコトバがあろうことかコレだった。


ひきつる如月。


神楽は失笑しただけで何も返さなかった。


『ありがとうございます。行って参ります!』


「頼んだぞ」


深々とアタマを下げる如月にただ一言だけ交わし如月を見送った。


如月には見せなかったが神楽の表情は温かく優しい笑顔だった。


『イイのか?妃音様の居場所を突き止めるのはお前の悲願なんじゃなかったのか?』


神楽と如月の様子を自室でモニタリングしていた朱雀がモニター越しに神楽に問いかけた。


神楽は朱雀に目を向けずにただ微笑むだけだった。
























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