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作者:
掲載日:2026/05/28

深夜二時 ――

 弟から、電話が来た

 一個の写真が送られてきた。


『外にいる…』


 添付された画像には、暗いリビングが写っている。


 窓の外。

 街灯の下に、人影が立っていた。


 顔は見えない。

 ただ、こちらを見ている。


『警察呼べ』


 すぐ返信した。


『なに、あの人…』


 弟は一人暮らしを始めてまだ四ヶ月だった。

 昔から怖がりで、こういう相談は頻繁にあった


『今日はカーテン閉めて寝ろ』


『チェーンしとこ…』


『わかったか?』


 だが、その五分後。


『近づいてる』


『こっちに来る』


 俺は舌打ちして大声をあげた。


「もしもし!?」


『……』


「おい!返事しろ!」


 小さく、息を呑む音。


『玄関の前にいる』


 背後で、インターホンが鳴った。


 ピンポーン。


 ピンポーン。


 ゆっくり二回。


「開けるなよ」


『え?』


 だが次の瞬間。


 ガチャ。


 電話の向こうで、玄関の開く音がした。


「は!? 何してんだお前!」


 弟は言った。


『誰もいない』


 その直後。


『にぃちゃん!プツッ…』


 通話が切れた。


『ハァッ……!ハァッ……!ハァッ……!』


 俺は急いで車を走らせ弟のマンションへ向かった。


 マンションまで二十分…

 途中、何度電話しても弟は出ない。


『クソッ!』


 嫌な汗が止まらなかった。


 ようやく部屋に着いた時、玄関は半開きだった。


「おい!」


 中は静まり返っている。


 リビングへ入った瞬間、息が止まった。


 誰もいない。


 ただ、机の上に弟のスマホだけが置かれていた。


 画面は、俺との通話履歴。


 その横に、一枚の写真。


 暗い部屋。


 こちらを撮影した写真だった。


 写真の中央。


 玄関に立つ俺の後ろに、人影が写っていた。


 いや。


 違う。


 拡大して、気づいた。


 人影じゃない。


 写真に写っていた“人影”は、全部同じ顔だった。


 全部、弟だ。


 窓の外の影も。


 玄関前の影も。


 俺の後ろに立っている影も。


 全部、口を裂けるほど開いて笑っている弟だった。


 そして写真の右下。


 小さく、文字が打たれていた。


『つぎはおにぃちゃんがそとにたつばんだよ』

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