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まだ知らない夜の街…
少女が、とあるキッカケから夜の街に飛び出してしまう。
いつか、本当の愛や優しさに気付く日まで、
迷い込む深い穴。
思春期の苦しみの中に、探し求める人のぬくもりがある。
そんな夢華の気持ちを書いた作品です。
暗くなった街に、
1人立ち尽くし、携帯を握りしめる少女がいた。
名前は…
そう、名前すら聞けない様な、
刃の様な少女だった。
「君さー、名前何て言うの?」
「……夢華だけど?」
だから何よ!と言わんばかりの口調で、
話しかけてくる年上の少年を睨みつける。
「チッ」
可愛げのない態度に、立ち去る少年。
キッとした態度のまま、
握りしめていた携帯を見直す夢華。
さっきから繰り返す着信は、自宅からだった。
うるせーな。
と思う反面、心配している両親の顔が浮かぶ。
なのに、夢華は、
夜の街にただ1人たたずむのだった。