その再会は、俺のものじゃない
セナはタロウを連れて、石畳の道をゆっくり進む馬車でテリュー王国へ向かっていた。
「あなた、どこの出身なの?」
セナが軽く微笑みながら尋ねた。
しかし返事はない。
セナは横を見る。
「ねえ!なんでぼーっとしてるの!」
タロウは周囲の景色を観察していた。
石の城壁、木造の家、鎧を着た兵士。
すべてが見慣れないものだった。
(本当に……異世界なんだな)
技術もない。
自動車もない。
現代兵器も存在しない。
突然、セナが顔を近づける。
「ブーン!!」
タロウは思わず驚いた。
「何をするんだ?!」
反射的に怒鳴る。
セナはくすっと笑った。
「さっきからずっと考え事してるから。」
「別に何でもない。」
タロウは短く答えた。
セナは目を細める。
「変な人…」
しかしすぐに笑顔に戻った。
「もうすぐ着くよ。」
タロウは前方へ視線を向ける。
(この世界の情報を集める必要がある)
やがて、巨大な門が見えてきた。
テリュー王国の城門だ。
兵士たちが整列して立っている。
そしてセナの姿を見ると、すぐに敬礼した。
「セナ姫がお戻りになったぞ!」
兵士たちの顔には安堵が浮かんだ。
しかし、その視線がタロウに向いた瞬間——
空気が変わった。
警戒。
疑い。
兵士たちは槍を構えた。
「止まれ!」
その瞬間、セナが前に出る。
「やめて!この人は私の命の恩人よ!」
兵士たちは一瞬固まる。
そしてゆっくり槍を下ろした。
タロウはそのまま、セナの父のもとへ案内された。
中へ入ると、セナはすぐ父と母に抱きついた。
長い間離れていた家族。
再会の涙が流れる。
そこへさらに一つの名家が現れた。
彼らは二人の子供を連れている。
そのうちの一人はセナと同い年くらいだった。
抱擁と再会の挨拶が続く。
タロウはその空気を壊さないよう、静かにその場を離れようとした。
しかし一人の男が声をかけた。
「君、腹が減っているだろう?」
優しい声だった。
「さあ、一緒に食べよう。」
タロウは一瞬迷ったが、静かにうなずいた。
長い食卓に座り、
異世界の料理を静かに食べる。
「すまないね、少年。」
セナの父が言う。
「大した料理は出せなくて。」
タロウは何も言わず、食べ続けた。
食事が終わると、男が立ち上がる。
「改めて自己紹介をしよう。」
「私はウォナ。こちらは妻のノウナ。王家の親族だ。」
そして一人の威厳ある男が前へ出た。
「私はセロ。テリュー王国の王だ。」
「こちらは妻のネロ。そして娘のヴェラ。」
ウォナは真剣な表情でタロウを見る。
「礼として、何が欲しい?」
「金か?宝石か?剣か?鎧か?」
「権力か?それとも力か?」
タロウは静かに首を振った。
「金も権力もいらない。」
部屋の空気が止まる。
「ただ——」
「しばらく滞在できる場所が欲しい。」
ウォナは微笑んだ。
「ちょうどいい。客人用の部屋がある。」
「好きなだけ使うといい。」
こうしてタロウは特別な客人として迎えられた。
侍女がタロウを長い廊下の奥へ案内する。
その途中、タロウは足を止めた。
大きな鏡に映る自分の姿。
体は——若い。
顔は——十七歳ほど。
失ったはずの若さが、戻っていた。
タロウはしばらく黙って鏡を見つめる。
部屋に着くと、すぐベッドに倒れ込んだ。
体は疲れ切っていた。
頭の中は情報で溢れている。
しかし眠りについた瞬間——
訪れたのは静けさではなかった。
夢の中で。
血。
叫び声。
動き続ける手。
殺せ。
殺せ。
殺せ。
読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




