赤痢の発生、顕微鏡と生命の補水
蔓延する赤痢と科学の緊急解析
練太郎と佐和が、顕微鏡という「科学の目」を手に入れ、いよいよ大規模な水の浄化システム建設に着手しようとした矢先、江戸の街に赤痢が突如として蔓延し始めました。激しい下痢と嘔吐は、瞬く間に多くの人々の命を奪い始めます。
「まさか、このタイミングで…!間に合わなかったのか!」練太郎はすぐに川の水を採取し、第七話で完成させた複合顕微鏡で分析しました。「佐和殿、これを見てほしい!原因は、やはり川の水だ!感染者の排泄物によって汚染された水が、病原菌の培養液と化している!」
練太郎は、冷静に病態を分析しました。「この病の最大の脅威は、熱や腹痛ではない。体内の**水と塩分(電解質)**の喪失だ。この水分喪失を止めねば、人命は担保できない!」練太郎は、公衆衛生学の知識に基づき、最優先で緊急対策を佐和に提案しました。
理清補水の緊急調合
練太郎の最初の行動は、命を救うための経口補水液(ORS: Oral Rehydration Solution)の緊急調合でした。「佐和殿。治療薬のない今、必要なのは生理学に基づいた水分補給だ!」
彼は玉屋の精密なガラス製ビーカーと比重計を使い、当時の良質な塩と砂糖を厳密に計量し、水に溶かしました。「清潔な水に塩分と糖分を、最も効率よく体内に吸収される比率で溶かせ!この配合は、腸の浸透圧を利用して、失われた水分と電解質を最も効率よく吸収させる。これは化学と人体生理学の応用だ!これを**『理清補水』**と名付け、今すぐ配布する!」
科学的処方箋と無限の信用
佐和は、その科学的根拠と緊急性を瞬時に計算し、迷うことなく従いました。佐和は即座に危機管理体制を敷き、簡易な濾過槽を組み上げて病原菌リスクの最も低い水を緊急で確保しました。
佐和は、練太郎の「理清補水」と、清潔な水の重要性を記した張り紙を大量に作成。人足たちを指揮し、人命救助という最大の使命を掲げ、補水液と応急濾過水を感染者地域に最速で運び込みました。顕微鏡が明らかにした真の原因と、経口補水液という科学的処方箋、そして清潔な水の組み合わせは、赤痢による死亡率を劇的に低下させました。「理清補水」は、たちまち命を救う**「奇跡の塩水」**として庶民の絶大な信頼を得ました。
次の目標:供給の自動化
赤痢の危機が去った後、練太郎と佐和は、「無限の信用」という最大の無形資産を獲得しました。「神崎様。あなたの科学は、もはや贅沢品ではなく、人命という最大の資本を担保する防衛線となりました。しかし…」
佐和の瞳は、まだ人足の力に頼るしかない非効率な水の供給体制に向けられていました。「佐和殿。次の危機に備えるには、この水の供給を完全に自動化し、街中に張り巡らせねばならない。次は、水車による動力と物理学の力で、水道インフラを築く!」




