暴走五話
相馬家は、もはや蘆名家の頼りなさに堪忍袋の緒を切り、ついに北条家との戦いに加わった。
「ふっ……相馬が来たか。後は頼んだぞ……」
そう言い残して蘆名盛氏は、薄氷の上を歩むような生涯を閉じる。
だが、相馬家の運命は容赦なかった。北条に刃を向ければ、背後から伊達が襲いかかる。瞬く間に相馬は瀕死の状態に追い込まれる。
そんな中、御子神は北条方から破格の待遇を受け、その才能と血筋を至宝として迎えられた。
「どうだ……サトミィ。御子神を奪われた気分は……」
北条家はホクホクである。
里見義弘は、この一大事にキレかけたが‥。
「嬉しかないが、取り乱すほどでもない。……まあな、大きな旗に人は集う。当たり前の話だ」
一方その頃、佐竹義重に男子が誕生した。貞隆と名づけられる。
「こやつは御子神を凌ぐ器となろう!」
義重は頬を紅潮させて語り、周囲を苦笑させた。
さらに岡本顕逸にも子が生まれ、宣綱と名付けられる。
「……なるほど、戦国にもベビーブームの到来か」と誰かが呟いた。
そしてまた、新たな人材が義弘のもとを訪れる。
「堀江頼忠と申します。16歳です。得意は人を挑発すること、そして声を張り飛ばして激励することでございます」
「なんだその芸は……。まあいい、熱気は兵の糧だ。採用する」
義弘は御子神を恨んではいなかった。むしろ感謝の念さえある。だがその感情が永遠に変わらぬ保証は、どこにもなかった。




