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暴走四話

佐竹義重の胸中には、もはや御子神典膳への関心しか残っていなかった。だが一方で、北条氏政は北伐の野望に燃えている。その進軍路に立ちはだかるのは佐竹軍、そして蘆名・岩城の諸家。

「サトミィさぁ……御子神貸してくれよ」

「いいとも」

義弘は要請に応じた。御子神自身も北条の旗の下で戦うことに少しの躊躇もなく、ただその剣技を惜しみなく振るう。

やがて小田の地にて、北条氏照率いる軍と佐竹・蘆名・岩城の連合が激突する。だが戦は雷鳴のごとく一瞬で決し、連合軍は無惨に潰走した。その余波は岩城家を呑み込み、一族は歴史から消え去った。

「佐竹がこのまま北条に呑まれては奴らを増長させるだけだな」

里見義弘は決断し、府中城へ全速で駆けつけた。

府中城主・太田資正は迷いを断ち、里見との間にいずれ佐竹家を再興させるという密約を交わして城を明け渡す。

「我らが生き延びるには、これしかあるまい……」

その陰でひょっこり顔を出したのは、小田氏治であった。

「あの……うちも、なんとかなりませんか」

「おや、小田氏治殿。まだリスポーンには早いのでは?」

「ぐ、ぐぬぬ……」

敗走してくる佐竹義重たちを回収する里見軍‥。

北条にしてみれば、里見のこの抜け目ないハイエナぶりは癪の種であった。だが肝心の御子神を里見から借り受けている手前、背後を衝かれるのは避けたい。

「まったく……サトミィはハイエナが好きでたまらんようだ。こうなれば北へ攻め上がるしかあるまい」

氏政は苛立ちを噛み殺し、矛先を蘆名へと転じた。北条の炎は、さらに奥羽へと燃え広がろうとしていた。

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