暴走十六話
犬居城。
周囲は急峻な斜面で、攻める側は一気に駆け上がれない。敵兵は列を乱し、上から矢や石を浴びやすい。
狭い曲輪を複数つなぐ構造で、攻め込まれても段階的に防御線を張れる。いわば小型の多段式要塞‥。
虎口は工夫され登り口は狭く、わざと折れ曲がった通路になっていて突破しづらい。兵が少なくても持ちこたえられる。
しかし‥。
いくら防御力が高くても、補給線が細いということは長期戦では自分が干上がるリスクがある。
山頂まで米や味噌を運び上げるのは超重労働‥。
山道は狭く、牛馬も入れない。人力で背負い上げるしかない。
攻め手が周囲を押さえたら、搬入ルートは一発で断たれる。
犬居城は耐えるよりも睨みを効かせる役割が大きい。
補給困難を承知で築かれた捨て石の要塞に過ぎない。
しかし、犬居城の守備を任されている鳥居成次17歳はこういう時こそ一騎討ちだろ!と思うのであった。
鳥居成次は里見側に使者を送った。
「ナニィ~?一騎討ちだと?」
鳥居成次は最悪、自分ひとり死ねばすむし、勝てば兵を退いてもらおうとした。約束が守られるかは定かではないが‥。
「‥鳥居成次の提案‥。断らせてもらう!さっさと落城させろ!」
犬居城を里見義弘たちが奪取していた頃、水谷正村隊は小山城攻略へ向かっていた。
永井直勝、およそ2000の兵力で迎え撃つも撃破される。小山城を陥落させた。
「永井直勝‥ここで死ぬにはまだ早い‥」
永井直勝は里見に取り立てられたが石川数正は逃がされた。
「この手の文官は何を考えているか分からんからな‥」
その頃、上杉家とその仲間たちは本格的に織田家総攻撃を始めた。長宗我部家、毛利家、武田家、最上家、安東家‥。総兵数およそ38万の大軍。
「織田家ももう終わりだな‥」
織田家滅亡を期待していたがこれが上杉家にとって最悪の事態を招くことになるのであった。




