暴走十一話
小田原城陥落の報は、関東一円に雷のような衝撃を走らせた。
「……あいつら、化け物か」
驚愕を隠せぬ里見義弘は、即座に兵を挙げ、小田原城にて合流を果たすと、そのまま矛先を韮山城へと向けた。
一方その頃、北条方の猛将・氏照は祇園城奪取を狙い、軍を進めていた。
「また貴様らか……!」
芳賀高定は韮山城に拠り、必死の抵抗を試みる。
だが外からは堀江頼忠の嘲り声が響いた。
「芳賀!お前‥弱いだろ!」
挑発に高定は烈火のごとく怒り、槍を握りしめた。
「小癪な小童め……! 全軍突撃だ! こちらには御子神もおる!」
だがその刹那。
「……悪いな。やめさせてもらうぜ」
味方であるはずの御子神典膳が、突如として裏切りの刃を翻す。韮山城の防備は一瞬にして崩れ、里見軍もその異変に驚き、戸惑った。
やがて、御子神は縛した芳賀高定を伴い、里見陣へと姿を現した。
「久しいな、御子神。……殺されに来たか」
義弘は冷徹に斬首を命じようとした。だが周囲の将兵は声を荒げ、再登用を強く進言する。重臣らの反発を受け、義弘はしばし沈黙した後、渋々これを許した。
そしてこの混乱の渦中に、まだ16歳の佐竹義憲が里見軍に仕官を願い出る。若き血潮は、戦乱の只中で新たな火種となろうとしていた。




