1. 春の夢
ー俺たち、ずっと一緒だよな!ー
また、同じ夢を見た。
幼児同士の他愛もない約束。ぼんやりとした背景。相手の顔は、霧がかかったように何も分からない。
別に気にするようなことではない。よく見る夢だ。
「和哉、起きてんのー?」
「起きてるから。勝手に部屋に入ってこないで」
自室のドアを躊躇なく開けてくる母親に、思春期独特の不快感を覚える。
スマホを見ると、4月9日 水曜日 午前7時13分。
これ、遅刻ギリギリだな……
高校2年生、初日の朝。
遅刻はするまいと、ベッドから飛び起きて5分でなんとか身支度を終え、急いで家を出た。
僕が通っている春聖高校までは、片道約1時間。
自宅の最寄りの雪見橋駅まで自転車で5分、それから電車を一回乗り換えて、学校の最寄りである春聖駅からは歩いて10分。
寝坊した日は、如何にして自転車と徒歩の時間を削るかに懸かっている。
今日がその日な訳で、全速力で自転車を漕ぐ。
途中、すれ違う派手髪の男子高校生たちは皆楽しそうに騒いでいて、よくもまあ朝からそんな元気があるものだ、と少々感心した。
電車の乗り換えも無事に成功した僕を讃えるかのように、陽の光は車窓から優しく降り注ぐ。
夢見心地になった僕は睡魔に襲われる直前に駅に到着し、幸福を纏いながら改札を抜けた。
こんにちは!輝夜です。
まだまだ未熟者ではありますが、よろしくお願いいたします。
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