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ある日、世界に出現したダンジョンは、開門前にバカスカ敵を倒した僕のせいで難易度が激高したらしい。  作者: シュガースプーン。
一章

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第43話 報告

 未来達とは別にダンジョンを脱出した部隊長は、重症者である井尻を救急車で病院に搬送した後に和久井の元へ報告へ向かう。


 和久井は仮設された門側の天幕は気に入らないからとホテルを事務所がわりに使っているので、部隊長はタクシーに乗り込みホテルでやってくると、和久井のいる部屋をノックした。


 勿論ホテルはビジネスホテルなどではなくこの辺で一番高いホテルで、これが経費として税金から出ているのかと思うと、はらわたが煮える思いだが、部隊長に今すぐ出来ることはないからと歯を食いしばって堪える。


 ホテルの受付から先に連絡を入れていたおかげで、ノック後すぐにドアが開いて部屋の中へ入ることができた。


「えらく早い帰りじゃないですか。ダンジョン攻略はどうしました? こんなに早く帰って来れる難易度でしたか?」


 和久井は開口一番部隊長にそう質問した。

 成功した事しか考えていないらしく、やれやれと拍子抜けしたような態度をとっている。


「スキル無しの自衛隊員2人は死亡。一般スキル持ちの参加者2名も一名は骨折、もう一名は銃弾を足に受けての重症で病院等で治療を受けています。やはりダンジョンのモンスターは強く、簡単に手に負えるものでは有りませんでした。一般人が死亡せずに帰還できただけでも——」


「どういう事だ! おめおめと逃げ戻って来たというのか? 世界に発表できるような成果は?」


 部隊長の報告の途中で和久井が痺れを切らして叫んだ。

 その剣幕を無視するように、部隊長は一応の成果を報告する。


「一応、私がもう一つスキルを取得しました。それと、ヒーラーと思っていたスキルは他人を回復するようなスキルでは無かったという確認が取れました」


 淡々と報告する部隊長に、和久井はテーブルの上に置いてあった花瓶を投げた。


 部隊長は避けなかった。


 顔面に花瓶が激突するが、部隊長はスキルのおかげで怪我をすることもなく、花瓶だけが割れて中の水で顔や服が濡れただけであった。


「どうするんだ! 大臣や総理に成果を上げるとこちらから進言したんだぞ! 出来ませんでしたでは済まされない!」


「以前は総理や大臣からの命令だと説明を受けましたが?」


 部隊長の返事に和久井は部隊長を思いきり睨んだ。


「うるさい! 出世の為にはブラフも必要なんだ! 出来る人間は相手の欲しい言葉を先回りして伺うのも仕事なんだよ! 私の計画は完璧だったのにお前達駒が無能なせいで台無しじゃないか!」


「なるほど。できない約束はする者では有りませんな。総理や大臣も相手にしなければならないと思っていましたが話はもっと簡単なようです。今録音したデータを大臣に聴いて貰えば貴方はトカゲの尻尾切りにあいそうです」



 部隊長はここに来る前に仕込んでおいたボイスレコーダーを服から取り出して和久井に見せた後、返事を待たずに退出する為にドアへと向かう。


「貴様! 家族がどうなってもいいのか? 妻や小さい子供を事故に見せかけてどうにでもできるんだぞ?」


 和久井の脅しの言葉に、部隊長は和久井の方を振り向いた。


「今の言葉の録音でこちらの味方が増えて家族を守ってくれそうでは有りますが……」


 部隊長は和久井の方へ歩いて行くと思い切り机を殴った。

 スキルの力によって机は真っ二つに砕けるように割れてしまう。


「家族に手を出される前に貴方をどうにかした方が良さそうですか?」


 部隊長の力を見て、和久井は腰を抜かして尻もちをつきながらも、保身の為の行動は忘れずに割れた机の引き出しから銃を取り出して部隊長へ向けた。


「い、言う事を聞かないならお前を先に殺して口封じをするぞ!」


「どうぞご自由に。私はスキルの力でモンスターの銃弾を弾きましたのでそんな物は怖くありませんから」


 部隊長が部屋から出ていくまでに、和久井の持つ銃の引金が引かれることはなかった。

 そもそも、セーフティさえ解除されていない。


 部屋からでた部隊長は、自分の上司からダンジョンについて、防衛大臣に直接の報告がしたい旨を伝えて取り次いでもらう。


「これで少年の事は何処にも伝わることはないだろう。スキルが鍵なのは確かだ。しかし、もっと慎重に事を運ぶ必要がある」


 部隊長は、ダンジョンの経験者としての意見を発する為に行動を起こしていくのであった。

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