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ある日、世界に出現したダンジョンは、開門前にバカスカ敵を倒した僕のせいで難易度が激高したらしい。  作者: シュガースプーン。
一章

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第29話 当選

 薄暗い部屋の中でベッドから立ち上がると、少年はカーテンを開けて太陽の光を部屋の中へ取り入れた。


 時刻は昼過ぎになっており、日差しの眩しさに少年は目を細めた。


 このカーテンが開けられるのは実に4日ぶりであった。

 この部屋の主人である少年の名前は井尻真斗(いじりまさと)


 彼は久々によく眠れ、すっきりした様子で外の様子を眺めている。


 というのもここ数日、彼は考え事によって夜も眠れぬ日々を過ごしていたのである。


 井尻には好きな同級生の女の子が居た。

 名前は高宮悠里。


 自分の女友達とは違う清楚な雰囲気と真面目な性格に惚れているものの、接点が無い為にいまいち先に進めずに遠くから見ていた。


 最近はそんな彼女と一緒に学校から帰る程に関係は進展してきており、とても充実した日々を送っていた。


 それなのに先日、彼女に振られたにも関わらず、のうのうと彼女に付きまとう陰キャの同級生が下校中にも付きまとっているのを発見した。


 その日も井尻が一緒に帰ろうと思って悠里を探していた所で偶然発見したのであった。


 悠里はどこか元気がなく、怖がっているように見えたので、自分が守ってやろうと陰キャ野郎に殴りかかったのだが、今まで下に見ていた陰キャ野郎は意外にも腕っぷしが強く、反撃をくらって投げられてしまった。


 地面に落とされた時の息の出来ないほどの衝撃と痛さを思い出すと今でも震えてしまう。


 そして、その後に陰キャ野郎に脅され、怖くなって逃げ出してしまった。


 悠里が見ている手前虚勢ははったが、彼女を置いて逃げ出してしまった事でどう見られるのかが怖くなり、次の日は学校を休んでしまった。


 その日から土日に入ったので親にも何も言われていないが、井尻はこの3日間その事で気を病んでしまい、色々と考えて眠れぬ夜を過ごしていた。


 それが解消されたのは昨日、突然のメッセージが届いた事で解決できそうだからであった。


 4日前に突然現れたステータスウィンドウと呼ばれている画面。

 その日、井尻のステータスウィンドウに赤いチェックマークが表示された。


 井尻がそのチェックマークをタップすると、あるメッセージが表示されたのである。


『ファーストスキルキャンペーン当選のお知らせ。井尻真斗殿。厳正な抽選の結果、貴方にはファーストスキルとして《腕力強化》のスキルを贈呈致します。このスキルを使ってダンジョンへ挑み、素晴らしい善玉菌へと成長を遂げられる事を願っております』


 初めに告知されたスキルが配られる10億人に当選した通知であった。


《腕力強化》


 その文字にスキルがどれほどのものかと井尻は部屋にあった適当な硬いものという事で机に置いてあった金属製何も入っていない貯金箱を手に持って握ってみた。


 すると普通なら形を変えないはずのそれはグシャリと凹み、手には痛みを感じなかった。


 スキルの力が本物だと分かった井尻は、家を抜け出して近くにある空き家に向かった。


 その空き家は物がそのまま放置されていて、こっそり侵入して溜まり場にしている場所であった。


 そこにある物なら壊しても問題ないと思っているので、井尻は放置されたままの冷蔵庫を思い切り殴り飛ばした。


 そんな事をすれば普通なら手を怪我するだろうが、スキルによって強化された井尻の拳によって冷蔵庫はプラスチック部分を大破させて衝撃で床を転がった。


「この力があれば、《《悠里》》を陰キャ野郎の魔の手から守ってあげることができる!」


 自身を付けた井尻は再びヒーローになる為に行動しはじめる。


 とりあえずステータスウィンドウの事もあって全国の公立の学校は開門して安全が確認されるまで休校になっている。


「学校が始まったらお前は終わりだ」


 井尻は、颯爽と悠里を助ける自分を想像して口角が上がった。


 その後、学校が休みなので友達に誘われて井尻は気分よく出かける。

 原則自宅待機厳守なのだがそんな事はしらない。


 友達にスキルが当選した事を話してチヤホヤされるのを想像しながら友達との待ち合わせ場所へ向かうのであった。




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