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ある日、世界に出現したダンジョンは、開門前にバカスカ敵を倒した僕のせいで難易度が激高したらしい。  作者: シュガースプーン。
一章

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第18話 買い物

「えーっと、どっち買えば良いんだ?」


 未来はスーパーにやって来た後、母親に頼まれた物を色々とカゴに入れた後、最後に精肉コーナーの前で商品と睨めっこをしていた。


 母親の話では今日の晩御飯は生姜焼きにするらしい。

 仕事が遅くなった為今帰り道らしく、そのまま家に帰るので買い出しをして来て欲しいとの事だ。


 スマホには頼まれた買い出しリストがメモしてあるが、肉に関しては豚肉としか言われていない為、沢山ある豚肉からどれを選んでいいのかが分からなかった。


「バラ、ロース、細切れ? 切り落とし? ロースにはしゃぶしゃぶ用って書いてあるし、これは違うか。いつもの見た目だと細切れ? 切り落とし? どれも似ていて分かんないぞこれ」


「日和くん?」


 豚肉の前で唸る未来に話しかける人物がいた。

 聞き覚えのある声に未来は振り向くと、緊張した声で名前を呼んだ。


「た、高宮さん!」


 声をかけてきたのは未来が先日玉砕した同級生の高宮悠里であった。


「ちょっと、声が大きいよ! 日和君も買い物?」


「う、うん。親に買い出しを頼まれて……」


 以前ならこうして話しかけられる事もなかっただろうが、席が近くなった効果は偉大であった。

 悠里の友達の虹花が休み時間に悠里と話に来る時にポツンと1人でいる未来に話を振ってくれる為、以前と違って少し話すようになった。


 話さないクラスメイトからたまに話すクラスメイトにランクアップした事でこうして学校外でも話しかけてくれたのだろうか?


 しかし、気兼ねなく話しかけてくれるという事は、本当に告白の事など気にしていないという事なので未来としては少し切なくはなるのだが。


「知り合いがすごく難しい顔をしてずっとお肉の前に居たら気になるじゃない? だからお会計した後に戻って来たのよ」


 どうやら一回は話しかけずに通り過ぎたらしく、未来が思ったようなランクアップは無かったようだ。

 人のいい悠里が心配して話しかけてくれる位には未来は長時間ここで悩んでいたようである。


「それで、何を悩んでるの?」


「えっと、生姜焼きの肉ってどれかわからなくて……」


 未来は私服姿の悠里に緊張しながら質問に答えた。


「生姜焼きね、私の家はロース肉を使うわよ」


 そう言って悠里が手に取ったのは未来が初めに除外した《《しゃぶしゃぶ用》》ロース肉であった。


「え、しゃぶしゃぶ用?」


「うん。普通のロース肉だと分厚いから(うち)はしゃぶしゃぶ用を使うの」


「そうなんだ。細切れか切り落としかと思った」


「調理前の見た目だとそう見えるけど細切れや切り落としだとお肉が細かすぎるんじゃないかな?」


「そうなんだ。高宮さん、ありがとう」


「いいえ。それじゃ、私は行くね!」


「うん……」


 手を振って去って行く悠里の姿に手を振りかえせずに、少しだけ片手を上げて見送った未来はレジを済ませて家へと帰る。


「未来ありがとう。すぐ作るからね!」


「未来遅ーい。腹減ったー!」


「はいはい。早く作っちゃうからね」


 母親が海智の言葉を聞き流しながら未来から受け取ったビニール袋から食材を出していく。


「母さん、肉ってそれであってる?」


「ん? バッチリよ、ありがとう」


 母親が笑顔で親指を立ててgoodと未来にサインを送ってくれた。

 どうやら悠里の言ったとおりしゃぶしゃぶ用であっていたようだ。

 自分では選べなかった選択に未来は悠里に感謝をしながら、学校以外で悠里と話せた事を思い出して今更ながら嬉しくなり口角を上げるのであった。




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