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ある日、世界に出現したダンジョンは、開門前にバカスカ敵を倒した僕のせいで難易度が激高したらしい。  作者: シュガースプーン。
一章

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第10話 少女の迎え

 未来は、少女をお姫様抱っこしたまま屋根伝いにコンビニまでやって来た。


 少女をコンビニの駐車場に下ろすと、未来は少女に話しかける。


「ここまでは追って来ないだろうし、周りに人がいれば大丈夫だと思う。もし怖かったら家族に迎えに来てもらうといいと思うよ」


「え、あ、うん。ありがとう」


未来の言葉に、少女は放心状態で返事をした。


「それじゃ、僕は家族が心配するから帰るね」


「はい……」


 コンビニの中には人が居るし、警察を呼ぶにしても分かりやすいだろう。

 そもそも暗がりでのナンパや連れ去りだろうからここまで追ってこないだろうと考え、未来は少女に別れを告げて家へと帰った。


 残された少女は、自分がここまで連れてこられた道筋に呆気に取られて、呆然としたまま返事をした。


 少女はコンビニから去って行く未来が見えなくなると、とりあえずスマホを取り出して迎えの電話をかけた。

 迎えが来るまでの間にコンビニでアイスを買って外で食べながら待っていた。


「お嬢、大丈夫でしたか!」


 コンビニの前で待っていた少女に、《《男達》》が声をかけながら走ってきた。


「大丈夫よ、どこも怪我してないし。ただ、とてもスリリングな体験だったわ」


 少女は屋根の上をこのコンビニまで一直線に移動してきたスピードを思い出して片方の口角をヒクつかせた。


「……ご無事で何よりです」


男達のリーダーが少女に腰を折った。


「あの男はどこですか! お嬢に手を出したんだ、タダじゃあかねえ!」


「やめなさい! 彼は私があなた達に襲われてると思って助けてくれたのよ。なんか、とんでもなかったけど」


チンピラ風の男が未来に対して憤るが、少女が嗜める。


「いったい何者でしょうか? お嬢と同じ学校の制服でしたが……」


「分からないわ。とりあえず帰りましょう」


 男達のリーダーが疑問を口にするが、少女が笑って歩き出した。

 少女が歩き出すと、男達が少女の後ろを付いて歩く。


「しかし、結局アイスを買いに来てしまいましたね」


「そうね。ほら、私1人でも無事に来れたでしょう?」


「いや、アレは……」


 少女が振り返って微笑みながら話すと、リーダーの男は苦笑いである。


 あの路地で、この少女と男達がなぜ揉めていたか、男達が少女を連れ去ろうとしているように見えたのか。


 それはこの男達は少女の家の関係者であり、夜に少女が一人でコンビニまで出かけるのは危険だからと、買ってくるから家で待っていて欲しいと説得している所であった。


 それを、少女が強引にでもコンビニに向かおうとするので取り囲んで足止めをしていたというわけである。


 外から見れば少女を強面の男達が取り囲んでいるヤバい状況であったが、身内から見れば、我儘な少女に男達が頭を下げている状況だったのである。


 それを勘違いした未来が颯爽と少女を連れ去ってコンビニまで送り届けたという話であった。


 男達(護衛達)の付き添いなくコンビニに来れた事に気をよくした少女は、少しスリリングではあったが特別な出来事を体験した事も相まって、嬉しそうに鼻歌を歌いながらアイスに齧り付く。


 少女から連絡が来て無事が分かるまで、見失った少女を探し回った男達は、笑顔の少女にホッとした様子で少女の後ろを歩く。


 出会った少年の超常的な身体能力という謎は残るが、それを探るのは後回しにして家へと帰るのであった。

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