【04】ウィリアムの魔法
ウィリアムが杖を出した。
その場に少し緊張感が走ったがフロムはとてもワクワクしていた。
(どんな魔法を見れるんだろう………!)
ウィリアムは咳払いをし杖を食器に向け、息を吸って唱えた。
『フロエル』
ウィリアムがそう唱えるとテーブルの上にあった食器が全て浮いた。ウィリアムは全ての食器が浮いたのを確認して杖をキッチンのシンクにゆっくりと向けた。それに合わせて食器たちも方向を変え、シンクに向かっていく。
(かっけぇ〜!!!俺も早くあんな風になりたい!)
フロムはウィリアムの背中を見てそう思った。
ウィリアムはシンクに食器を全て開いた後にまた魔法をかけた。
『ルミラ』
ウィリアムがそう唱えるとシンクにあった多くの食器はたちまち真っ白に綺麗になった。フロムは目を輝かせていた。
「ウィリアム様!俺もあの魔法使いたいです!」
「ふふっ…。フロムはまず基礎魔法を完璧にしようね。」
「………はい。」
フロムは家事全般は得意だが魔法はあまり上手く使えない。基礎魔法の練習中なのだ。
一通り食器を片し、テーブルを綺麗にして二人はまた椅子に座った。たくさんのご馳走があったテーブルはマグカップ二つになった。
「ラズは寝ているのかい?」
「はい。ぐっすり寝ていますよ。」
「そうか。」
ウィリアムとフロムは短い会話だけ済ませてマグカップに手をつけた。マグカップの中身はフロムはコーヒー、ウィリアムはココアである。
突然ウィリアムが話し始めた。
「ラズは偉大な魔女になると思うんだ。だからフロムも手助けをしてやってね。」
フロムはマグカップをテーブルに置き一言だけウィリアムに向けて話した。
「はい。」
ただその一言だけだった。そこから少し沈黙していたがフロムがコーヒーを飲み終わったと同時にフロムはウィリアムに向かって指を刺した。
「ウィリアム様。今すぐに経って後ろを向いてください。」
ウィリアムはなぜそんなことを急に言われたのか分からなかったがフロムの言う通りにイスから立ち後ろ向いた。
その瞬間だった。
バシッッッっと大きな音がしたと思ったらウィリアムが崩れ落ちた。
「痛いじゃないか!!!」
ウィリアムが叫びフロムのことを見るために後ろ向いた。その先には腕を組み額に怒りのマークがついているフロムが経っていた。
ウィリアムは悟った。
(あぁ、これは長い説教の始まりだと………。)
そこからは長い長い説教が始まった。ウィリアムを正座させフロムはウィリアムの前に立ちつらつらとウィリアムに文句を言っていたー
一通りの説教が終わり、身の回りのことを済ませて二人はベットに入った。
「今日はラズが家に来た日だし皆寝よう?」
ウィリアムはフロムにそう言った。フロムもたまにはいいかとラズを挟み川の字になるよう寝転び目を閉じた。
(今日はいろんなことがあったなぁ。)
フロムは頭の中で今日あったことを整理していたが段々と眠気が襲い掛かりいつのまにか眠っていた。
ラズと仲良く寝ているフロムを見てウィリアムは今日一番優しい顔をしていた。
「おやすみ。かわいいかわいい僕の宝物。」
ラズとフロムが起きないように小さな声で言った。
ラズが笑った気がしたのを感じながらウィリアムも目を閉じた。
これから賑やかになる生活を想像しながらー
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〜数年後〜
あっという間に時が経ちラズは10歳になっていた。
「おきてー!!!!!ウィリアムさまー!!」
ラズがそう叫び部屋のドアを思いっきり開けウィリアムが寝ているベッドにダイブした。
「ぐへっっっっっっ」
ウィリアムは情けない声を出した。
「ウィリアムさまおはようございます!フロムにぃさまが朝ごはんだと言ってます!」
「うん、起こしに来てくれてありがとう。とりあえず、僕の上からどこうか………」
ウィリアムは優しい声でラズに話しかけ目を開けた。
そこにいたのはとても可愛らしいラズがいた。
この10年間でラズは他の人から見ても大変可愛らしい容姿に育っていった。鮮やかなワインレッド色の髪の毛に二重がぱっちりでまるで白雪姫のように真っ白な肌の色、唇は薄くら、でも血行の良いプルプルだ。
(10歳でこの容姿……。数年後にはもっと綺麗になるだろうなぁ……。)
ウィリアムはラズの顔を見て思った。
「ウィリアムさま?早く朝ごはんたべましょう?」
ラズの一言にウィリアムも頭が冴えてきた。
のっそりとベッドから状態を起こしラズに抱きついた。
「お転婆な娘め〜!!!」
「きゃーー!!!!!」
ベットの上で二人が戯れあっている時にまたもや部屋のドアがバンッッッと開いた。
「ウィリアム様!!いつまで寝てるんですか!!早く起きてください!!!後ラズも!!」
部屋に入ってきたのはフロムだった。フロムもまたこの10年間で少年から20歳ぐらいの青年になっていた。
フロムは人間とは異なり神様と同様実年齢と見た目年齢が異なる。フロムの親は人間と神様のハーフなのだ。少しの幼さは残るものの鼻筋は通っており切れ長の目、目の色は紫色。髪は青色で朝日に照らされ輝いていた。
(フロムもこの10年間で沢山成長してきたなぁ。ラズを拾ってきた時よりも断然魔法が上手くなっている……。)
ウィリアムはフロムを見ていた。
「とりあえず二人とも朝ごはんにしましょう?せっかくラズの好きなパンケーキ作ったのに冷めちゃうなぁ」
フロムはラズを見て呟いた。
「え!パンケーキ冷めちゃう!!早くウィリアムさまあっち行こう!!」
ラズはベットから降りウィリアムの服の袖を引っ張りテーブルがある方向へ指を刺した。
ウィリアムはくすっと笑いラズを抱き上げた。
「そうだね。フロムが作ってくれたパンケーキは絶品だもんね。早く行こうか!」
ウィリアムはラズを左手で抱き右手でフロムの背中を押して歩いた。
(朝ごはんを食べたらラズの今後について話さないとなぁ。)
ウィリアムはそう考えていた。