【15】クリスタ
「やっほ!来ちゃった」
遅くに扉を叩いていた女性は軽い声で来ちゃったとニッコリ笑って手を振っていた。
「クリスタ…。何で来たんだよ。」
ウィリアムはいつもの口調ではなく年相応の口調で話しかけていた。
(綺麗な髪の人)
ラズは初めて見る女性に見惚れていた。ラズだけでは無い。フロムも同様頬を少し赤らめ見惚れていた。それもそうだろう。とても美しいのだから。
「ウィリアムお邪魔するよ。さぁて、私の弟子はどこかなどこかな」
女性は家の中に入り何かを探すような感じだった。一体何を探しているのだろうかとラズとフロムは顔を見合わせていた。
「おっ、みーつけた」
女性はラズの目の前にたち肩に手を置いた。
「君が今日見習い魔法使いになったラズだね。私はクリスタ。ウィリアムの古い友人で君の先生になる人だ。」
ラズの肩に手を置いた女性はクリスタと言うらしい。フロムはこの人がラズの先生になるのかと少し羨ましがっていた。一方ラズは自分のことを魔女に育て上げてくれる先生がウィリアム様の友人でしかもとんでもない美女ときて石化してしまっている。
「??おーい、大丈夫かい?」
クリスタがラズの顔の前で手を振っているとウィリアムがクリスタの頭をパコンと叩いた。
「いだっ、なにするんだ!ウィリアム!」
「何するんだ!じゃないだろう!?時間を考えろ!」
二人が言い合いしている隙にフロムはラズを連れてキッチンに向かった。ラズも頭を振り意識を取り戻したところで紅茶とクッキーの準備を始めた。
「ねぇフロムにぃ、あの二人いつまで言い合いしてるんだろうね」
「さぁ?俺たちは客人のもてなしの準備でもしてよーな」
などと言い合いしている二人とは違いのほほんとほんわかな空気を漂わせながら紅茶とクッキーをおぼんに乗せていた。
一方その頃ウィリアムとクリスタは魔法を使ってまでの軽い乱闘になっていた。部屋が大変なことになっている。
「君はいつもいつも!なぜ周りを考えない!?」
「ウィリアムだってそうじゃかいか!!」
まるで子供のような喧嘩みたいな内容だった。なにより部屋の散らかりようがすごい。服やタオルは散乱してるわ、物は倒れてるわ、窓は割れてるわ、この惨状に怒らない奴などいない。ましてや今日は一段と綺麗に掃除をしていた。
「………いい加減にしてください!!!!」
フロムがキレた。いつもとは比べ物にならないくらいに。魔法を使っていないのにフロムからは火が出て鬼のようなツノが見える。ウィリアムは悟った。これはやばいやつだと。
そこからの説教は長かった。ウィリアムとクリスタは正座をさせられている。
「ウィリアム様さぁ、何回目ですか?あんた神でしたっけ?ウィリアム様の隣にいるクリスタ様も。」
「はい…」
「…はい」
ガミガミと説教させられてる中ラズはクッキーを食べながらクリスタを見ていた。これから自分の先生になる人がフロムにぃに怒られているという状況を楽しみながらお茶をしているのだ。
「私の先生はクリスタ様。どんな魔女になれるかな」
ラズの口元は微笑んでいた。これから自分が魔女になるための第一歩を踏み出すのだから。