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【10】試験日

 とうとうこの日がやってきた。ラズが赤い花を咲かせてから5年が経った。


 この日の朝ウィリアムとフロムは慌ただしくしていた。なぜなら今日はラズの魔法見習いの試験日だからだ。

 

 「ラズー!!起きなさーい!!」

 

 フロムがラズの部屋に入ってきた。


 「ちょっと!フロムにぃ、年頃の女の子部屋にノックなしで入ってこないで!?」

 

 「おっと、これは失礼しました。じゃなくて、準備はできたのか?服は?荷物は??」


 「もうっ!ちゃんと全部できてるよ!ほら、フロムにぃ私お腹空いちゃったよ?早く朝ごはん食べよう!!」

 

 ラズはそう言うと部屋を飛び出して行った。ラズが部屋を出た時にラズの綺麗な髪が光った。


 (あぁ、大きくなったなぁ…。うちに来た時はあんなにも小さかったのに。)


 子供の成長はなんで早いんだろうと思いながらフロムはラズの後ろを追った。


 その頃ウィリアムは食卓に座って1人で座っていた。その姿はまるで神とは思えないようなどんよりとしている。ラズはそんなウィリアムを見て後ろから抱きついた。


 「ウィリアム様、おはようございます!!」


 「おわっ!?ラズか…。おはよう。準備はできているのかい?荷物は?服はその服で行くの?…スカート短くない……??」


 「あははっ。ウィリアム様フロムにぃと同じことを言うのね、面白い!荷物も準備したしスカートは持っている中で長いのを選んだわ。」


 ラズは無邪気に笑ってウィリアムに話している。

だが、ウィリアムは気づいていた。ラズがいつもより手が冷たく少し震えているのに。それもそうだ。一年に一回の魔女見習い試験、このためにラズは5年間勉強をしてきた。ウィリアムはラズの手を握り安心させるように呟いた。

 

 「ラズなら大丈夫。沢山頑張ってきたんだから。」


 「……うん。」


 ラズは鼻を啜っていた。


 そこにフロムがやってきた。美味しそうなパンケーキを空中に浮かせながらにっこりと笑って、「朝ごはん出来たぞ」と食卓に準備をし始めた。


 「うわぁ…!パンケーキだ!しかも私の好きなベリーたっぷりのパンケーキ!」


 ラズはベリーたっぷりのパンケーキをみて昔と同じように目をキラキラにしていた。


 「当たり前だろ?今日は大事な日だからな」


 「ありがとう!フロムにぃ、私絶対受かるわ!」


 ラズがパンケーキを目の前にして意気込んだ。

全員の前にパンケーキと飲み物の準備が出来た。


 「よし、いただこうか」

 

 「いただまーす!!」


 ラズが美味しそうにパンケーキを頬張っているのをフロムとウィリアムは愛しそうに見ていた。あんなに小さくて儚い赤ん坊だったのが今日この日に魔女見ならないの試験に行くなんて感慨深い。


 「んふふ、やっぱりフロムにぃのパンケーキは絶品だね。とっても美味しい!」


 「ははっ、ありがとう。ラズにそう言ってもらえて何よりだよ。ところで、時間は大丈夫なのか?」


 ラズは「えっ?」と言い時計を見るともう出なければ間に合わない時間に近づいていた。


 「やっばい、もう行かなきゃ!ご馳走様でした!」


 ラズはパンケーキを完食し、バタバタと箒を持って荷物を持って玄関に向かって行った。


 「こらこら、そんなに慌てたら怪我をするよ…。ラズ、忘れ物はないかい?」


 「大丈夫です!」


 「危ないことはしないこと。」


 「分かってる。」


 ラズは箒を持っていない方の手でピースを作り「大丈夫だよ、受かって帰ってからから」とウィリアムとフロムに言った。


 ウィリアムとフロムは目を合わせ笑った。

 

 「そうだな、ラズなら受かる」

 「僕たちのお姫様は流石だね。」


 「「ラズ、行ってらっしゃい、気をつけて。」」


 2人が声を合わせてラズのことを見送った。


 「行ってきます!」


 ラズがそう言い、玄関の扉を開けた瞬間色とりどりの花が舞っていた。そこにはフランが立っていた。


 「ラズ、あなたなら受かるわ。行ってらっしゃい」


 一言だけ添えてフランは色とりどりの花と一緒に消えて行った。


 (あぁ、いろんな人に助けてもらってここにいる。絶対に受かって帰ってこなきゃいけないなぁ)

 

 ラズは少し笑って箒に跨り試験会場に向かった。

 



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