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秘密の会議

「え、良いの?」

断られると思って駄目元で言ってみたのに。

「マルグレット穣にも協力して貰いたい事がありますからね。呼ぶなら早くした方がいいですよ」

「やった、直ぐ行くよ!」

僕は急いで呼び戻そうと、部屋を飛び出したがその必要が無かった。彼女は扉の前で立っていたのだ。

「マルグレット…?」

「申し訳ございません、声が聞こえたもので…盗み聞きするつもりは無かったのです」

彼女は平謝りをする。

「何だ、そんな事は気にしなくて良いよ。それより大事な話がある、オンドルマールと研究室まできて欲しい」

「ソーナー様、マルグレットは心配です。魔術師はまた良からぬ事をお考えになられてるのでは…」

彼女の不安を少しでも軽減させた方がいい。一度確認してみよう。

「オンドルマール、彼女を連れてきた。研究室へ行く前に確認したいんだけど」

僕も彼を信用しても良いのか悩んでいる。

毎日、魔法の実験に付き合わされたり、今日だってソーンヴァーに内緒で危険な場所に連れていかれた。

僕たちは部屋に入るなり、本題を切り出す。

「研究室に行く前に聞きたいんだけど、今後の方針を簡単に説明してくれないかな。

僕に何をさせているのか、どうしても知りたいんだ」

こうでもしないと、再び彼のペースに嵌まってしまう。話していて気が抜けない奴だ。

「なんだ、そんな事ですか」

オンドルマールは、控えめな笑顔を浮かべた。彼はどんな時でも余裕の表情をする。

「ぼっちゃまは来年から学園に通うでしょう?そこで王族と橋渡しをぼっちゃまにして欲しいのですよ」

え、僕がそんな事できるの?いきなり重役任された気分だ。

「そんな事が可能なのですか?ソーナー様では近づく事も出来ないと思うのですが、そもそもご主人様は了承しているのでしょうか」

彼女が矢継ぎ早に質問する。

「それをこれから話し合うのです。どうしますか、自分自身は関わないという選択もできますが」

「マルグレット、僕は行くよ。でも彼のいう通りだ、この先危険な事が無いとも言い切れない。君を呼び出したのは隠し事をしたくなかったからで…でもやっぱり君を巻き込むのは間違いだと気付いたよ」

言葉を上手く纏められない。僕の軽薄な行動に呆れて帰ってしまうだろうか…。

「私も行きます。一緒に連れていって下さい」

「…マルグレット、良いのかい?」

「ソーナー様は人に流されやすい方ですからね、ご両親が公務でお忙しい間はアタシがみていてあげないといけません!」

優しい。まるで漫画で読んだ、弟を守る姉のようだ。

「決まりですね、では早速向かいましょう」

僕たちは転移門を潜り、オンドルマールの研究室へ入った。

「よぉ、遅かったじゃないか」

ブランディルが部屋の片隅で魔術書を読んでいた。

「やっぱり、オンドルマールが君を差し向けたんだね」

「臨時でおっさんに雇ってもらったんだ。それも今日限りだけどな」

オンドルマールをおっさん呼ばわりするとは、豪胆な奴だな。

「改めて礼を言うよ。彼女はマルグレット、僕の世話係だ」

「はじめまして。詳しい事情は分かりかねますが、ソーナー様を助けていただき感謝しております」

しまった、彼女にこれまでの事情を説明していなかった。

「ブランディルだ。よろしくな」

ブランディルは、マルグレットに屈託のない笑顔を向ける。

その姿は正に純粋無垢な少年だった。どうしてこの子は死霊術を研究しているのか。

今はブランディルの正体を伏せておこう、きっと話す時が来るだろう。

「さて、全員揃ったところで本題に入りましょうか。来年からぼっちゃまが通う学園に、ソレア第一王女が入学します。彼女を利用して王族との橋渡しをして貰うのです」

「ま…まさかソーナー様を婿入りさせるおつもりですか!?」

「いや、そこまでは…あー…行く行くはそれも良いかもしれませんね」

「駄目です!ゼーッタイに!ソーナー様は次期領主になるお方ですよ!」

「落ち着いて下さい。婿養子になるのは現実的に厳しいでしょう。

顔合わせ出来る機会を作るだけでいいのです」

「それをどうやってやるのですか!」

僕を置いて2人がヒートアップしている。

確かにそうだ、仕事人間のソーンヴァーだって王族とコネを作れてないんだ。

ところで、ここは帝国だから王族じゃなくて皇族では?という疑問が生まれるが今は会議と関係無い内容なので一旦スルーしておく事にしよう。

「舞踏会です!」

「舞踏会!?」

一瞬だけ間を空けてから、復唱する。

「毎年、新入生限定の社交界が開かれるのです。

来年は王女も参加するようなので、大層賑わう事でしょう。

ぼっちゃまも必ず参加してください」

あぁ、そうか。来年から僕も社交界デビューするんだ。

「わかった。王女様とダンスをすればいいんだね。他にあるかな?」

「今はそれだけで十分です。決して粗相のないようにしてください」

一先ず、顔を合わせる程度で良いのか。

学園生活は9年もあるから、焦らなくてもいい。

「おっさん、宮廷魔術師のクセに縁談探しもするのかよ」

「父親が仕事にかまけているからフォローしなくてはならないのですよ。あと私はおっさんではありません」

「お父様は王女が入学する事はわかってるのかな、今まで何も言ってこなかったけど」

「分かってはいるけど、あくまでぼっちゃまは領主にさせるつもりなのでしょう。決めたことは絶対に曲げない方ですからね」

オンドルマールはヤレヤレといった表情だ。

「だ…だから縁談だめですよぉ!ソーナー様は…」

「僕は結婚するならマルグレットが良いけどなぁ」

「ソーナー様…!?」

子どもならこの程度の発言は真に受けないだろう。

僕もアンスに留まるのは得策ではないと思っている。

「さて、大体の方針は決まりましたね。ぼっちゃま、学園生活は厳しいですよ、くれぐれも勉強とダンスの練習を怠らないように」

「分かったよ。ところでさ、オンドルマールは僕をアンスの領主にしたくないと思ってるの?」

「えぇ、そうですよ。ぼっちゃまをこんな地方都市に留めておくわけにはいきませんから」

「分かった、それだけ聞ければ良いよ。僕もそう思っていたからね」

オンドルマールの扱い方が少し分かった気がする。

僕たちは今後の方針に向けてうごきだす。

「…ところで俺様は何するんだ?」

「貴方には重要な役割がありますからね、その時になったらお願い致します」

「よっしゃ、任せとけ!」

…これは2度と役割が回ってこないパターンだな。

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