表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/21

たかし、叱られる

すっかり日が暮れてしまった。

自宅前に着くとファリーンが門の前に立っていた。

「お帰りなさい2人とも。話があるので着いてきてください」

口調や顔つきから歓迎されてない事はわかった。僕達は神妙な面持ちで彼女に着いていくと、ソーンヴァーが仕事をしている応接室の前で止まった。

ファリーンは扉を軽く二回ノックした後、淡々とした口調で告げる。

「シルバーブラッド卿、2人を連れてきました」

応接室に通されると、部屋の奥にある1人用の応接デスクにソーンヴァーが座っており、デスクの前にはマルグレッドが立っていた。

(嫌な予感がする…)

重い空気が少し流れた後、最初にソーンヴァーが口にする。

「それで、今まで何をしていたのか1から説明してみなさいソーナー」

言い訳なんて言える雰囲気じゃなかった。僕は1から10まで正直に詳細に伝えた。

「…以上ですお父様」

少しの沈黙が流れたあと、ソーンヴァーの怒りの矛先がマルグレッドに向かった。

「なぁマルグレッド。お前が使用人室で休んでいる間に、主人は無断で外に出て危険な事をしていたみたいだ」

「申し訳ございません、シルバーブラッド卿」

マルグレッドが粛々と頭を下げる

「まさか子守りが出来ないメイドを雇ってたなんてなぁ、ファリーン」

「申し訳ございません、シルバーブラッド卿。全て私の不手際で御座います」

扉の前で立っていたファリーンも頭を下げる。

前世では悪事がバレたらゲンコツと説教がお決まりの流れだった。だが此処では違う。

「部下の不始末はお前が着けろ。2人とも部屋から出ていけ」

「はっ、かしこまりました」

「失礼いたします」

ファリーンとマルグレッドが退出しようとする。僕は堪らず叫んでしまった。

「ファリーン、お願い!マルグレッドを許してあげ…」

「黙っているんだソーナー!」

精一杯の懇願はソーンヴァーに遮られた。

「ソーナー、今日の夕食は抜きだ。朝まで自室を出てはならん!」

「…お父様、ごめんなさい。マルグレッドを許して…」

「返事はどうした!」

「…はい。」

無断で外出しただけでこの仕打ちとは…。

浅はかな行動の結果で、2人に嫌な思いをさせてしまった。

僕は先に応接室へ出た。残った2人はこれから何の話をするのだろう。

長く感じた重苦しい空気からは解放され、何もかも投げ出して寝てしまいたかったが、マルグレッドが気掛かりでしょうがない。

(2人に謝らないと…)

今は大事な人に今どうしても伝えなければいけない。自室に戻らず、応接室の向かいの侍女室へ向かった。2人はそこにいるかもしれない。

「ソーナー様」

ロビーを清掃していた使用人に呼び止められた。

「侍女からソーナー様を自室に待機させるように言われてます。申し訳ございません、部屋に戻ってください」

「な…に…」

まさかこんな事になってしまうとは…。直ぐに会わなければいけないのに、透明化の魔法を使ったところで無駄だ、侍女室の扉の前には庭師が立っている。

すまない庭師…あなたまで巻き込んでしまった。

透明化の魔法は便利だが、ドアノブに手を触れて開けようとすると解除されてしまう。

作戦を仕切り直す為、部屋に戻ることにした。(さて、どうしたものか)

随分前に交わしたアズラとの会話を思い出す。

僕の魔法で奇跡を起こせば、とか運命をねじ曲げるとか言ってた気がするが、具体的な方法がわからない。

時間がない、早く行かないとマルグレッドがお仕置きされてしまう!しかしどうやって行けば良いんだ…!自室で悩み悶えて床を転げ回っていると。

「何やってんだお前…」

(え?)

1人しかいない筈の自室で突然誰かに声を掛けられたので、思わず立ち上がってしまった。

そこにいたのは、下水道で出会ったダークエルフの少年。一際目を引く長杖(ちょうじょう)を背中に携えて僕の目の前に立っている。

「き、君は!……名前なんだっけ?」

「ブランディル!さっき会ったばっかだろ!」

今は話してる暇はない。名前を忘れてた事は承知の上で願い出る。

「ごめん、ブランディル時間がない!助けてくれないか!」

「…手短に説明しろ」

意外な返答だった。てっきり研究の邪魔をされて仕返しさせる覚悟でいたのに。

「………え?助けてくれるの」

「あ…あの時の借りだよ!それよりほら、さっさと説明しろ!」

ブランディルはそっぽ向きながら喋る。

あの時の、とはどの時だったのか、それすら考える時間も惜しいので、彼の言われた通りにした。

「僕は無断外出がバレてこの部屋に軟禁されている。1階の侍女室に誰にも見つからずに入りたい」

拙い説明だった彼には通じたのか、ブランディルはギザギザの歯をニヤリと見せ、自信満々に答えた。

「だったら俺様に任せな!完璧な作戦をたった今思い付いたぜ!」

良かった、今は藁にもすがりたい気分だ。僕は今日会ったばかりの少年を全面的に信用する事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ